自分用メギドメインストあらすじ(9章)

※ネタバレ

※独自の要約であるため正確さの保証なし

 

#85

アジト残留組:グラシャラボラス、グリマルキン、ゼパル、フォカロル、フォラス他

ヴァイガルド残留(非アジト、自宅等)組:?

ペルペトゥム組:?

メギドラル遠征本隊:ソロモン、アスタロト、アミー、アムドゥスキアス、アロケル、アンドラス、イヌーン、イポス、ウェパル、エリゴス、カスピエル、ザガン、サタナキア、サブナック、サルガタナス、サレオス、シトリー、シャックス、セーレ、ナベリウス、パイモン、バエル、バラム、バルバトス、ハルファス、ヒュトギン、フェニックス、ブニ、ブネ、フリアエ、フルカス、プルソン、ベリト、ベルフェゴール、ボティスマモン、マルコシアス、マルファス、ムルムル、メフィスト、モラクス、ラウムリヴァイアサン、レラジェ、ロノウェ

メギドラル遠征後発隊:アスモデウス、アスラフィル、アバラム、アラストール、ウァサゴ、ウァラク、ウァレフォル、オセ、キマリス、ジズ、ネフィリム、プルフラス、ベバル、マルバス他

その他:アモン(後続隊から単身離れ、レジェ・クシオで懲罰局本部の場所を聞き込み)、フォルネウス(サタンらに同行、召喚成功すればメギド72復帰の予定)

 

助けを請われたアモンは、ルシファーの手を引いてその場から逃走するも、ルシファーの意思喪失に気付き、ガギゾンも回収することにする。追手を欺くことも兼ねてルシファーを隠れ家に隠し、ガギゾン回収のために戻ったが、そこでアモンはフライナイツのメギドの奇襲を受ける。戻ることを読まれていたのだ。

辛うじて相手のメギドを殺し難を逃れたアモンとガギゾンは、隠れ家であるウァサゴの旧邸に戻る。

懲罰局は、長らく偽物のルシファーを戴いてきたのだとガギゾンは話した。

フライナイツ下部組織の包囲を受けたマモンは合図の音楽を奏で、オリエンスの援助を受けてガギゾン・ルシファー共々

ルシファーはアモンの奏でた不器用な音楽に微かな反応を示した。

 

ソロモン、ブネ、ウェパル、バラムは、マモンから離れ情報開示について相談をしていた。

メギド72の懲罰局襲撃・アンチャーター奪取計画を共有するか否か。マモンvsフライナイツ≒懲罰局の対立構図があるとはいえ、表向きには各所は議会を中心に協調している。社会運営を重視するマモンからすれば、懲罰局襲撃という秩序の破壊は肯定しにくい。また、アンチャーターをヴァイガルドに持ち出しメギドの手の届かない場所に置くことを、メギドラル社会の損失と考えるかもしれない。一方でメギド72としては、ハルマの手前アンチャーター確保という目に見える成果を示す必要がある。アンチャーターをマモンないしサタン預けとすることを妥協点にはできない。

しかし大勢を考えれば、追放の技術を保有することでマモンと権力を分ける懲罰局を追い落とすことは、マモンにとってもメギドラルでの権力抗争で一歩先んずる効果を生む。内々には黙認を得られる可能性は高い。

懲罰局襲撃が実行に移されれば、結局はマモンにも知られることになる。その段階まで情報を伏せていては信頼関係にも悪影響を及ぼす。

最適のタイミングで情報を共有する必要がある。

結果として、マモンには懲罰局襲撃は伝えるがアンチャーター奪取の目的は伏せる・イヌーンには目的も話し秘匿への協力を仰ぐ・時期はいずれも未定だが、フライナイツから戦闘を仕掛けられたらその時に話すこととなった。

道中、一行はフライナイツ団長・エウリノームの接触を受ける。予想に反して、その接触は攻撃ではなかった。

そこに現れたプルソンに、お前は弱いとエウリノームは言い放つ。転生により変質した彼は、もはやプルソンであってプルソンではないとも。そしてまた、エウリノームはフライナイツの思想を宣言した。彼らは個を押し殺し、組織の理念に貢献することを是とするのだという。(従来型の大企業フライナイツ、企業内ベンチャーのメギド72?)

エウリノームはメギド72から、かつての顔馴染みであるアムドゥスキアスを引き抜きに来たという。アムドゥスキアスがそれを断ると落ち込んだが、彼女に記憶がないと分かるとあっさりと引き下がった。バルバトスは、アムドゥスキアスの記憶の有無を確かめることも接触の目的の一つだったのだろうと推測する。

続いて、エウリノームはプルソンと二人で話すことを所望した。フライナイツを見返そうとするのはメギドらしからぬ発想だと前置いた上で、しかしプルソンが見返すための戦争を仕掛けてくることを期待しているとエウリノームは言う。純粋ではなく、様々な二元論のどちらかに割り切ることのできない存在として追放メギドを見ているようなことを話し、彼らがエウリノームにとって無視できないほどの力を持った時、フライナイツは彼らを潰しに行くだろう。その戦争の中で何かを見出すことを楽しみにしているのだと語った。

進軍を続ける一行は、「ケーダシン」というメギドの配下の幻獣を倒してしまう。ケーダシン軍団と「ウェス技研」軍団は「センチュート戦争」を行っており、この戦争は参加自由であることで有名であった。そして参加自由とはすなわち、両者の軍門の幻獣に手を出した瞬間、戦争に参加したと見なされてしまうのだ。メギド72はセンチュート戦争に巻き込まれた。

 

#86

後続隊では、戻りの遅いアモンにアスモデウスが苛立っていた。なお、アスモデウスは懲罰局襲撃について、アンチャーター奪取も一旦の目的とは認識しつつ、八魔星という同盟の弱体化こそを主眼に置いている。

 

旧ウァサゴ邸からダゴン邸に移ったアモン、ガギゾン、ルシファー、ダゴン、オリエンス。メギド72側の3人はガギゾンから懲罰局本部の場所を聞かされていた。それは「メギドラルの大盾」と言われる特殊な地形の裏に存在する。その周囲は「フォトン解放区」と呼ばれ、日夜数々の戦争が起こるメギドたちの「楽園」である。そこで誰かが行方をくらましたところで、戦争の中で死んだと思われるだけというわけだ。なお「大盾」とは激しい戦争の影響で空から落ちた浮遊島が地面に斜めに突き刺さったものである。

オリエンスとダゴンは自軍を現地に向かわせることを請け合い、またアモンは途中までガギゾンとルシファーに同行しつつ、後続隊陣地に帰投して情報を伝えることになった。

ガキゾンの目的は、意思を失ったベルゼブフの治療である。その為にエルダーにまつわる情報をルシファーから引き出そうとしているが、何故ならばルシファーの意志喪失の原因として、ガギゾンは彼女がエルダーに成り損なったのだと推測していた。そしてメギドラルのソロモン王の召喚により、ルシファーを元に戻せないか考えているのだと言う。

 

プルソンは自身の力不足に思い悩んでいた。エウリノームに求められなかった・認められていなかったこと、中途半端だと言われたことが尾を引いているのだ。エルデとしての自分の意識が不要なのではないかとさえ思い詰めてゆく。アムドゥスキアスに気遣われたプルソンは、「もう一人の自分」ーー自分では意識をしないがきっと存在するメギドのプルソンを魂の牢獄から救いたい、「俺は、俺になりたい」と、そしてソロモンの元でメギドの力を振るい、何らかの成果を上げた時、誇りと共にそれが達されると思っていたのだと話した。

アムドゥスキアスも、プルソンの言葉を借りて「私は、私になりたい」と応える。メギドの記憶が無く自分が何者であるのか分からず、自分の価値もまた感じられなかった自分にとって、召喚され力を必要とされたことは、魂の底にいて自分でも知らなかったもう一人の自分をソロモンが迎えに来てくれたように、そして自分の中に確かに価値があることを教えられたように感じられたのだと言う。

 

センチュート戦争とは、幻獣調教と他軍団への提供を専門とするケーダシン・ウェス技研による戦争であり、ハルマゲドンに向けた採用審査と調教のための模擬戦闘を目的とした道化戦争である。それに巻き込まれはしたものの、逃げれば深追いする理由も向こうには無いと頭を切り替える一行。

しかし、予想に反して幻獣たちの攻撃は激しさを増してゆく。違和感を拭いきれない一行の前に、ミュトスが現れる。伝言獣はケーダシンの名を名乗り、ソロモン王と軍団メギド72の名をはっきり述べた上で「戦争から逃げるな、自分と戦え」と宣戦布告した。

ケーダシンを降したソロモンに、本当の事情が説明される。彼は採用競争から降りたがっていた。ヴァイガルド侵攻用の幻獣の調教方法が不本意だったためだ。ヴァイガルドでより多くのヴィータを襲うために、ヴィータ体メギドの肉を食らい、味を覚えた幻獣が侵攻用に選ばれることになっていた。

ケーダシンの幻獣がヴィータの肉の味を覚えていたということは、ソロモンにとってあまりにも衝撃的だった。ソロモンは故郷の村を幻獣に滅ぼされている。それが、幻獣がヴィータの肉の味を覚えていたからだとしたら、全ての悲しみの始まりはケーダシンなのだ。

ケーダシンはセンチュート戦争から降りることを望んでいた。そのためソロモン王と交戦し敗北することで、予定調和のセンチュート戦争を勝手に放棄し、個人的な戦争に傾注したという「落ち度」を作ろうとした。そして、「個人的な戦争」を演ずるのにソロモン王はまたとない相手であった。何故ならば、ケーダシンの幻獣たちはかつてのヴァイガルド侵略に投入され、ソロモン王らによって殲滅されているからだ。傍から見て、自軍の幻獣を殺された恨みを晴らすというのは動機として申し分ない。「落ち度」に加えて、特定の軍団から目の敵にされるという「しがらみ」を持つこともできる。

かつまた、ヴィータの肉を食うことが不本意であることを証明するため、敢えて幻獣たちを、けしかける形でソロモン麾下の軍団の刃の下に差し出した。

ヴィータ体を取るメギドにも被害の及ぶリスクがある、とマモンは声を荒げる。しかし、だからこそこの採用活動は極秘の内に行われていたのだとケーダシンは語る。そして、その支持をした者が異世界侵攻総指揮官・プルトンであることも明らかにした。

一段落したところで、プルソンが単独行動を申し出る。メギドの頃の自分と今の自分との間に連続した自己同一性が無いため、自分探しと鍛錬の旅に出たいと言うのだ。

 

#87

一人武器を振るって鍛錬に励むプルソン。自身の内面との対話に成功し、その高揚感から高らかに快哉を叫ぶ。と、その声に反応したメギドに絡まれてしまう。あえなく敗北し傷を負ったプルソンは、気を失いながら再び自身の中のプルソンと対話をする。勝つということは選択肢を得るということであり、選択肢の間で悩み考えることは賢さという強さになる。そう話す「エルデ」に、「プルソン」は言う。疑問を持ち考え答えを出せるということが「エルデ」によって「俺」の得た強さなのだと。ヴィータとしての自分が「俺」の強さの一部になっていると気付き、「エルデ」は感銘を受ける。「エルデ」と「プルソン」は自覚なきまま十分に一つになっていたのだ。

「俺は俺だ」と自信を得たプルソンは、最後の試練としてフライナイツを倒すことを心に決めた。

 

迎えに来た、という誰かの声が聞こえて足を止めるアムドゥスキアス。周囲の問いかけにも反応は薄く、「ここを知っている、自分はここで生まれた」と言って動こうとしない。その奇妙な様子にソロモンは進軍を止める。と、そこに謎のメギドーー魂無き黒き半身ーーが現れた。それは何かを探しているような様子だった。

アムドゥスキアスはもともと、サタン派の研究施設で造られたメギドだった。幻獣の身体を奪わなければ発生できないという矛盾を克服するために、カトルスから送り出される魂を受け取る肉体を造る実験の成果が彼女だった。しかし、彼女がメギドらしい闘争心や目的意識を示すことはなかった。そしてのちほど造られた、闘争心を埋め込まれた「半身」との合体も、アムドゥスキアスは強く拒否した。結果として実験は失敗と判断された。半ば捨て置かれていたところをフライナイツが奪い、エウリノームの思いつきによって追放されることになった。ヴィータとして自我が上書きされることで、今度こそ拒否することなく半身と合体することを期待したのだ。

 

「思い出したら私は私でなくなってしまう」そう怯えながらも記憶の奔流は止まらない。アムドゥスキアスの記憶の中で、エウリノームは「迎えに来た、自分のために戦ってくれ」と言う。はじめに価値を見出してくれたのはエウリノームだったと気付き、アムドゥスキアスは慕わしげにフライナイツ団長の名を呼んだ。

 

襲いかかってくる「魂無き黒き半身」との戦闘のさなか、様子のおかしいアムドゥスキアスが「半身」に駆け寄り、そして合体を果たした。メギド72の一員であるアムドゥスキアスの意思を失ったそれは、またたく間に蹂躙を始めた。ソロモンはプルソンを召喚するが、その時には既に、軍団メギド72は半壊滅状態に追い込まれていた。

「俺は俺になった、でも俺は君の知る俺のままだ、だから君も君のままでいいんだ」そう語りかけるプルソン。アムドゥスキアスは淡い反応を示しつつも、攻撃の手を緩めるには至らない。その一撃により、プルソンはあえなく打ち倒されてしまう。

命の灯火も消えかけ、薄れゆく意識の中でプルソンは思う。強さに本質はなく、意味ある生を生きようと思い続けることこそが価値である。そして、分断されているように感じられたとしても、ちゃんと過去の続きに今そして未来がある。そのことをアムドゥスキアスに伝えたかった。

限界の意識の中で、必死のソロモンが指輪に力を込める。それはプルソンと呼び合い、彼に力を与えた。リジェネレイトだ。力を取り戻したプルソンの叫び声が、果たしてアムドゥスキアスに届いたのだろうか、おもむろに彼女は動きを止め、無言でその場を去って行った。

 

後続隊の陣地に戻る途中、アモンはアスモデウスのメギド体によく似た幻獣の群れを見つける。その群れは後続隊陣地に向かっているように見えた。警告のため足を早めるも、幻獣の群れには既に大きく先行されてしまっている。

その幻獣は、アスモデウスの追放後残された肉体を複製した物であった。

激闘の末、アスモデウスらは七体の「複製」を駆逐する。しかし安心したその瞬間、アスモデウスは背後からの一刃に倒れ伏す。それはベルゼブフであった。

 

#88 #89

複製アスモデウスとの戦闘で受けた大打撃に加え、アスモデウスを殺され後続隊が混乱したところに、アモンが到着する。同道していたガギゾンとルシファーも一緒だ。ガギゾンは激昂するメギド72を収めるため魂のランタンを提供する。そしてルシファーをアモンらに預けると言い残すとベルゼブフに駆け寄り、フライナイツから隠すためどこかへ消えた。

 

アロケル、プルソン、ロノウェもまた別行動を取っていた。再襲撃を警戒し、アムドゥスキアスを密かに偵察している。彼女はフライナイツのイレイザーとして、淡々と標的を抹殺していた。

標的となったドコカーノ軍団が蹂躙されるのを見るに見かねたプルソンは、もどかしさに体を震わせる。そこでシャミハザの助言もあり、プルソンが救助を兼ねて突撃することに決まった。一度アムドゥスキアスと対峙し生き残ったプルソンならば、ドコカーノ軍団よりは戦い得る。そして彼一人の突撃ならば本隊の立ち直りを察知されるリスクは低く、観察によりバリア突破のヒントを得られる可能性は高くなるわけだ。

何度めかの突撃ののち、アムドゥスキアスがヴィータ体に変身しプルソンに対話をもちかける。彼女は、プルソンらが想像していた以上に正気を保ち、そして彼女自身の意志でイレーザーの活動を行っているように見えた。

だが、彼女の内面では「ソーラ」の意識が泣き叫んでいた。メギドのアムドゥスキアスはそれを無視していたのだ。枯れ果てた泉で魂無き黒き半身を目にし、エウリノームに求められたことを思い出した頃から、メギドの意識が彼女の中で優勢になっていたのだ。メギドのアムドゥスキアスの意識は、自分こそが「本当の私」だと言う。

 

負傷者を抱える本隊では、ヴァイガルドから召喚されたユフィールも加わって治療を進めている。ソロモンはユフィール、オレイの召喚や指輪の召喚による肉体の再構築を用いた治療の補佐を行ったのち、囮部隊の支援のために陣地を発った。

フライナイツによるさらなる攻撃も警戒する必要があった。そのためブネ、バルバトス、ベルフェゴール、イヌーン、ザガン、そしてソロモンに扮したオレイが囮となって少人数行動を取り、負傷した仲間たちから追手を引き離していた。案の定、彼らにイレイザーのマセタンが迫る。しかし危ういところで本物のソロモン、そしてカルコスとパイモンが到着し、マセタンを倒すことに成功した。

 

マモンは、フリアエを伴にしレジェ・クシオに先に戻ることを提案する。八魔星のマモンであれば休戦季と議会招集の宣言をできるからだ。議会を放置するべきではないことに加え、休戦季が始まればメギド72も軍団の立て直しと回復に専念できる。

また、ベルフェゴールとリヴァイアサンはウェパルをはじめとした負傷の度合いの大きい者を連れてアジトへ帰還することになった。

そして計画全体も見直しを行い、後続隊と本隊とで合流してから懲罰局襲撃を目指すことにした。アムドゥスキアスとの戦いで出た脱落者分の戦力の補充が一つの理由、そしてもう一つの理由は、本隊がフライナイツと敵対してしまったことにより、フライナイツと繋がる懲罰局を標的にする後続隊と、同一の存在を相手取ることになったことである。一行は合流のため引き返し、後続隊の野営地方面を目指すことにした。最も難しそうなアムドゥスキアスへの対処は、それらすべての後……のつもりだった。

休憩地での夜、ソロモンはリリムの計らいにより夢の中でシバと語り合い、心身の健康を取り戻した。

後続隊方面を目指すには、やむなくセンチュート戦争圏を通ることになる。ウェス技研の幻獣を警戒しながら情報共有のため後続隊からウァサゴを呼び出したソロモンらは、隊の大打撃とアスモデウスの死を知り衝撃を受ける。と、近くで戦闘の気配がする。偵察チームもまた、アムドゥスキアスをセンチュート戦争の幻獣にぶつけようと同じ方面に向かっていたのだ。結果として、偶然にも本隊と遭遇してしまったというわけである。成り行きのままにアムドゥスキアスと戦うことになるメギド72。ドコカーノ軍団の加勢も得、怒涛の連続攻撃の末に、ようやくアムドゥスキアス攻略の糸口を見付けた。バリアを押し込み続けると、アムドゥスキアスは自分を傷つけないようバリアを消すらしいのだ。

 

#90

「音楽を、奏でる者たちだ」

召喚したアモン曰く、近くで偶然アムドゥスキアスを見かけたと言う。ソロモンたちは彼女に挑むことに決めた。その勝ち筋は協奏だ。

サタナイル、グシオン、ベバル、アバラム、ジズ、クロケル、アスラフィルを後続隊やヴァイガルドから召喚し、陣容を整える。

演奏が始まる。プルソンが前に出る。そして問う。ソーラの意識はアムドゥスキアスのために、自らを消し去ることを望んでいるのではないのか。

ただこの世に存在しているだけで自分を承認され尊重されたならいいのに、それは叶わない。かつての追放前のアムドゥスキアスは、そのことに苦しんでいた。周囲は自分に闘争を求め、それでも自分は戦争をしたくなくて、だから結果としてかつてのアムドゥスキアスは意思がないかのようにぼんやり過ごすしかなかった。しかし今は、埋め込まれたものとはいえ自らの中から湧き出る闘争心により、自分の意思でイレーザーとして戦うことができている。エウリノームに認められる振る舞いができているのだ。誰かに認められるように生きたいという望みを理解し共有するソーラは、イレーザーのアムドゥスキアスを殺すことはできない。だから消え去ろうとしているのではないか。

それでも本当は、ソーラはヴァイガルドに帰ることを望んでいるのではないか。魂が受け入れられた場所だから。

そして最後にプルソンは呼びかけた。俺は、俺たちの仲間だったアムドゥスキアスと、自分たちを構成する記憶のたくさんあるヴァイガルドに帰りたい。

イレーザーのアムドゥスキアスは、内面に向かって戦う意志を示す。ソーラの意識の持つ豊かな世界に対して、自分の意識がどれほど脆弱であろうとも、私が私であり続けるために抗うのだと。そしてそのために、メギドとじて全力で戦争をするのだと。

メギド72に敗れたイレーザーのアムドゥスキアスは、自分を信じて生きられたことに満足し消えた。ソロモンは彼女の最後の願いーーもう一人のアムドゥスキアスが生まれてくることを望んでやってほしいーーを受けて、その魂を召喚した。

内面世界でソーラとアムドゥスキアスは最後の対話をする。アムドゥスキアスは言う。自分の一部が死ぬのも、それによってまた「何かが欠けている」自分に戻るのも怖いだろう。それでもきっと、生きるものは皆何かが欠けている。欠け歪んでいるからこそ、本来同じ存在であるはずの自分たちは完全に一つにはならなかった。そして欠けや歪みを埋めるために、生きる者たちは皆人生の中で様々な記憶を集めるのだろう。満足していないからこそ皆生きるのだ。

ソーラは、自分がアムドゥスキアスとして生きることを望み、アムドゥスキアスは頷いた。そして、「私を私として認めてくれた」プルソンへの礼を伝えるよう望み、とうとう消え去った。

 

#91

皆歪みを持って生まれてくる、イレーザーのアムドゥスキアスが消える直前に言った言葉は、ソロモンの中に世界を変える勝算をもたらした。

と、急に辺りに轟音が響く。砲撃だ。エウリノームとバールベリト、フライナイツ正副団長による攻撃である。

必死で逃げるうちに、一行は半ば偶然に、後続隊の残りのメンバーーーウァラク、プルフラス、マルバス、アラストール、キマリス、そしてルシファーーーと合流を果たす。メギドラル遠征隊再集結である。

また砲撃を撹乱する作戦も上手く運び、地下洞窟に逃げ込むことができた。しかし砲撃戦の土壇場で、魂のランタンが壊れアスモデウスの魂が放たれてしまう。魂は近くにいたキノコ型幻獣に憑依した。

 

砲撃を一段落させ、エウリノームとバールベリトは撤収に入る。休戦季までにできるだけ多くの不穏分子を砲によって殲滅する。砲は最終的には一部のみ持ち帰り、残りは破壊の上で現場に投棄する。砲の使用はケーダシン幻獣軍団がしたことにし、フライナイツがこの戦術を使ったことが社会に知られないようにする。ケーダシンは乱暴な戦術でセンチュート戦争を無用に拡大したことにしつつ、密かに抹殺する。それがエウリノームの書いた筋書きである。

 

#92

アスモデウスの声を聞いたというソロモンに、サタナキアが仮説を披露する。曰く、メギドの本質は「魂」という「目的意識や固有の信念といった情報の保持形態、すなわち意思」である。そして肉体とは、Me自己の魂を観測するための器官に過ぎない。「遠い情景」とは自分自信を観測した原初の光景である。そして魂の情報が脳という器官に投影されて具体的な思考を形作ったものが「個」である。ここにおいて肉体は「個」の形成のための最も一般的なプロセスであるが、必ずしも(幻獣の)肉体でなくても構わない。抽象的な「魂」を「個」という具体的な思考活動体に落とし込めることがメギド発生の要件である。魂が存在する限り、メギドは死なない。

アスモデウスは凄まじく強靭な意思を持つメギドでる。そのため魂だけになってもすぐに蒸発し消えることはない。アスモデウスは肉体を失ってなお「生きている」のだ。ただし、キノコの体に入り込んでしまった今は威容に欠けるため、軍団の者たちの前に姿を見せることを嫌っている。

アスモデウスはソロモンに耳打ちをし、リリムの能力を使ってルシファーの夢へと潜入させた。そこでは、大罪同盟時代の記憶が繰り広げられていた。場面はアスモデウスがヴァイガルド遠征に出ようとするところだ。ミカエルから、ヴィータうしの戦争を収める助力を乞う手紙が届いたのだという。

遠征は成功したが、奇妙な違和感も残った。ミカエルは、はじめに手紙を出してきたのはメギド側だと言うのだ。更には、アスモデウスの不在中唐突に統一議会も開かれ、それを契機にーーフォトン不足にも関わらずーーハルマゲドン待望の機運が醸成されていた。しかし、大罪同盟の面々は誰も休戦季の宣言をしていないという。大罪の盟主アスモデウスをメギドラルから引き離し、その間に開いた統一議会で何らかの思想をメギドたちに植え付ける。これらのことを企んだ「敵」がいる、それも大罪同盟内部に。アスモデウスはそう推理した。警戒心を顕にしたアスモデウスははじめにサタンを、次いでベルゼブフを大罪同盟から除名する。サタン除名は裏切り者に揺さぶりをかけるための狂言だが、ベルゼブフのことは裏切り者だと確信してのことだった。しかしこの時、既にベルゼブフは母なる白き妖蛆による精神侵略を受けていた。そしてサタンから引き離されたことで心の支えを失い、完全な支配を許してしまうことになる。実際のところ、アスモデウス抜きの統一議会を機にサタンがヴィータ体を常用するようになった時点で蛆の根回しは完了していた。そしてサタンとベルゼブフとが特別な共感性を育み、遂にはサタンの除名によりベルゼブフが孤立した時点で、アスモデウスの敗北は決していたのだ。

大罪同盟内部に裏切り者がいると考え警戒心を顕にするアスモデウスに対し、ルシファーは敵はメギドラル社会の「外」にいると直感していた。

いよいよアスモデウスは孤立し、ハルマゲドンの機運は高まり、ベリアルは追放され、大罪同盟の分裂は決定的になってゆく。リヴァイアサンやベルフェゴールは同盟そしてメギドラルの中央社会に背を向けそれぞれに去る。「敵」の存在を察知していたルシファー、自らの受け継いだ秘密故に「蛆」の知識も持っていたマモンは、自分たちの敗北を認めざるを得なかった。アスモデウスはサタン・ベルフェゴールの二人との戦争に敗れ、その頃には既に懲罰局を築いていたルシファーの主導により追放刑に処されることとなった。実際にはアスモデウスの魂をヴァイガルドに避難させ救うための措置ではあったが、その内実を知るのはルシファーとマモンだけであった。

そしていつか遠い未来に勝算が実を結ぶことをルシファーは願い、現実に静かに抗うのだった。

夢の中では他にもいくつかの情報も得られた。例えば、プルトンは元夢見の者であり、そのため議会に参加できない。あるいは、アルス・ノヴァ体制を主導していたのはエルダーであると噂されているが、実際のところはルシファーたちすら知らない。そして前体制関係者によって、「アレ」と呼ばれる統一的なメギドの社会意思が密かに持ち出され保管されているかもしれなちこと。

 

夢の旅から醒めたソロモンは、かつては信頼できる仲間を持っていたアスモデウスが、しかし昔も今も一人で全てを行おうとすることを嘆き憤る。それにアスモデウスは、過去とは白く、強い光なのだと語った。その光は眩しく、今の自分を霞ませてゆく。だから、過去は殺さねばならない。生きていくために、過去に縋らないために、過去を否定することこそ、常に「個」もして生き続ける方法なのだ。しかし、最後にアスモデウスは認める。ソロモンの言う通り、独自に全てを解決しようとした結果、正解に近付いていたルシファーをも疑ったことで、敗北は決定的になったのだ。

 

洞窟から脱出した一行の前に、とうとうキノコデウスが姿を現す。一同はひとときの和やかな笑いに包まれた。

 

#93

ヴァイガルド残留組:アンドレアルフス、ヴィネ、オロバス、グレモリーグラシャラボラス、グリマルキン、ゼパル、デカラビア、ニスロク、フォカロル、フォラス、フルーレティ他

アジト帰還組:ベルフェゴール、リヴァイアサン、ウェパル、カスヒエル、マルコシアス、モラクス他

ペルペトゥム組:?

メギドラル遠征本隊:ソロモン、アスモデウス(キノコ)、アスラフィル、アバラム、アミー、アムドゥスキアス、アモン、アラストール、アロケル、アンドラス、イヌーン、イポス、ウァサゴ、ウァラク、ウァレフォル、オセ、オレイ、キマリス、グシオン、クロケル、サタナイル、サタナキア、ジズ、ナベリウス、ネフィリムパイモン、バティン、バラム、バルバトス、ハルファス、ブネ、プルソン、プルフラス、ベバル、マルバス、メフィストラウム、レラジェ、ロノウェ(※アスタロト、エリゴス、ザガン、サブナック、サルガタナス、サレオス、シトリー、シャックス、セーレ、バエル、フェニックス、ブニ、フルカス、ベリト、ボティス、マルファス、ムルムルは遠征隊か帰還組か不明)

その他:オリエンス、ダゴン(独自に自軍を率いて懲罰局本部付近に布陣)、ヒュトギン、フリアエ、マモン(議会開催のためレジェ・クシオに先行)、フォルネウス(サタンらに同行、召喚成功すればメギド72復帰の予定)

 

ドコカーノ軍団はじめ、いくつもの軍団が砲撃により壊滅されてゆく。そんな中ケーダシン幻獣軍団から共闘の申し入れがあり、メギド72はフライナイツ打倒を目指してそれを受け入れる。

砲撃の中、チームを分けて囮となり敵の目をくらますメギド72。作戦の肝はケーダシンだ。幻獣ならば敵の監視の目を掻い潜れることから、ケーダシン配下の幻獣が砲撃拠点探査の役を負っていた。ケーダシンのミュトスの合図をきっかけに、見事ソロモンは砲撃幻獣を撃破する。

しかし残念ながら、ケーダシン自身はイレーザーに密かに転身していたセンチュートーーあるいはオーシェ、発生したばかりの頃のプルソンにメギドラルのことを教えたメギドーーの手により暗殺されてしまっていた。

戦闘後の砲撃拠点にあったのは砲の残骸ばかりで、メギドの姿は見えない。つまり砲撃の主体がフライナイツであったことを示す証拠がないのだ。議会でフライナイツの暴虐を示しその地位を追い落とす計画はたち消えた。しかしアスモデウスは今回の戦争を評価し、良い勢いを得たと言った。

 

#94

懲罰局付近に布陣していたはずのダゴンとオリエンスは、懲罰局に捕らえられ拷問にかけられていた。特殊な微細幻獣を用いた拷問により、二人は既にヴィータ体の姿も、正常な思考を保つこともできなくなっていた。

 

本物の、意思を失った状態のルシファーを懲罰局から連れ出したのはガギゾンだが、それ自体は許可を得てのことだった。ベルゼブフに会わせることで、ベルゼブフの病状の回復を試みる実験の予定だったのだ。しかし、アスモデウスがメギドラルに訪れていることを耳に入れると、ベルゼブフは突如単身飛び出してしまう。実験は中止の判断がなされたがガギゾンは一人それに反対し、ルシファーを連れたままベルゼブフの後を追った。

ベルゼブフはメギド72後続隊に接触してアスモデウスを殺し、駆けつけたガギゾンはルシファーをメギド72に預けるとベルゼブフと共に去ったのである。

その後ガギゾンは肉体労働に身を窶し、僅かな日フォトンを得てはベルゼブフに届ける暮らしをしていた。しかし、ベルゼブフはメギドラルに実体を得た母なる白き妖蛆のコンタクトを受ける。蛆はこれまでのメギドたちの間接支配という「やり方を変え」、メギドラルの直接支配に乗り出すと言った。

フライナイツは行方をくらましたままのベルゼブフの捜索に力を入れていた。

 

一方、メギド72は隊をA〜Cに分け作戦を進めていた。

A隊:ソロモン、アスモデウス(キノコ)、パイモン、バルバトス

A隊はとある研究所を訪れていた。そこにはアスモデウスのメギド体の複製が保管されているはずだったが、戦闘と破壊の跡があるばかりで目的のものは見当たらない。資料調査を待つ間に、ソロモンはアジトからフルーレティを召喚することにする。自分たちの戦争の記録と取材のため、少しでも客観的な記録をこの世に残すためである。

研究所に複製アスモデウスはいなかったが、残された記録から、脱走しそのまま野生化した個体が存在することが分かった。その利用を一行は決める。

荒野でノラモデウスを見つけると、キノコデウスは自らそれに食われに飛び出して行った。ソロモンたちはキノコデウスを食ったノラモデウスを倒し、その肉体が崩壊する直前にアスモデウスを召喚する。賭けは見事に成功し、内側から複製メギド体を乗っ取りそして再構築したアスモデウスがその場に復活した。

アスモデウスは残り四体のノラモデウスを力ずくで従わせ戦力に加えると言い、ソロモンには自分の代わりにリヴァイアサンを頼るよう告げると、パイモンを伴に一時の別行動を決めた。

 

C隊:サタナキア、グシオン、クロケル他

一部のメギドはC隊となり、アジトに帰還していた。予定外の召喚に応じた者を帰しつつ、情報共有と議論を行うための帰還である。

 

B隊:アミー、アムドゥスキアス、アモン、アラストール、アロケル、アンドラス、イポス、ウァサゴ、ウァレフォル、オセ、オレイカルコス、シャミハザ&ジルベール、ナベリウス、ネフィリム、バティン、バラム、ハルファス、ブネ、プルソン、プルフラス、メフィストラウム、レラジェ、ロノウェ

B隊はメギドラルの大盾に布陣すべく進軍していた。アスモデウスのメギド体複製を見つけアスモデウスを復活させたA隊と合流したら、いよいよ懲罰局襲撃である。しかし、途中でイポス、更にはバラムの姿が見えなくなる。懲罰局の側からの襲撃である。

混乱の中、ブネの前に一人のメギドが姿を現す。それはドラギナッツォ、懲罰局副局長にして、ブネにとっては因縁ある相手であった。

ブネは発生直後、当時既に懲罰局副局長であったドラギナッツォの冷酷な粛清、または殺戮を目にしていた。その後も事あるごとに、まるで息子のようにドラギナッツォの後を追っては戦争を挑んできた。自分にどこか似ていて自分より強い者が、自分より先にこの世界に存在していたことに、何らかの意味を感じたのだという。ブネはドラギナッツォの背からメギドラルの社会の在り方を学び、メギドとして生きる意義(あるいは、巡り合わせに意味を見出そうとする運命論的思考)を考えて来た。

しかしながら、ドラギナッツォはそれを不愉快に感じていた。彼にとって、社会システムの中で歯車のように役割を果たすことだけがあらゆる存在にとっての必要十分であり、(物語じみた)意味を見出そうとするのは音楽や芸術、ビルドバロックの堕落に勝るとも劣らぬ営みなのである。まして、ブネが彼自身の弱さと成長の物語の舞台装置として自分を利用することは我慢がならないのだという。

しかし果たしてブネは、イポス・バラムに続きあえなく連れ去られてしまった。

フォトン解放区に接近した隊は、偵察を出しつつソロモンとの合流のため待機する。

オレイカルコス、アモン、アラストールは独自の判断で、隊をこっそり離れ懲罰局に忍び込むことにした。さらわれた三名とアンチャーターの奪取が目的である。

 

偽物のルシファーの正体は、起動されたアンチャーターである。彼女は自分のオリジナルが存在していることを嫌い、「私が本物である証をくれ」と言ってエウリノームに本物の抹殺を求めた。アンチャーターである自分はいつか死ぬ運命にあるが、その時何者でもない機構としてではなく、せめて「私として」死にたいと望んだ。それは盟主の意向に反することだが、偽物のルシファーの意志は強かった。

局長の話を聞いたエウリノームは、プルソンやアムドゥスキアスのことを思い出していた。彼らもまた自身が純粋な「本物の」メギドでないことで悩み、しかしメギドでもヴィータでもない唯一無二のオリジナルな存在だ。それは、エウリノームにとって既知の世界の外側にある者であり、決められた在り方をなぞるだけではない存在の可能性を感じさせる。そして彼らは自らの価値を証明し新たな自分を誇るため、打倒懲罰局というケジメをつけようとしている。その時自分は彼らの前に立ち塞がり、彼らの成長に立ち会い、存在感を示して影響を与えたいのだとエウリノームは告白した。それはフライナイツらしからぬ願望である。

 

#95

フォトン解放区に所属不明ーー当然、懲罰局の手によるものーーの幻獣がなだれ込み、戦場は混乱をきたす。そこにソロモンが現れ、苦境に立たされていたB隊はにわかに活気付いた。追加で召喚されたサタナキアやマルコシアス、フラウロス、ガミジンも戦力に加わり、その場にいた軍団たちと一緒になって幻獣を掃討してゆく。

更にソロモンはリヴァイアサンを呼び助力を請うも、はじめリヴァイアサンは強い不満を見せる。一度は不干渉・中立を宣言して大罪同盟を離れた自分が今やアスモデウスの側に付いていることを他の元大罪同盟の面々に知られると、二枚舌の汚名を着ることになるからだ(?)。更にアスモデウスの推薦であったことを知ると、リヴァイアサンは怒りをも見せる。元大罪同盟の面々と顔を合わせたくないそもそもの原因である大罪同盟の分裂は、サタンやベルゼブフをアスモデウスが追い出したことに端を発しているからだ。アスモデウスが、元大罪同盟との戦争に自分を使うことについてリヴァイアサンは「どのツラ下げて」と毒づく。

しかしルシファーが意志を失っていること、アスモデウスがルシファーを助けようとしていることをソロモンから聞き、必ずしも元大罪同盟と自分たちとの対立構造でないことやアスモデウスが元大罪同盟にルシファーに情を向け自分を頼っていることを知ると、俄然姿勢を変え、奔流のような勢いで戦場に飛び出して行った。

 

取材と記録を請け負うフルーレティは、一人フォトン解放区「乾くことなき血の荒野」を駆けては戦争をするメギドたちから話を聞いていた。とあるメギドは語る。硬直し衰退してゆく社会で、唯一の期待はハルマゲドンだと。無謀な破滅思想であろうと、現状を打破できる何か大きなことをなしたいのだと。

 

ダゴンとオリエンスは既に風前の灯、さらわれたイポス、バラム、ブネは幻獣を無理矢理移植され終わることのない苦しみに悶えていた。

中でもブネにむけて、ドラギナッツォは残酷な事実を告げる。ブネに縫い付けられた幻獣は、かつて彼の目の前で軍団員を食い殺した幻獣だというのである。ブネは魂からの絶叫を上げ、幻獣のような何かに変態した。

ブネであったそれを屈服させたドラギナッツォは、それを伴って戦場に出る。その彼に、偽のルシファーはエウリノームの暗殺を依頼した。理由は告げなかったが、本物のルシファー暗殺依頼の事実の口封じが目的である。

 

戦場から幻獣が駆逐された頃、二体の新手が現れる。ドラギナッツォとブネだったモノだ。有名な懲罰局副局長の姿に、周りのメギドたちは騒然とし戦いを止める。懲罰局が戦場に現れたことが知れ渡ったら、次にメギドたちが目にするのはメギド72とドラギナッツォとの衝突だ。その戦いで優勢を示せるか否かが、周囲を味方につけ懲罰局に勝利するための決定的な分岐点になる。緒戦と言わんばかりにリヴァイアサンとドラギナッツォが空でぶつかり合い、全てのメギドがその様に注目していた。

 

ブネだったモノはメギド72の前に姿を現した。ソロモンたちが戦いに勝ったところで、サタナキアはとどめを刺すのを制し、アンドラスに「生きたままの解剖」を依頼する。それがブネであると見抜いていたのだ。

押さえつけられ切り刻まれるそれを見つめるソロモンの脳裏に、いつかのブネの言葉がこだまする。「幻獣とメギドの違いは何なのか、それは存在するのか」

暗闇の中でブネの意識はメギドラル時代のことを追体験していた。軍団を持ち躍進していた頃、そして軍団員を惨殺され追放された時のことだ。そしてブネの意識は独白する。メギドと幻獣の違いが分かった。メギドは魂を持っており、自分の魂を観測することができる。その魂はメギドが自ら変化する時、変化の先にあってランタンのように光っている。肉体は魂の照らす先に進む船に過ぎない。魂を手放さない限り道は開く。そして、魂の照らす先こそが「遠い情景」である。

ブネはメギド72の仲間たちを跳ね飛ばして立ち上がると、絶叫しながら自らの体を、引きちぎり始めた。幻獣と混ざり合った今の自分の姿が耐え難いのだ。みるみるうちに崩壊してゆく肉体は間もなく肉塊となり果て、しかしソロモンは闇の中にあってもなお魂の輝く瞬間を見定めようと指輪に力を込めた。失われかけたブネはギリギリでソロモンによって呼び出され、彼自身の姿形を取り戻して蘇った。

 

リヴァイアサンとの戦いのさなか、ドラギナッツォは地上にエウリノームの姿を見つける。

一方、偵察に出ていたプルソンは偶然旧知のオーシェを見つけ声をかける。と、どこからか飛んできたミュトスがオーシェの目の前で強い光を発した。伝言を叫ばず死にもしないそのミュトスはケーダシンの特別製であり、メギド72が保護していたものだ。オーシェに何かを感じて、メギド72の手元を飛び出してきたのである。ミュトスが感じたのは、ケーダシンを殺した者の気配だ。プルソンはミュトスの反応から、オーシェがイレーザーであることやセンチュートの別名を持っていることに気付きショックを受ける。そこにエウリノームも現れた。と、ミュトスを追ってきたアムドゥスキアスが3名に向かって叫ぶ。声に応じて上方を見た3名のもとへ、ドラギナッツォに撃墜されたリヴァイアサンが降ってきた。更にメギド72本隊からウァレフォルも駆けつけ、ドラギナッツォの接近を警告する。

ドラギナッツォの狙いはエウリノームであったが、すんでのところでオーシェが彼を助けた。

難を逃れたエウリノームは「他にやることができた、ルシファーに会ったら例の(共闘の対価として本物のルシファーを殺すという)取引はやめと伝えてくれ」と言って戦場を後にした。

 

エウリノームを助けたオーシェはそのままドラギナッツォにしがみついて上空に上がり戦いを挑んだが、あえなく返り討ちに遭ってしまう。そこにソロモンたち中枢チームが到着し、ドラギナッツォとの戦いが始まった。

ソロモンらは見事ドラギナッツォをくだす。それにより、周囲で趨勢を伺っていたメギドたちも徐々にメギド72の名に湧いてゆく。一方でチームからは心身の限界を迎えたブネがリタイアし、初期メンバーの安心感を求めたソロモンにより、代わる形で休養していたモラクスとウェパルがアジトから召喚された。彼らを迎え、ソロモンたち中枢チームはいよいよ懲罰局に突入することとなる。

ソロモンたちドラギナッツォ撃破・懲罰局突入チームを送り出した後の本隊は、厳しい状況ながらも「負けていない」戦争状態を維持し続ける任務を再確認した。

 

懲罰局に潜入したアモン隊は変わり果てた姿のイポスとバラムを発見し、カルコスを使いに出した。

カルコスはエウリノームを見送った直後のウァレフォルを見つけ、懲罰局潜入チームが連れ去られた二名を発見したことを報告する。

潜入チームは捜索を続け、オリエンスとダゴンの居場所へと肉薄していく。しかし、懲罰局メギドの一人が気になることを言っていた。懲罰局を手薄にするのは、ソロモン王を誘い込むための罠だと言うのだ。警告手段がないことにアモンは歯噛みする。

また、本隊を離れて戦場でオリエンス・ダゴン軍団を探していたウァサゴとプルフラスは、身を隠していたアルマロス配下軍団員の接触を受けていた。

 

#96

ドラギナッツォの敗北により、戦争は最終局面へと突入する。懲罰局からはメギドたちが次々に飛び出し、メギド72側からはソロモンを中心とする突入チームが懲罰局本部へと踏み込む。そこに、とうとうアスモデウスも到着した。

強力な戦力増に、ウァレフォル指揮下のメギド72本隊は湧き立つ。更にカルコスの報告及び要請に応じ、リヴァイアサンアンドラス、ブネ、アムドゥスキアスが人質救出チームとして派遣されることとなった。

 

その頃ドラギナッツォの痛撃を受けたオーシェは、駆けつけたプルソンに看取られながら静かに息絶えようとしていた。オーシェの残した魂の残滓のようなフォトンを受け取り、プルソンは泣きながらも力強く立ち上がる。走馬灯のうわごとでオーシェが言っていた戦場の高揚が、今もこの戦場に存在すりる。それを大衆の記憶に刻みつけたいと感じたプルソンは、落ちた空島が斜めざまに地面に突き刺さる「メギドラルの大盾」へと足を向けた。そこに自分のメギドの力で傷をつけ、碑にしようと考えたのである。

 

一方、アルマロス配下の軍団員の案内を受けたウァサゴとプルフラスは、オリエンス・ダゴン軍団員とも合流を果たした。アルマロスとチェルノボグが彼らを地下シェルターに匿っていたのだ。二名はアルマロス・チェルノボグと話し、勝算五分五分の戦況にまで持ち込めれば彼らの軍団の参戦を得られる約束を獲得していた。

 

朗報を持ったウァサゴとプルフラス、「大盾」に大きな傷を刻み戦場を鼓舞したプルソンは、それぞれ本隊に合流する。プルソンの後には、彼に共鳴した軍団が友軍として続いていた。

アルマロスの軍団も、戦場の趨勢に勝機を見出して約束通り姿を表す。更にソロモンが少しずつ召喚していたアジト待機のメギドたちも、今こそはと言わんばかりに力を振るう。乾くことなき血の荒野は、メギド72とその友軍対懲罰局の大戦争の様相を見せることとなった。

 

破城蹴り(ソロモン・ラム)(命名:ハック)も交えて懲罰局を制圧してゆくソロモン一行。懲罰局内部で、外壁を破って突入してきたリヴァイアサンら救出チーム、及びアモンら先行潜入チームと合流し、更に変わり果てた姿のイポスやバラムを発見する。彼らの救助のため外科医療的措置を行えるアンドラスと護衛のブネが残ることとなった。

そのブネは、瀕死で撤退してきたドラギナッツォを見つける。宿敵に声をかけたブネは、他者もまた環境なりと説く。かつて強さを求め自分より強いものばかりを見てきたブネは、しかし今や自分自身が強き者として周囲から慕われるようになり、自分を取り巻く世界が変わったと感じるのだという。慕われる者になった時、自分は何か大きな枠組みの中に組み込まれたことを感じ、そしてその枠組み自体を大きく強くするために、自分はより強く大きく正しくありたいと思う。ブネにとって今や重要なのはその枠組みの強さであり、自分一人だけが強いことそれ自体にはさしたる意義を感じないのだ。

その語りに、意外にもドラギナッツォは理解と、気付きを与えられたことへの感謝を示す。そして両者は覚悟を決め、最後の力を振り絞ってぶつかり合った。

倒れたのはブネの方だった。呻くブネを背に、ドラギナッツォは何かの役割を果たすことを仄めかし、懲罰局局長の元へと向かう。

 

ダゴンとオリエンスは、今やほとんど黒いペースト状にまでなってしまっていた。寄生幻獣を引き剥がした上で召喚するしか、彼らを助けるすべはない。そこでリヴァイアサンが彼らとアムドゥスキアスを背に載せて飛び、近くの湖に飛び込むこととなった。水に反応して寄生幻獣が離れたところでアムドゥスキアスが指輪にテレパシーを送る、寄生拡大前提の決死の作戦である。

刻一刻と運搬チームの心身は寄生幻獣に削られてゆく。途切れそうになる意識の中でようやく湖を見つけたリヴァイアサンは、最後の力でそこに飛び込み深く潜る。背に乗るアムドゥスキアスもほとんど意識を失いかけていた。

水底深くで、息苦しさと共にアムドゥスキアスは意識を取り戻す。

 

リヴァイアサンらを見送ったのち、懲罰局の奥へと進む一行。と、不意にソロモンの眼前にアモンが飛び出したかと思うと、「俺をよく見て」と言い残し次の瞬間姿を消した。驚く一行の前に姿を表したのは懲罰局局長、偽のルシファーである。続いてアラストールも飛び出し、そして姿を消してしまう。ルシファー、もといアンチャーター・ロクスの能力であり、アモンとアラストールは我が身を犠牲にして、ソロモンに敵の能力を見極める機会を与えたのだ。

二人おかげで、ソロモンは捕縛されたメギドの救出方法を発見する。アンチャーターのフォトンを蓄える能力を応用してフォトンに分解したメギドを取り込んでいることを見抜き、相手にフォトンを更に送り込むことでところてん式に取り込まれたメギドたちが解放されるのである。

ソロモンはアムドゥスキアスを経由したエウリノームの情報により、懲罰局局長の正体がアンチャーターであることを知っていた。バビロン計画を完成させないためにも、アンチャーターはヴァイガルドに逃がすことなく倒さねばならない。

アンチャーター・ロクスを倒したことで、本物のルシファーが意識を取り戻す。アンチャーター・ロクスがフォトンとして隠し持っていたルシファーの魂の一部が解放され、本来の場所に帰ったのだ。

その時一行のもとにドラギナッツォが姿を表し、懲罰局局長を抱えて奥へと走ってゆく。そこにはゲートが開かれていた。ドラギナッツォはアンチャーターをゲートの向こうに逃がし、己はその場で自爆しゲートを破壊してしまう。

 

アムドゥスキアスの合図を受け取ったソロモンは、アンチャーターを逃したことを悔やむ間もなく四名を召喚する。また、アンドラスが処置を終えたイポスとバラムも少なくとも身体を取り戻していた。しかしダゴン、オリエンス、イポス、バラムは精神に重大なダメージを負ってしまい、意思疎通不可能な状態だった。彼らに関しては今しばらくの休養が必要なようだ。

 

アンチャーターを逃したことを改めて噛み締め苦味走る一行。アンチャーターはヴァイガルドのとある農村に投げ出されていた。そして、待ち構えていたエウリノームに破壊され凶星となってしまう。

エウリノームは「自分は誰かに騙されているのではないか」との疑念を胸に芽生えさせつつ、メギドラル帰還に使えるゲートを探しがてらヴァイガルドを見物することにした。

 

とはいえ、ルシファーが意思を取り戻したことは喜ばしいことだった。母なる白き妖蛆、あるいはカトルスでさえも、メギドたちを支配する上位存在から世界を自由にしメギドたち自身の世界として生まれ直す、その手伝いをしたいと語るソロモン。ルシファーはその決心に共鳴し、召喚を受けることを肯んじた。

懲罰局から地上に出ると、既に戦争の決着はついているようだった。ソロモンは、周囲のメギドたちから敬意のこもった注目と感謝の言葉を浴びる。メギドたちは今回の戦争が勝利の先に意味のある戦争であり、社会の仕組みを変える戦争であり、自分たち自身の戦争であると感じ、楽しかったと言う。

そこに「告げる者」たちが現れた。休戦季の始まり、統一議会の招集である。