自分用メギドあらすじまとめ11章

#109

「彼の世界」の発生は、はじめは悲鳴のようなものだった。幻獣が現れた世界が苦しみ、世界そのものの意志のようなものを持ったのだ。

「彼の世界」は数が意味をなさないほどただひたすらに叫び続ける。その叫びが何かーー幻獣として生まれようとしていたものにぶつかった時、意思も言葉も持たないそれらは一つに溶け合って、「メギド」となった。「メギド」はただ一人この世界に産み落とされ、何をすればいいのかも自分が何者なのかも分からないままもがく。それが最初のメギドにして最後のエルダー、アルスノヴァである。

本能のままに幻獣を殺し続けたアルスノヴァは、ある時「彼の世界」の意図に気付く。幻獣をこの世界に送り込んでいる存在、後に「母なる白き妖蛆」と呼ばれることになる者と接触し、侵略行為をやめるよう要請することが、自分が世界に送り込まれた理由である。長い時の果てにアルスノヴァは幻獣の送り手との接触に成功し、しかし完膚なきまでに決裂した。言葉どころか他者すら存在しなかった彼らにとって、対話など未知のものなのである。この決裂に端を発する戦争が、今に至るまでずっと続いているのだ。

「彼の世界」の強い叫びはメギドを生み出し続けた。その「強さ」は、メギドに幻獣にはないもの、すなわち自我をもたらした。そして自我こそが、メギドの行動原理を多様化させ「蛆」への対抗を忘れさせ、結果として敗北へと導くことになった。

メギドは幻獣の存在を前提として発生することから、じきに幻獣の送り手の能力を持つメギドが生まれるようになった。その能力とは「内面世界という閉じた世界から外を観測する力」である。「観測する力」が放たれ実体化したものが幻獣であり、また、その力を持つメギドはのちに「夢見の者」と名乗るようになる。夢見の者とはすなわち、「母なる白き妖蛆」に由来する力を持つ者なのだ。

夢見の者たちは、フォトンがいずこかへ流出していることから、その道筋を辿ることで世界の結節点を見つけられると考えた。その結果発見した異世界が、臨界ヴァイガルドである。

ここから始まる「エルダーの歴史」が、ベルフェゴールが大罪同盟から受け継いだ秘密である。ベルフェゴールはマモン、サタン、バールベリト、リヴァイアサン、ルシファー、アマイモンにそれを話して聞かせていた。サタンやマモンは歴史を軽んずるが、バールベリトだけはそれに興味を持つ。彼は「蛆」側のメギドとして警戒はされつつも、一定の線を引きながら元大罪同盟及び八魔星のメギドたちには受け入れられていた。

 

ソロモンはエルダーに会うため、メルクリウスで「脳消し大陸」を目指す。優先順位について、ソロモンはこう説明した。まず、サタンについてベルゼブフと争うのは、いざサタンとベルゼブフが和解した時にリスクとなる。蛆=ベルゼブフとメギド72との対立が決定的である以上、サタンとベルゼブフが和解すればメギドラルの二大勢力を敵に回すことになるからだ。和解こそなくとも、二者が互いに執着していることを思えば予想外の状況に転ぶことは十分にありえる。であれば、メギドラル中央の勢力からは距離を取るべきである。また、「大いなる意思」の奪取も難しい。よしんば何らかの方法で奪い得たとして、次はメギドラル中の軍団から狙われることになる。

更に、ベルゼブフの持つ「大いなる意思」がどれほど真っ当なものなのかも疑わしい。蛆の手が入っている可能性は十分にあるのだ。この世界に唯一残された「大いなる意思」が信用できないものなのであれば、ソロモンにできることはエルダーに会い、「大いなる意思」の製造経緯や機能も含め少しでも多くの知識を得て対策を考える材料にすることだけなのである。

「脳消し大陸」に到着すると、ブネはソロモンの目を盗んで、アラストール、ネビロス、サルガタナスをそれぞれ情報収集に行かせる。イポスたち偵察隊の行方にレジェ・クシオ脱出隊の居場所、サタンやベルゼブフの動向偵察などがその目的である。期間は一週間、任務後の集合場所はメギドラルの大盾のある「乾くことなき地の荒野」とした。

ソロモンはレラジェ、モラクス、バルバトス、バラム、パイモン?と共に地上を闇雲に歩き回ってみて、エルダーに見つけてもらうのを待つことにする。

歩き回るうち、一行の前にリリスが姿を見せる。が、蜃気楼のように現れては消えて一向に追いつくことができない。と、一人の見知らぬメギド、ファンブランが声をかけてきた。幻獣に襲われリリスを救う手助けをしてくれるのだという。ファンブランとは名のある大メギドであった。彼もまたエルダーに呼ばれて「脳消し大陸」を訪れ、既に数百年にも渡る時をそこで彷徨い過ごしていた。

リリスが幻獣に襲われたのは見間違いなのだという。そもそもリリスには実体がないのだ。リリスは夢見の者として唯一エルダーに「呼ばれた」者であり、大幻獣になるかエルダーになるかの狭間で揺れた末、「どちらでもない」ことを選ぶことに成功した空前絶後の存在である。これによりリリスは肉体の実体を失い、丸裸の魂が蒸発することを防ぐために星間の禁域に逃げ込んで、そこの番人のようにして過ごしつつ、夢の中で若い夢見の者の世話をするようになった。

話すうち、ファンブランの様子が豹変する。意識が薄れ、幻獣由来の肉体に行動が支配されてしまいつつあるのだ。それはエルダー化の過程で起こる現象であり、これまでもファンブランは何度も幻獣化しては意識を取り戻すのを繰り返していた。しかし、ソロモンたちの目の前でとうとう彼は決定的な変化に臨場する。メギドとして戦争社会に生きていた頃が「楽しかった」ことを思い出してしまったファンブランは、ついに自我を捨て去ること叶わず、大幻獣に変化して空へと飛び去った。その行く先は星間の禁域である。

再度幻影の姿を現したリリスは、ファンブランが無事星間の禁域に受け入れられたことを告げた後、自身の召喚を提案してきた。ソロモンの指輪の力があれば実体を構築し、戦力として参加できるだろうというのだ。

 

ソロモンらの行動にはエウリノームも同行してきた。

エウリノームは個の空虚なメギドである。戦争の目的にするような個を持たず、またそれを獲得することにも興味を示さない。将来のヴィジョン無くただ目の前の戦争に打ち込んできた結果、戦果のみが積み上がった。「蛆」はそんなエウリノームを、戦争の理由や意味に執着しないメギドとして重宝し、個に代わる何かを提供し続けてきたのだろうとイヌーンなどは推測していた。

道中、エウリノームは彼の知ることを話して聞かせる。「彼の世界」はメギドに対して怒っている。幻獣の駆逐という役割を期待して送り出した存在が、勝手に自我を持ち、個のため相争っているためだ。対してエルダーは「彼の世界」の望みを理解しており、メギド絶滅覚悟で「母なる白き妖蛆」の排除、撃破、消滅を行動原理としている。

(今でこそ幻獣はメギドの軍団に組み込まれ共存しているが、これは「母なる白き妖蛆」の支配下にあるベルゼブフの主導により議会で方向付けられたものである。これを含め議会対策に集中するため、ベルゼブフはフライナイツとしての裏工作をエウリノームに委ねた。ベルゼブフがそこまでしなければならなかったのは、サタンという強力な政敵がいたからだ。サタンとベルゼブフはかつて「特別な仲」だったが、サタンはベルゼブフが本来の彼ではないことを疑い、その議会での活動をハルマゲドン計画の横槍により邪魔してきた。「片や世界を奪おうとする者、片や、たった一人を奪い返そうとする者」である。)

フォトンに飢える「母なる白き妖蛆」は、メギドラル世界を奪い、自身の内面世界である「白き世界」をメギドラルに実現させようとしている。

説明をリリムが引き継ぐ。全てのメギドは不完全で未完成な存在であり、「彼の世界」は幻獣の駆逐後諸共に滅ぶ駒としてメギドを実体世界に送り出している。その滅びの運命に抵抗しているのがメギドたちの「個」だ。今メギドたちは、上位存在の駒という在り方から抜け出しきれていないのだ。

個をぶつけ合わす戦争社会をずっとこのまま続けて行きたいと多くのメギドが願う中、時折、その現状維持に拒否感を持つメギドがいる。その拒否感は思考の末のものではなく、不意に訪れる衝動である。それが、「エルダーに呼ばれる」現象である。「呼ばれた」メギドは「脳消し大陸」を訪れ、そこを幻獣になりかけたり意識を取り戻したりしながらいつしか自我を消し去り、幻獣由来の肉体も捨てて再構成し、純粋な「彼の世界」から分かたれた存在になろうとする。ここでいう「自我」とは個々の意識や感情という意味合いではなく、「メギド」という種族としての意識とでもいうべきものだ。もっと大きく複雑な存在として生きるよう心身を作り変えることに成功したのがエルダーである。「自我」と肉体を捨てるのに確立された方法はなく、実際、殆どのメギドがそれに失敗する。失敗した者は大幻獣に成り果て、蛆の支配からも離れて永劫に星間の禁域を彷徨うことになる。ある意味大幻獣とは、自我=魂を獲得した幻獣なのである。

自我が希望を持つ限り、「蛆」対「カトルス」/幻獣対メギドの代理戦争は終わらない。

 

ソロモンたちはとうとうエルダー・アルスノヴァに邂逅する。

 

サタンの軍勢は、今後のメギドラル社会の主導権を巡る、ベルゼブフを相手取った戦いに乗り出していた。まずは各自分散してアバドンの奪取を目指すことにする。バールベリトは単身レジェ・クシオの確保に向かっていたが、ハルマが多すぎたので諦めた。

 

アルマロス率いるレジェ・クシオ脱出隊はベルゼブフの接触を受けていた。大いなる意思を持っているとの言葉に議会の者たちは沸き立ち、同行を快諾する。その様子をアルマロスは疑惑の目で睨みつけ、ロノウェにその後を追わせた。

 

#110

本隊(「脳消し大陸」地上捜索):ソロモン、バラム、バルバトス、モラクス、レラジェ

本隊(メルクリウス待機):アイム、アガシオン、アガリアレプト、アガレス、アザゼルアスタロト、アスモデウス、アスラフィル、アバラム、アマゼロト、アミー、アムドゥスキアス、アリトン、アンドラス、アンドレアルフス、アンドロマリウス、イヌーン、インキュバス、インプ、ウァサゴ、ウァプラ、ウァラク、ウヴァル、ウェパル、ウコバク、エリゴス、オセ、オリアス、オレイカルコス、オロバス、カイム、ガギゾン、カスピエル、ガープ、ガミジン、キマリス、グシオン、グラシャラボラス、グレモリー、クロケル、ザガン、サキュバス、サタナキア、サブナック、サラ、サレオス、ジズ、シトリー、シャックス、シャミハザ、スコルベノト、ストラス、ゼパル、セーレ、タナトス、タムス、ダンタリオン、ティアマト、デカラビア、ナベリウス、ニバス、ネフィリム、ネルガル、パイモン、ハーゲンティ、ハック、バティン、バフォメット、バラキエル、ハルファス、バロール、ビフロンス、ヒュトギン、フィロタヌス、フォラス、フォカロル、ブエル、フェニックス、ブニ、ブネ、フラウロス、フリアエ、ブリフォー、フルカス、プルフラス、フルフル、フルーレティ、ベバル、ベヒモス、ベリアル、ベリト、ベレト、ボティス、マルコシアス、マルチネ、マルバス、マルファス、ムルムル、メフィスト、メルコム、ラウムリリム、ルキフゲス

ブネの指示で情報収集活動:アラストールサルガタナス(サタン軍)、ネビロス

サタン軍勢に参加:アマイモン、コルソン、ジニマル、バールベリト、フォルネウス、ベルフェゴール、マモン、リヴァイアサン、ルシファー

レジェ・クシオ脱出後潜伏:アモン、アルマロス、アロケル、イポス、ウァレフォル、オリエンス、ダゴンチェルノボグ、プルソン、ロノウ

その他:ヴィネ(ハルマの傀儡に甘んじ王女として活動)、プロメテウス(ライブで絶えず人前に姿を見せることでハルマや騎士団の敬遠を得る)、バエル(王宮)、バールゼフォン(トーア公国の牢に勾留)、ニスロク(どこかで料理中)

 

※前話で語られた内容の詳説

エルダーとはどのようなものなのか。

発生直後のアルスノヴァとそれに続くメギドたちは、内なる衝動の赴くがままに幻獣を狩り続けていた。ただしこの時点ではメギドたちはコミュニケーションの手段を持たず、集団での行動はできていなかった。蛆の侵略への対抗としてはあまりに焼け石に水の、ゲリラ的な戦いである。

そのうちに、アルスノヴァは幻獣の発生源に疑問を持ち、侵略行為の根本であるその幻獣の送り手のことを知ることが必要であると考える。蛆もまた、アルスノヴァのその思考をーー幻獣由来の肉体をマーカーにして内面を探る能力によってーー察知した。両者はついに邂逅する。それは、蛆がアルスノヴァを自身の内面世界に引き込むことによって行われた。とはいえ蛆の内面世界は現在のように具体的な景色の見える「白き世界」ではなく、暗く何も見えず圧迫感ばかりが押し寄せてくる「黒き世界」であった。

ソロモン王を蛆に認識させる「アルス・ノヴァの儀式」の場は、遡れば最初のメギドにして最後のエルダー・アルスノヴァが蛆との接触に成功した場所である。

アルスノヴァと蛆の交渉は、しかし対話にすらならず、ただ感覚的に互いが相容れないものであることを両者に印象づけただけであった。互いに言葉やコミュニケーションの手段を持たなかったからだ。

決裂した接触を経て、アルスノヴァはメギドという在り方からの脱却の必要性を感じるようになる。幻獣由来の肉体ゆえ潜在的に蛆の支配下にあるメギドという在り方のままでは、蛆と戦うことは叶わないのだ。そしてアルスノヴァは「脳消し大陸」で自己探求の旅を始め、幻獣とメギドの間を揺れ動きながらついに肉体を捨てエルダーになることに成功した。今アルスノヴァは魂だけでこの世界に存在しており、物理的にある身体は、元の肉体をフォトンに分解した上で成形し魂に纏ったものである。

 

次に、夢見の者とはどのようなものなのか。

他者の精神に干渉する「夢見の力」が一種族一個体であるはずのメギドの複数個体に発現するのは奇妙なことである。自分に似た力を持つ者がいることをとある夢見の能力者たちは不思議に思ったが、それはすなわち、メギドが初めて他者に興味を持ったことを意味していた。夢見の力を持つとあるメギドは他のメギドとのコミュニケーションを計った。結果として非夢見のメギドとの接触は言葉を持たぬがゆえに成立しなかったが、夢見の者どうし、精神世界で非言語のイメージをやり取りすることにより、友好的な接触を持つことには成功した。これがメギドにおける最も古い社会の形である。

夢見の力は、母なる白き妖蛆の持つ力と同種のものである。彼らの身体が幻獣に由来しているために、幻獣の送り手である蛆の持つ力を受け継いだのだ。

蛆は自らの内面世界を創造する力を持っており、このイマジネーションの力を外に向けると、異世界に幻獣という存在が具現化する。漠然としたイメージという意味では、蛆がイマジネーションにより幻獣を生むことと、「彼の世界」が叫びによりメギドを生むことはとても似ている。しかしメギドと違い、幻獣は蛆と繋がり続けている。そして蛆の耳目となって「外の世界」の情報を蛆に届け、また、手足となって異世界に干渉する。

精神を実体あるものとして扱える点、外の世界に耳目を向けて観測活動をできる点において蛆の力と夢見の力は共通点を持っている。自分たちの力が幻獣の送り手に由来していると推測したメギドたちは、蛆への接触を試みた。しかしなまじ直接精神でやり取りできてしまうが故に、「黒き世界」に行った夢見のメギドたちはその意味不明な精神世界に自らの精神を破壊され、例外なく発狂し死んでいった。

夢見の者たちは、この失敗体験以後、蛆と正常なコミュニケーションを取り、そして自分たちの能力の由来に関する仮説を証明することを目的に据えた。それは非夢見のメギドたちの持つ目的、すなわち幻獣の殲滅・蛆の抹殺とは方針を異にしていたことから、夢見の者たちは独自勢力としてメギドたちと蛆との間で中立を取ることになる。

蛆がメギドラルからフォトンを持ち出しているのなら、その持ち出した先、この世界の外に実体ある異世界が存在しているはずだと夢見の者たちは考えた。蛆から受け継いだ「外」を観測する力を信じて、夢見の者たちは流出するフォトンの痕跡を追ってメギドラルを飛び出した。彼らは蛆の「黒き世界」を見つけることはなかったが、代わりに、ヴァイガルドを発見した。

ヴィータの夢を通して夢見の者たちの得たヴァイガルドに関する知見は、彼らに中立の立場の保障を与えた。その知見はメギドにとっても蛆にとってもあまりにも有益だったのだ。中でも「言語」は双方に劇的な変化をもたらした。

言語はイメージを明確にし、メギドが死んで経験が「彼の世界」に持ち帰られることで、「彼の世界」をも豊かにした。以降、発生するメギドは生まれながらにして社会常識や言語を解するようになる。そしてコミュニケーションを会得したメギドたちは互いを仲間と、そして蛆を敵と認識するようになった。メギドラルにおける社会の誕生である。

夢見の者たちは引き続き蛆との交信の方法に頭を悩ませる。言語を会得したとしても、蛆との間には未だ深い断絶が存在していた。それは蛆とメギドたちの精神があまりに異質であったためであり、換言すれば両者の間にコモンセンスが全くなかったのだ。よって夢見の者たちは、蛆に情報を与え、共通認識を打ち立てようと考えた。その情報というのはヴァイガルドに関するものである。ヴァイガルドの情報は蛆に受け入れられ、ヴァイガルドに酷似した「白き世界」が構築されるようになった。長い時を経て、蛆は交信可能な存在へと変貌して行った。

蛆に共通認識を与え「白き世界」を創り出させたことは、確かに蛆との対話を可能にはしたが、それ以上の後悔を夢見の者たちにもたらした。「白き世界」構築はフォトンを必要とする。すなわち、かつてに輪をかけて蛆を飢えさせてしまったのだ。幻獣は急増し、それに呼応してメギドも増える。メギドラルのフォトンはみるみるうちに減ってゆく。

そしてまた、言葉は思考を可能にする。蛆はより狡猾により賢くなり、明確な意志を持ってメギドラルを侵犯するようになった。

これが、夢見の者の視点から語られるメギドラル史の物語である。

 

言葉と社会ーー経験を伝える手段と、伝えるべき相手ーーを得たメギドたちは、歴史を紡ぎ始める。

言語を得たアルスノヴァはーー当時はまだアルスノヴァと名乗っていなかったがーー周囲のメギドたちに超存在化を説き、賛同した者たちの多くは超存在化に成功した。エルダーという呼称は最長命のメギドでるアルスノヴァ一人を指すものであったが、次第に超存在全般を指すようになり、代わってアルスノヴァはアルスノヴァという名を使うようになった。超存在化したメギドたちは、そうでない者をアンダーメギド(メギド未満)と呼ぶようになった。今でこそ超存在はエルダー、それ以外がメギドという単語運用がされているが、エルダーたちも自意識としてはメギドであり、超存在化していない者はそれ未満だと感じているという。

当時の(アンダー)メギドはほとんどが獣同然の暮らしをしていた。それゆえ、社会の成立と発展はエルダー(彼ら自身の自認としてはメギド)の手によりなされた。蛆に対する継戦能力を維持する基盤として社会が要請された。

社会の発展はメギドを強くした。しかし、そこに回復不能なまでの打撃を与えたのがハルマとの間の古代大戦である。戦争による疲弊は大きく、エルダーは数を大幅に減らし、社会は衰退した。一方で蛆は着実に知識と思考能力を積み上げ、強くなっていた。古代大戦は蛆との戦いを前にするとあまりにも益のない無駄な消耗であったが、それでもエルダーたちは、自分たちのあり方に大きな影響を与えたヴァイガルドの真実に強い怒りを感じてしまったのだという。ヴァイガルドは、蛆に敗北した後のメギドラルの有様を予言していた。エルダーは言葉を濁したが、かつてハルマはヴィータから力を奪い、短命で脆弱、かつ一定以上の文明を得ると急速に滅亡に進み、そして滅亡の度に生き直させる種として管理している。蛆がメギドラルに対して抱く野望は、その構図を参考にしている。生きる喜びを教えてくれたヴァイガルドがハルマの管理と搾取に晒されていることは、エルダーたちには耐え難かったのだという。

しかし、古代大戦はメギドラルを衰退させた。エルダーは異世界の事情に踏み込んで自ら滅びに近づいたことを反省し、二度と手を出すまいと誓った。

古代戦争はまた、非エルダーのメギドたちを文明化した。大きな戦争に熱狂した彼らは、積極的に知能や技術を向上させたのだ。中でも知能の高い個体はアバドンなどの兵器をも制作した。非エルダーのメギドが言語を獲得したのもこの頃で、戦場となったヴァイガルドで使われていた言語を取り入れる形をとった。非エルダーのメギドたちの歴史は間違いなくここから始まっている。

ヴァイガルドを滅ぼしかけたところで、ようやくハルマとメギド(エルダー)は講和し、護界憲章などを共同制作した。

古代戦争の高揚は、非エルダーのメギドたちに渇望を教えた。戦争に飢えながらも戦うべき相手を失った彼らは、メギド同士で相争い、フォトンを浪費してメギドラルの大地をより一層痩せさせてゆく。

古代戦争によって壊滅状態にまで数を減らしたエルダーは、非エルダーメギドがメギドラルを破滅に導こうとしていることを憂い、大きな決断をする。メギドラルの社会を非エルダーメギドに譲り渡し、自分たちは文明の中心から退くことにしたのだ。

大戦前と比べれば知恵をつけてはいたものの、未だアルスノヴァをして「獣同然」と言わしめるほど愚かであった非エルダーメギドたちを社会の中心に立たせることは大変困難であった。そこで、とあるエルダーが「大いなる意志」を発明し、非エルダーメギドたちに与えた。それは彼らに強烈な影響を及ぼし、野放図であった社会は管理された戦争社会になった。個を尊重しつつも全体として目指すものを提示し共有し、戦争の結果を評価するシステムによって、非エルダーメギドたちの社会は劇的に成熟した。

「大いなる意志」をメギドたちの社会化の手段と捉え、既にメギドたちは自力で社会を運営できていることからそれはもう不要だとの理由により、アルスノヴァは「意志」の破壊について楽観的な立場を取っていた。しかし、ソロモンはこれに異を唱える。いつかメギドたちはエルダー化せずとも「蛆」との戦いに勝つだろう、そして「意志」には戦いに臨む未来の希望が宿っていたとソロモンは言った。

改造覚悟でベルゼブフの持つ「大いなる意志」の複製を奪うしかないのかと眉根を寄せる一行に、アルスノヴァが一つ助言をする。議事フォトンのアーカイヴがあれば、改造を施された「大いなる意志」を正常な状態に戻せるかもしれないとのことだ。その議事フォトンは単回の統一議会の結果を記録したものではなく、全ての議会の結果と議決に至るプロセスを蓄積したものである。すなわち、「大いなる意志」自身のための議事録であり、議論プロセスの状態が正常かをチェックするためのなのである。それがあるかもしれないのは、今や放棄されて久しい「旧議会場」だ。バックアップ用議事フォトンは統一議会の度に最新版が作られることから、古いバージョンのアーカイブならばレジェ・クシオ議会場に移送されることなく旧議会場に残っているかもしれない。そして旧議会場の設備が破壊を免れていれば、その議事フォトンは霧散せず残っているかもしれない。数百年分のギャップはあるが、それでもこの議事フォトンをベルゼブフの持つ「もう一つの大いなる意思」に取り込ませることができれば、システムの自己チェック機能が働いて「意思」がまともに戻るかもしれない。

それを聞いたメギド72は、次なる目的地を旧議会場に定めた。

なお、実体を移送できるゲートは当時まだ存在しなかった。ゲートは召喚に似た技術であるという。

また、アンチャーターは制作経緯や理由がやや不明である。非エルダーのメギドが、こっそりと護界憲章に用いられた技術を盗んで開発したのだという。

 

フライナイツのレオナールもまた、情緒不安定なメギドである。彼は他者から観測されることでようやく自我を認識し、ヴィータ体を正しく構築できる。そのため彼は周囲の者に執拗に自分を見るよう求め、「整っているか」と尋ねる。

今もまた、レオナールは偶然行き合ったプロセルピナに自分を見るよう迫っては邪険にされていた。彼はプロセルピナのお座なりなまなざしでは満足できず、自分には「観測ちゃん」(=メギドラル時代のティアマト)が必要なのだと訴える。

レオナールはプロセルピナに懲罰局が壊滅したことやガギゾンが賭けペリビットでメギド72に移籍したことを教えた。

ハルマ戦にて標的にしていたカマエルを掻っ攫われたことに憤るプロセルピナ、「観測ちゃん」を奪われたことを恨み、「観測ちゃん」を奪い返すとともに懲罰局崩壊のきっかけを作ったガギゾン討伐の戦果を作ってベルゼブフに評価されようと考えるレオナール。認知の少し歪んだメギドとかなり歪んだメギドはメギド72の居場所を目指すことにした。最終的にはベルゼブフの元に集い、八魔星に代わる新たな有力者同盟を作ろうと展望を語る。

レオナールの異様な執着のもたらす勘は、メギド72を待ち伏せるべき場所は「旧議会場」であることを二名に教えた。

 

メルクリウスで旧議会場に到着するメギド72。そこはかつてアイムが怒りのままに破壊し、放棄されてのち火山噴火にも巻き込まれ、荒廃し風化するがままになって久しい。アイムの破壊ぶりに思いを馳せ、ソロモンは密かに彼女への見方を変えていた。

ソロモン、セーレ、アイム、アスモデウス、ティアマト、ベリアル、パイモンはまつろわぬ者対策として仕掛けられた罠を超え廃墟を進む。その後をレオナール及びプロセルピナがこっそりと追っていた。二名ははじめこそソロモンたちの撃破という戦果を狙っていたが、メギド72の強さを目にしてからは、幻獣をけしかけて疲労を誘いながら彼らの探す宝を横取りする方に目的を挿げ替えていた。

不審な視線を察知したティアマトの手柄で、ソロモンらはレオナールたちを発見する。と同時に、ソロモンも議事フォトンを発見した。敵との邂逅のタイミングで議事フォトンを手にしてしまったことから、一行はーーティアマトに忘れられて打ちひしがれるレオナールはともかくーープロセルピナとの戦闘にもつれ込むことになる。しかし、戦いのさなかに始まった地震のため、両者は戸惑いながらも一時休戦することにした。

一方その頃、メルクリウスに待機する者たちは焦っていた。オセとオリアスが火山噴火を予言したのだ。メギドラルの火山噴火はフォトンを含んだ溶岩の活動に地盤が耐えられなくなった瞬間突発的に起こるものであり、山自身も含め辺り一帯が吹き飛ぶほどに破壊的な現象である。

慌てて走るソロモンたちの前に、絶好のタイミングでメルクリウスが到着する。土壇場でプロセルピナとレオナールも一緒になり、どうにか船に乗り込む一行。急加速ののち、無事全員火山噴火の餌食となることを免れた。

多少の押し問答ののち船を降りるプロセルピナとレオナール。幸い、どさくさを経て議事フォトンを奪う気は失せたらしい。また、ガギゾンはティアマトがレオナールのこともガギゾン自身のことも覚えていないことに驚いていた。そもそもメギドラル時代の彼女は言葉も話さずヴィータ体も取らず、ただひたすらに執着した対象を見続けるだけの生態をとるメギドであった。ガギゾンはエウリノームと話し合い、ティアマトの変貌と記憶喪失は恐らく「デミウルゴス」なるメギドによる実験の影響だろうと結論づけた。そして、デミウルゴスとソロモンとは遠からずぶつかるだろうと予測する。

ソロモンたちは再びエルダーのもとを目指すことにする。

 

単身メギドラルを訪れていたグリマルキンは、現地で友軍の猫たちを得、彼らに物語を語る。これもまた、猫たちの視点から語られるメギドラル史である。

数百年前、一匹の猫がヴァイガルドからメギドラルに迷い込んだ。飢え死にしかけていたそれを助けたのが滞在同盟時代のベルゼブフであり、助けられた猫はベルゼブフが思い入れを持つ唯一の猫となる。彼らは互いに深く干渉はせず、拒みもせず、共生していた。

その純ヴァイガルド産猫の子孫が、グリマルキンの母猫である。グリマルキンは、猫の胎児に宿った幻獣に更に重なるようにして発生した。なり損ないを経ずに発生した稀有なメギドである。グリマルキンは母猫を殺すまいと体を必死で縮めたが、悲しいことにメギドの出産に母猫は耐えられず死んでしまった。父猫は生まれたばかりのグリマルキンに優しく接し、以来、長い間グリマルキンは彼を「猫師匠」と呼び慕っている。ヴァイガルドに亡命してからは、何故か猫師匠はヴィータの姿を取るようになったが、グリマルキンは特に気にしていない。

グリマルキンはベルゼブフに先祖の恩を感じているわけだが、しかし猫の性質上恩義に忠実に報いるわけではない。とはいえ、ヴァイガルドに黒い猫を潜入させヴィータを扇動しソロモンを貶めたような戦術、それをしていたのが偽物のベルゼブフであるのならば、話は別だ。ベルゼブフと先祖猫との間にあった損得の差し挟まれない交流を毀損する侮辱であり、グリマルキンの戦争の理由になるのである。グリマルキンはベルゼブフの偽物を倒す戦いを志している。

その時火山の噴火が発生し、猫たちは必死に逃げる。

 

自分たちの今後を憂いながら歩いていたプロセルピナとレオナールは、蘇ったリバイバイルに偶然遭遇した。一つ前の生の記憶を残していたリバイバイルにプロセルピナは興奮し、ベルゼブフであれサタンであれいずれかの陣営の研究機関に預けることで大発見に貢献し功績を得られると考える。いずれの陣営につくかは保留にしつつ、リバイバルは再びプロセルピナと行動を共にすることになった。

その後ろで、幻影のような影が彼らを見ていた。影は「『ユガミ』を見つけた、母なるものに伝えなきゃ」と呟き消えた。

 

#111

「大いなる意志」を通した議会の設立により社会の運営者の立場を譲り渡された非エルダーメギドたちは、しかしその無防備さゆえに、社会への蛆の干渉を許してしまう。メギドラル社会が侵略されていることと蛆が戦略的に動き始めたこととに衝撃を受けたエルダーは急遽社会体制を自分たちの手に取り返した。その中心にアルスノヴァがいたことから、マグナ・レギオの前の体制はアルス・ノヴァ体制と呼ばれる。エルダーが主導する社会は、大罪同盟の反乱により崩壊するまでの長きに渡り安定していた。

ハルマとの休戦後不干渉となったヴァイガルドを懐かしんだエルダーらは、ヴァイガルドの文化をメギドラルで再現し楽しんでいた。これが「ビルドバロック」の文化である。この文化圏の中では、エルダーと非エルダーメギドは極めて有効的であった。しかしこの文化に共感せず、かつ蛆の操作も手伝い、退廃的だと批判する者もあった。

メギドは「雰囲気」あるいは「形を与えられた潜在的な願望」で動きやすい存在である。すなわち一個体一種族の意識が反転して、他種族である別のメギドさえもが共有した認識、社会全体の共感したことは極めて好意的かつ無批判に受け入れ熱狂してしまう傾向がある。それは例えばハルマゲドンである。

それゆえ、ビルドバロック批判は多くの非エルダーメギドを巻き込む大きな波へと成長してゆく。その背後には、わけもわからぬままエルダーに体制を取り上げられたことへの不満もあったのだろう。非エルダーメギドたちは古代大戦時代のメギドのあり方を理想視し、「古き良きメギド」を目指す原始回帰の風潮を持つようになった。そして当時最も勢いのあった大罪同盟が多くの非エルダーメギドたちの支持を集め、アルス・ノヴァ体制を転覆せしむるにいたった。

アルスノヴァに言わせれば、彼らの言う理想的な「古き良きメギド」とは、古代大戦時代の非エルダーメギドとエルダーの活躍を都合良く継ぎ接ぎした幻想だ。しかしソロモンは、(ヴィータからしたら背筋の凍るような文化だが)幻想であろうとひとつの理想を自分たちで抱くようになったのなら、それこそメギド自身の文化だろうと心中で反駁した。

アルスノヴァから見て、現マグナ・レギオ体制は蛆の体制である。蛆がメギドたちに干渉する手段を得て、そうと気付かれないまま誘導し運用する体制なのだ。アルスノヴァにとっては、マグナ・レギオの一員であるメギドが造る体制は等しく警戒対象である。そのため、体制確立に有用な「大いなる意志」がマグナ・レギオ所属メギド、とりわけ明らかに蛆についているベルゼブフの手に渡るのは、エルダーの発明品を悪用して蛆を利することに直結し、面白くない。本当なら破壊したかったが、「意志」に希望を見出すソロモンに配慮し、デバッグの術を教えたのだという。

とはいえ、「外」から侵略してくる蛆に対して「内」にある「大いなる意志」が機能している限りメギドが完全に蛆に支配されることはないらしい。

ここまで話し終え、ようやくエルダー・アルスノヴァはソロモンに本来の用向きを話す。それは、メギドラルに実態を得た母なる白き妖蛆を倒してほしいとの依頼であった。実体化した母なる白き妖蛆を倒したところで、存在自体を滅ぼすことにはならないというのがエルダー・アルスノヴァの目算だ。実体は母なる白き妖蛆の存在の一部分に過ぎず、今はたまたま主観の在り処をそこに置いているだけだ。母なる白き妖蛆の存在はその内面世界そのものであり、蛆を滅ぼすにはメギドラルの外にある世界そのものを滅ぼさねばならない。このような戦いにエルダー・アルスノヴァ自身が望むことは、勝利の見込みは少なく戦力を読まれたりあまつさえ殺されたりするリスクばかりがある。そのため、ソロモンにこの役割を依頼したというのだ。その内情を知った上で、ソロモンは依頼に快諾した。

 

かつてベルゼブフは、己の思い描く「新世界」のことをサタンに話して聞かせたことがあった。彼の言う「新世界」とは従来と常識を異にする世界のことであり、その点において物理的な場所は問わない。ベルゼブフの語る新世界では、メギドは皆ヴィータ体を取って生存のためのフォトンを節約する。そして浮いたフォトンを、懐柔のため幻獣に与える。度を超えた量のフォトンを欲した幻獣は殺し、かくして幻獣を飼い慣らし、管理し、同じ世界での共存を図るのだという。メギドの発生が幻獣を前提にしていることを踏まえれば、幻獣との共存がメギド自身の存続のためにも最適解といえるのだ。幻獣の駆逐から、自分たち自身の存続に大目的の切り替わった世界は、これまでの常識を覆した新しい世界である。

自身と世界に抑制を与え存続してゆくこの思想について聞くと、アスモデウスはベルゼブフが己の個を変えることで世界との関係性を革新しようとしていると表現した。そして一つの個が自我の赴くままに力を振るうことで世界を変えるという歴史観を持つ自分とは真逆であり、面白いと言った。

 

ベルゼブフが議会の者たちの勧誘に動いていると見たサタンは軍勢を分け、ベルゼブフ麾下の各勢力に攻撃を仕掛け始めた。しかし戦力の分散の隙を逆につかれ、サタンのいる本隊に奇襲を受けてしまう。議会の者たちの前に姿を現したベルゼブフは偽物であり、議会の者の勧誘とサタンの戦闘行動の誘発のためのブラフを兼ねた作戦だったのだ。本物はその頃サタン軍の近くに身を潜めていた。

戦場で相対するサタンとベルゼブフ。「新世界」へのサタンの参加を心待ちにしている、そう言ったのは偽りであったかと問うサタンに、ベルゼブフはそれは本心であり、しかしサタンがそうしないことも分かっていたから刃を向けたのだと答えた。かつて聞かされた「新世界」とは似ても似つかぬ、大いなるバビロンの向こうの世界と、それを唱えたベルゼブフ。特別な相手の中身に決定的に異質なものが混ざっていることへ怒りを顕にし、サタンもまた武器を構えた。

サタンの視線はベルゼブフにとっての外なる自己、すなわちベルゼブフを最も正確に観測し、そこに発生している変化、差異を示す鏡よりもより鏡のような存在であると言う。主観でしか存在し得ない自我を最も信頼する、真に対等な相手に預け補完し合う関係こそベルゼブフの最も求めるところのものであるという。

「精神は内にしかない」「世界は外にしかない」自我と世界の断絶を繋ぐことこそ特別な関係性の持つ特権なのだという。そして自我が世界と繋がった時はじめて自分が世界にあることの意味が生まれる。

他者の眼差しを通して自己を形作り、その営みによって自分と世界との接点を得る。それを真に対等で信頼する者との間で相互に行う。これは確かに自分の知るベルゼブフの思想だとサタンは言う。戦争ではない方法でなぜそれを追い求めないのかとサタンが問うと、ベルゼブフはおもむろに精神に揺らぎを生ぜしめはじめた。それでも言語能力を持ち直すと、彼は話を続ける。ベルゼブフは「別の方法」を見つけたのだという。そしてその「別の方法」を実行しようとするベルゼブフは既にサタンの知るベルゼブフではない。この変わってしまった後のベルゼブフ、彼自身の自称においても「私´」は「目的が人格化した存在」だという。

ベルゼブフは意識の中で母なる白き妖蛆に何兆回と殺され、屈服を余儀なくされた。不本意に大罪同盟何よりサタンと争ううち、蛆の支配する未来のメギドラル、メギドがヴィータ同然に貶められ幻獣が闊歩する世界で、で一つの肉体にサタンと己二人分の魂を入れてしまえばーー己の内側に内面世界を作り、そこでサタンと暮らせばいいのではないかとの発想にいたる。これが、ベルゼブフのいう「もう一つの方法」であり、これを実現しようとする主体が「目的が人格化した」「私´」である。自問自答の末に勝利したのは「私´」すなわち蛆に協力しながら、己の内面世界でサタンと共にあろうとする意識であった。本来のベルゼブフの意識は蛆に協力しメギドを滅亡に導くことを嫌ったが、意識の主導権を握る力は彼に残されていなかった。

戦いが煮詰まった頃、サタンは秘策を出す。ソロモンである。時期尚早の気はあるとはいえ、これを逃せば自身とベルゼブフいずれかの死しか結末の選択肢はないと判断したのだ。死力を尽くし、サタンのソロモン王はベルゼブフの召喚を試みる。不純物の混ざった「ベルゼブフ」から、サタンのよく知る本来のベルゼブフの魂のみを召喚によって取り出そうというのだ。それはベルゼブフにとって救いであるはずだが、しかし「私´」としてのベルゼブフは、内なる新世界構想に拘泥しその召喚をはねのけようと絶叫した。

ところがその時、ふいに召喚の力が阻害される。メギドラルに残ったハルマのジャミングである。膝をついたソロモン王の前で、サタンとベルゼブフが再び刃を交える。そしてついに、二名は刺し違え共に地面に崩れ落ちた。相討ちであり、それこそがベルゼブフ´の狙いであった。

ヴィータ体で最後まで戦ってくれたことへの感謝を述べ、新世界にゆこうとベルゼブフ´はサタンに語りかける。そこにはサタンの知るベルゼブフがいるのだという。瀕死の状態でベルゼブフ´は「大いなる意志」を取り出す。それこそが、ベルゼブフ´がサタンと共に精神世界に旅立つための手段であった。

実のところ、意思疎通が難しくなった時点でベルゼブフ´は母なる白き妖蛆からほとんど見放されていた。母なる白き妖蛆は既に十分に力をつけ、実体も得て、ベルゼブフ´や「大いなる意思」無しでも十分に大いなるバビロン計画を実行に移せるのだ。既にベルゼブフ´は用済みであった。放ったらかされていたベルゼブフ´は偶然にーー妄戦ちゃんの介入によりーー意識を取り戻し、新体制樹立のためと偽って「大いなる意思」を携え、サタンに挑み、そして彼ともども、死により魂だけになって混ざり合いながら「大いなる意思」の中に取り込まれて行った。二名を取り込んだ「大いなる意思」は、ベルゼブフ´の用意した幻獣に運ばれていずこかへと消えた。

フォルネウスはくず折れるメギドラルのソロモン王を奮い立たせ、生き延び足掻くためにまずはリヴァイアサンやマモンがまとめている隊への合流を目指すよう諭す。また戦いを偵察していたサルガタナスとハヤイカは、この大事件を伝えるべくソロモンのいる本隊へ急いだ。

 

ベルゼブフへの対抗のためアバドンの奪取を目指していたマモンとリヴァイアサンの小隊は、おびただしい数の幻獣がアバドンに群がるのを見て呆然としていた。二名は瞬時に勝てないことを悟り、アバドン奪取を諦め撤退する。また、ハヤイカは偵察のため近くにいたサルガタナスへの接触を命じられた。サルガタナスを通じて、ソロモンに戦闘への参加を呼びかけるのが目的だ。大量の幻獣を意のままに操れる存在など蛆をおいて他にはおらず、蛆が戦闘に直接介入しはじめたとしたら、それはソロモンの戦争に直結するのだ。

レジェ・クシオを逃れ隠れ住んでいた面々ーーアルマロス、アモン、アロケル、イポス、ウァレフォル、オリエンス、ダゴンチェルノボグ、プルソン、ロノウェもまた、情勢を読み行動を開始する。彼らは不利を覚悟でサタンにつくことを決断した。

アルマロス配下のゲストレイスとウァレフォルは、分散してしまった8魔星のいずれかに合流し、共に戦力再集合を目指す。ロノウェは先程(109話)偽のベルゼブフが勧誘に訪れた際、後を追って隠れ家を出ているが、この偵察行動は継続させることにする。偽物を引き込む見込みがあるのなら、そちらを自分たちで擁立し旗頭とできるとのアルマロスの判断である。

 

再び「脳消し大陸」を訪れたソロモンたちは、エルダー・アルスノヴァとの対話の合間に幻獣討伐を依頼された。それは幻獣とは言いつつエルダーにも大幻獣にもならなかった存在で、メギドばかりを襲う上に他の幻獣たちから英雄視されているため危険なのだという。フィロタヌスに連れられた幼いメギドたちや、またオロバスなども船を離れて「脳消し大陸」を散策していたため、不用意に当該幻獣に遭遇する懸念もある。討伐隊にはブネやグレモリーが参加した。オロバスはソロモンたちが旧議会場を探査していた間単身エルダー・アルスノヴァに会いにゆき、「極めて個人的なこと」を聞き、そして珍しく悩んでいたらしい。

オロバスはエルダー・アルスノヴァに、自分がエルダーに呼ばれたのか尋ねに赴いていた。エルダー・アルスノヴァはあくまで推測であると断った上で、オロバスがエルダーに呼ばれた可能性を否定した。もしオロバスが、研究という営みそれ自体を目的化し、目的なき研究という生の寄り道に明け暮れて生を浪費するのであれば、自分は失望するとエルダー・アルスノヴァは言う。自らの研究は浪費ではないとオロバスがきっぱり否定すると、エルダー・アルスノヴァはオロバスの中の矛盾を指摘してみせた。自身の研究が本当に目的なき無為な寄り道でないのであれば、オロバス自身も気付かない目的があるはずだと言う。それはオロバスがかつて持ち、しかし忘れてしまったものかもしれない。エルダー・アルスノヴァの目にオロバスは、妥当蛆という目的を顧みないという意味でエルダーには程遠く、しかしエルダーと同じく一つの目的に純化した存在として映るのだという。オロバス自身もそうと分からぬまま、その未だ得ぬ、あるいは失われた目的、研究テーマの手がかりを求めて自身のもとを訪れたのではないかとエルダー・アルスノヴァは指摘した。

エルダー・アルスノヴァの指摘にオロバスは天啓を得、それを肯定した。己が真に知るべきことは何なのだろうと、彼は迷いの小道に分け入ってゆく。

物思いに耽りながら脳消し大陸の海岸を歩くオロバスは、偶然通りがかったバラキエルに問われ、髑髏の仮面は自分の生き様なのだと答えた。そしてバラキエルが「最強」を求める営みも、戦争も愛も料理も、自身の研究と同じく、自己の求める本質を観測するための手段であり、生のテーマであると話して聞かせる。かつ自我とは、この本質の各々が探索のために持っている方法論が意識化したものであるという。次第にオロバスの思索は目の前のバラキエルの存在を忘れ、もしかしたらこれまで何人も辿り着いたことがないかもしれない本質(何のだろう)を見つけるためにはどこに研究の対象を定めるべきかという具体的な方法論を案じ始めた。そして何気ないやり取りの中で、幻獣が目的や役割を持って組織的に動くことがあることに引っかかりを感じる。それは彼らが生命だからであるが、では、「生命とは」そして「フォトンとは」。オロバスは思考の中に深く沈んでゆく。幻獣に追われ喧騒の中で、オロバスはひとつの閃きを得る。すべての問題はフォトンであり、それが生命に影響する理由こそ彼が追うべき問題である。

 

メルクリウスのキャンプではエウリノームがアムドゥスキアスから、半身と合体していた時の彼女の内面の相剋について聞き、考察を深めていた。ベルゼブフの内面の分裂状態の解消のための参考になりそうだとのことである。エウリノーム曰く、魂と自我はイコールではない。魂とは己という存在をこの世界に繋ぎ留めておくための座標である。自我とは、感覚器官から得られた情報に対する反応の蓄積であり、後天的に獲得するものである。それがなくとも存在の存続自体に直接の影響は及ぼさず、実際赤ん坊などは自我の有無は曖昧である。ゆえに裏を返せば、一つの魂に二つの自我を付与することも可能であり、その例が今のベルゼブフだ。

もう一人の自分の自我を見送った経験のあるアムドゥスキアスは、ベルゼブフの内面の相剋を想像し助けたいと願い、しかし自我を一つにするということはいずれかの自我を否定することなのだと懊悩する。いずれにしてもどのような状態が「正しい」のかなど他者が決められるものではなく、本人だけが自分にとってもっとも良い状態を判断する権利を持つ。但しアムドゥスキアスにとってのプルソンのように、誰かが何らかの状態を願い、外から手を差し伸べてくれることはあるだろう。

 

ソロモンはエルダー・アルスノヴァに依頼された大幻獣討伐を成功させ、同時にフィロタヌスらやオロバスらの回収も果たしてメルクリウスのキャンプに帰投していた。そこに伝令の役を負ったサルガタナスとハヤイカが現れ、ベルゼブフとサタンの相討ち、「大いなる意志」による二者の魂の取り込み、及び幻獣による「意志」の持ち去りを伝えた。ベルゼブフは自身の個人的な目的のために「大いなる意志」を奪ったという事実は、多少の驚きを一行にもたらした。

二大勢力の脱落は、すなわちメギドラルの混乱の助長に直結する。ソロモンはエルダー・アルスノヴァが、このままではメギドラルは蛆に負けると言っていたことを思い出しながら、同じ言葉を繰り返した。

実体化した母なる白き妖蛆を倒すことは、カトルスと蛆との抗争の戦況を押し返す程度の意味しか持たない。しかし実体化した蛆を放置しておけば、混乱のさなかにあるメギドたちは容易にその干渉を受ける。メギドたちは無力化され、知恵のある幻獣として蛆に使役される存在になってしまうだろう。

既にメギドたちは、蛆の間接的な影響力の下にあるマグナ・レギオ体制の中で、自分たちの本質が競争と闘争にあると信じ込まされてしまっている。ここにほんの少しのルール、すなわち蛆に従っていれば滅亡を回避して生存可能な最低限のフォトンを得られることを学習すれば、メギドたちは蛆の奴隷に成り下がるだろう。そうなってしまえば、フォトンの枯渇の蛆による切り捨て、そして世界の滅亡までの道のりは一直線だ。

暗澹とするメギド72の一同。そこに、ブリフォーが風穴を開けるような意見を発する。二大勢力が倒れた今、ソロモンこそが指導的立場を目指すチャンスだというのだ。メギドたちは沸き立ち、ソロモンに発破をかける。ソロモンはそれを大まかには肯定しつつも、新体制樹立後社会を健全な状態でーー蛆の干渉を抑えてーー運営するには、やはり議会と「大いなる意思」が必要だと説いた。

 

キャンプから少し離れたところで、サレオスとヒュトギン、サタナイルが密談を交わしていた。以前ネフィリムがペクスのキノミを保護した際、それを援助しつつペクスの存在を伏せることにした面々だ(イベントストーリー「守りたいのはその笑顔」)。「借り腹」、「牧場」、などの単語が飛び交う。サレオスやヒュトギン曰く、人形のメギド体から察するに少なくともボティス、エリゴス、セーレ、インキュバスサキュバスなどは「借り腹」により発生したメギドと推測できる。ハルマの不自然な撤退の裏にペクスの戦地投入があることを三名は見抜き、この機にソロモンにペクスの存在について説明すべきではないかと話す。あわよくばペクス牧場を潰すことも可能かもしれない。ただしそれはメギドの発生にも影響を及ぼす上、議会さえも不可侵の存在とする牧場関係の最上級指導者、デミウルゴスを敵に回すことになるだろう。

 

ガギゾンは一人ベルゼブフについて思案していた。彼は二つの人格を身の内に持っており、それらは肉体にある限りにおいては徐々に分離してゆくが、「白き世界」では混ざり合い混乱した状態になる。完全に2つの人格が分離した状態では、主導権を握っている方のベルゼブフ´が目的を実行するだろう。それを止めるためにか、あるいは混乱状態を利用して母なる白き妖蛆に思考を読まれないようにするためにか、本来のベルゼブフは自我を自覚できる程度に人格の分離が進む度「白き世界」に飛び込むようにしていた。ガギゾンは、偶然その営みに居合わせ巻き込まれることで、本来のベルゼブフの意識を観測したことがある。ゆえに彼は、ベルゼブフに手を差し伸べることが可能な立場にある(?)。

 

発進したメルクリウスの上で、エウリノームはソロモンに別れを告げた。ベルゼブフの友人としてベルゼブフ陣営に参加するのだという。自分たちと敵対することやメギドラルのためにならないことを理由に反対するソロモンをエウリノームは一笑に付し、自身の心境を語った。ソロモンやメギドたち、世界や蛆、あらゆるものと関わりを持つことが今の自分はたまらなく楽しいのだという。敵としての関わり方も、複雑に絡み合う世界における関係性の一つに過ぎず、ゆえに否定する必要はない。そう言って、エウリノームは飛び去っていった。

 

#112

サタンとベルゼブフが脱落しても、両陣営のメギドたちは開かれた戦端のままに激突していた。戦場に幻獣の姿は少なく、アバドンを守っていた大群も参戦していない。幻獣を操る何者かーー母なる白き妖蛆か、その陣営の者ーーが何らかの理由から幻獣を引かせていると思われる。メギド同士がぶつかり合い徒に被害を出す虚しい戦争に眉根を寄せるマモン、リヴァイアサン、ベルフェゴール、バールベリト及びフォルネウスに、“脳筋参謀”ムボーダンが作戦を提案する。各自がレジェ・クシオを目指してベルゼフフ陣営の包囲を突破し、レジェ・クシオに駐留するハルマとぶつかることでなし崩しにメギドラル両陣営の共闘に持ち込むというものだ。

そこへメルクリウスも到着し、メギド72が華々しく参戦した。サタン陣営の本隊はマモンを先頭にレジェ・クシオを目指して包囲網の突破を試み、メギド72は逆に包囲網の中心に布陣し敵の混乱を誘うことで、マモンらの背後を守り進軍を援護する。ついにメギドラルの戦場に集結したフォルマウス4冥王もソロモンらと共に布陣し、共闘の日が来たことを喜んだ。罵美優蛇は前後に広がって戦場に厚みを作り、先陣を切るマモンたちと殿を務めるソロモンらとの間の分断を防ぐように布陣した。一般的には大きくに広がる陣形は戦力の密度を下げ消耗を激しくするが、包囲網突破戦、かつ敵味方の戦力差がほぼ無い現状では、包囲する側の方が戦力の密度が低い。そのため、突破を試みるサタン陣営が多少広がっても問題はないという判断である。

メギド72はマモンらの援護を兼ねつつ、派手な戦闘を行うことでもう一つの狙いも果たそうとしていた。すなわち、戦力の均衡を崩す最大要因として振る舞うことで、戦況の膠着を誘導している何者かーー蛆、またはその息のかかったものーーを誘い出し倒そうというのである。ただし、派手な動きは見せたいもののいたずらにメギドを殺しメギド全体の力を消耗させたくはない。また、戦場で目立って多くの敵の目を引きつけるのはいいが、その結果メギド72から犠牲者を出すことも避けたい。

急に意識を失ったサタナキアに代わり、偶然近くにいた脳筋参謀ムボーダンがソロモンに献策する。幻獣を選んで倒すべしというのがその内容である。メギド同士が戦果を争う場となっているこの戦場で、ごく少数ながらも幻獣が混ざっていることは奇妙である。であればこれらの幻獣は、戦況のコントロールを試みている何者かの耳目となって情報を収集するためのものと思われる。メギドたちは強いものとの戦いを求めるから、幻獣を相手取るソロモンたちのことも、まして幻獣のことも意に介さない。よってソロモンは安全かつ効率的に、見つけ出すべき何者かだけを刺激することができるのである。

 

メギドラルのソロモン王は、メギド72参戦の報を受け、フォルネウスが取られるのではないかと焦り戦場を一人駆けていた。

一方、フォルネウスは戦場の只中でソロモンに邂逅する。両者は再会を喜びあった。そこにメギドラルのソロモン王も追いつき、二人のソロモン王は共闘を決めた。

戦場を駆けるソロモン王たちの後ろでサレオスはこっそりと、メギド72のソロモン王に人間牧場のことをどう伝えたらよいか、脳筋参謀ムボーダンに相談を持ちかける。脳筋参謀はレジェ・クシオにある人間牧場跡地を見せることを提案した。既に廃止された施設ならばショックは幾分かやわらぎ、しかしありのままのメギドの所業の痕跡を見せても崩れないだけの信頼関係が軍団メギド72にはあるだろうというのが彼女の談である。

 

バラムは、ソロモンをメギドラルの覇者にすることには懐疑的である。ヴァイガルドの者をメギドラルの王にすることは侵略的な意味合いを持つためである。ソロモンの思想もあくまでヴィータであり、メギドのそれとは性質を異にしていることも、メギドラルの支配者としては馴染まない。

 

戦場を眺める母なる白き妖蛆(実体化)は、既に戦争への興味を失っていた。元の作戦ではベルゼブフ(偽物)をサタン陣営に殺させ、メギドラルを二分するしこりを作ることで社会の動乱を続けさせる予定だったが、ベルゼブフ(偽物)の到着の遅れによりそれも滞っている。

しかしメギドたちの意識を奪う「眠り姫」なるものの動きに気付き、蛆は焦りを見せる。また、「歪み」なるものの手掛かりを得たとも呟いていた。

 

メギド72のうちセーレをはじめとする子供の姿の追放メギドなどの非戦闘員はフォカロル・フォラス・フィロタヌス・ウコバク・デカラビアの引率によりメルクリウスで戦場を離脱した。また、近くにいた子育て旅団の同乗も受け入れた。その中には、戦場の緊張故にか急に気を失う子もいるらしい。

航行を続けるうち、ふいにタムスが気を失った。デカラビアの指輪によりメルクリウスの航行は恙無く続くものの、メギドたちの間には違和感が募ってゆく。

地上の主戦場でも、急に意識を失うメギドが続出していた。どうやら、純正メギドたちが次々と倒れて行っているらしい。いつしか戦場は静まり返り、立っているのはヴィータの体を持つソロモンと追放メギドたちだけになってしまった。

そこに、ストゥムと名乗るフライナイツのメギドが接触してくる。幻獣を通じて母なる白き妖蛆と繋がっているため、意識を保てているらしい。ストゥムは「眠り姫」なるものが母なる白き妖蛆の意志に反してメギドたちの意識を奪っているのかもしれないとの推測を口にした。

その時、倒れていたメギドたちが次々と意識を取り戻す。これによりストゥムとソロモンとの休戦状態も終わりを告げ、両者は敵同士としてぶつかり合うことになった。

 

グリマルキンは「猫戦争」としてヴァイガルドの猫やメギドラルの猫幻獣を引き連れベルゼブフ(偽物)を奇襲した。奇襲は呆気なく失敗したものの、ベルゼブフ(偽物)は猫を傷つけることを禁じ、またグリマルキンを「猫の女王」として尊重する姿勢を見せた。

メギドに黒い猫の姿を取らせ戦争工作員として使うことは本物のベルゼブフとその友人であった猫先祖に対する侮辱だとグリマルキンは批判する。しかしベルゼブフ(偽物)はそれを否定し説明した。黒い猫部隊は、ベルゼブフ(偽物)が組織したわけではない。戦争で活躍しにくいメギドたちがメギドラル社会でなにか役割を果たすべく自主的にとっている行動であり、黒い猫の姿は、本物のベルゼブフと猫とのエピソードにヒントを得たものである。つまりかつて本物のベルゼブフの友人であった純正猫は、現在のメギドラル社会に影響を与えたと言うべきであり、決して物語を利用されているわけではない。また、ベルゼブフ(偽物)は猫が好きだ。

ベルゼブフ(偽物)はあくまでバビロン派としてではあるが、サタン派に降伏して戦争を終わらせる心積もりである。一旦メギドどうしの争いを収め、その上で大いなるバビロン計画を提示すれば、ハルマゲドンの厳しさを思い知ったメギドたちはこぞって賛同してくるだろうとの目算である。

グリマルキンに猫師匠(父親猫の幽霊)の声が届き、ベルゼブフ(偽物)を助けその役割を見届けよと諭す。猫を使っていたベルゼブフ(偽物)の果たそうとする役割が猫先祖の名誉を傷付けるものではないと確かめた時こそ、グリマルキンの猫戦争を終えることができる。その声に従い、グリマルキンはベルゼブフ(偽物)の後を追っていった。

 

ソロモンたちがストゥムをくだしたことで、ベルゼブフ陣営の戦意喪失は決定的になった。継戦は無意味と悟ったベルゼブフ陣営は撤退を始め、結果としてサタン陣営の勝利の形に収まる。戦意の矛先をレジェ・クシオ奪還に向かわせ陣営対立を有耶無耶にするつもりだったマモンやベルフェゴールは拍子抜けしつつも勝利を喜んだ。

 

戦後、ソロモンの元に情報が集まる。まず、イポスたちはアルマロスらレジェ・クシオ脱出組と共にあり無事であり、ウァレフォルが連絡役としてマモンらと共にいる。次に、メルクリウスはタムスの意識消失による一時制御喪失の影響で故障が発生した。よって暫くはどこかに隠し、修理する必要がある。次に、「眠り姫」についてリリスが調べた。「眠り姫」の正体はアンチャーターかもしれない。メギドを模倣しようとして失敗し眠り続けているアンチャーターがどこかに存在しているとのことである。

また、バールベリトはソロモンとの協調姿勢を明確にしつつ、「できるものならしてみろ」と挑発的に召喚を許した。

 

エウリノームは意識を失った際に白き世界へと呼び込まれ、そこで「眠り姫」に会っていた。曰く、「眠り姫」は起動した瞬間近くにいたメギドの力で眠らされ、意識を白き世界に連れ込まれた。以来、肉体はどこかで眠り続けたまま彼女は白き世界に住んでおり、また白き世界にメギドを呼ぶ力を蛆から学んだ。ベルゼブフの意識を手引きして白き世界との行き来を助けたり、蛆から彼の真の意識を匿ったりしたのも彼女である。

メギドたちの意識を奪ったのは彼女の能力である。母なる白き妖蛆が実体化により意識の主体を物質世界に移したことで、白き世界における監視が無くなった。これをチャンスと見て「眠り姫」はメギドたちを白き世界に招き、またその目的は誰かに自分の存在に気付いてもらい、助けを求めることだった。結果としてエウリノームのみが彼女の存在に気付き、こうして話をしている。

「眠り姫」の望みとは、「白き世界」から出て肉体に帰り、メギドラルで生きてみることである。そのために肉体を目覚めさせてほしいと「眠り姫」はエウリノームに依頼した。

「眠り姫」の肉体の在り処について、エウリノームには心当たりがあった。デミウルゴスの管理する人間牧場のどこかに、眠り続けているヴィータがいるらしいとの噂である。

アンチャーターが凶星になることで今や愛着あるヴァイガルドが滅ぶかもしれないこと、また「大いなる意志」に取り込まれたベルゼブフの救出を優先したいことからエウリノームは「眠り姫」の依頼について即答こそ避けた。しかし、大いなるバビロン計画を進めたいはずの母なる白き妖蛆がアンチャーターを凶星化させず隠しているのは奇妙である。何らかの理由がそこにあるのであれば、「眠り姫」の目覚めはむしろヴァイガルド防衛のための利益になる可能性も秘めている。

 

#113

レジェ・クシオ攻略作戦は続行の判断が下され、戦術として、バールベリトの砲撃が採用された。またレジェ・クシオの破壊を最小限に留めるため、ソロモンたちメギド72が斥候として潜入し、目標点の合図を送ることになった。ハルマの攻撃を受けるリスクをソロモンたちが犯す理由は、酒や物資(商品)を求めてレジェ・クシオに先行したカスピエル・メフィストインキュバス・メルコムの救出、そして(アリバイづくりとして)ハルマに撤退を促しシバの女王との関係悪化を予防することである。

身を挺して砲撃下に姿を晒しながらの撤退の交渉は成功し、ハルマの同意を獲得した。しかし同時に二つの情報がもたらされる。一つは正体不明のメギドが一名、レジェ・クシオに侵入しハルマに攻撃を行っているとのことである。そしてもう一つは、レジェ・クシオ中心部で「人間牧場」の痕跡を発見したとのことである。そこではヴィータの生活の痕跡とヴィータの身体を加工ー切断や熱による止血、縫合などーするための器具、そして干からびた状態の「なり損ない」が確認されたことから、メギド発生に関わる施設であるとの推測されるらしい。ソロモンはかつてロノウェやヒュトギンが何気なく口にした「借り腹による拒絶区画での計画的メギド発生」という話を思い出し、この施設に結びつけた。

幻獣は獣やヴィータの体を乗っ取って発生し、メギドは更にその幻獣の宿った肉体を乗っ取って発生する。よってメギドラルの誰かが特定の場所にヴィータを用意した上で、そこへ幻獣の魂を送り込むことの同意を蛆から得られれば、メギド発生場所のある程度のコントロールは可能である。そしてアルスノヴァ談話にもあった通り、マグナ・レギオは蛆寄りの体制である。そのような交渉がなされた可能性は十分に考えられる。

これに気付いたソロモンは、「借り腹」についてあまりにも何気なく話していた仲間たちにショックを受けた。そこへすかさずサレオスが、借り腹とは何かを具体的に知るメギドは少ないことを注釈したため、ソロモンは幾分か落ち着いた。サレオスも大まかなところしか知らないが、とはいえヴィータに対して陰惨な行いがされていたことは確かだという。

「借り腹」とは「人間牧場」で作られた技術だという。そして「人間牧場」はマグナ・レギオ議会の権限の外で管理されている。力によって「人間牧場」を私有したメギド、その名も“歪創主”デミウルゴスは、今やその力に加え唯一のペクス供給者として君臨しており、議会からも不可侵の令が発されている。わいそうしゅ?

サレオスがこれらのことを知ったきっかけはパイモンである。メギドラル時代のライバルであったパイモンは、「借り腹」技術確立前の「人間牧場」出身メギドであるらしい。また涙の大河にヴィータの死体が捨てられており、メギド体にその影響を受けているかもしれないサレオスに研究の依頼が来たこともあった。ただし、サレオスはこの依頼については断っている。

ハルマたちは攻撃機を放棄して撤退し、残った攻撃機は囮として、かつソロモンたちがハルマと戦っているという事実を作るため、レジェ・クシオで自動制御運転されることとなった。と、攻撃機がソロモンたちの想定から外れた動きを見せる。何かを追うようにしてレジェ・クシオ中心部方面に向かい始めたのだ。自動運転状態の攻撃機の目標は、ソロモンらのレジェ・クシオ潜入前にハルマたちが発見したというメギドだと思われる。そして攻撃機の追う先、レジェ・クシオ中心部は、件の人間牧場跡地があった場所だ。人間牧場の関係者が、ハルマの集中攻撃を受けるリスクを犯すほどに重要な目的を持って行動している可能性を察知し、ソロモンたちもそこへ向かうことにした。

謎の潜入メギドを追うものは他にもいた。ハルマのうちの一名、マサカエルである。マサカエルは脱出よりも謎の潜入メギドの目的を確認することが重要であると単独判断し、攻撃機に乗ったままレジェ・クシオ中心区画へ向かっていた。

レジェ・クシオの中心部に近付くソロモンたちの前に、ヴィータ体の姿をした大柄な何者かが姿を表す。その者はこちらがソロモン王であることを確認すると、何がおかしいのか異様な調子で大笑いし、続いて「メギドを拒絶せよ、自分の『外』にあるものを拒絶せよ、その時真の個が生まれる」とソロモン及びメギドたちに向かって強く言い放った。真の個を得た時、メギドというカトルスの叫びは形を持って完成する。メギドたちには肉体も、世界も、自我も意味も目的も必要なく、その偽りの「自分」を拒絶せねばならない。そうして生命の本質として生まれ直さない限り、メギドもソロモンも死んでいるに等しいとその者は荒々しく語った。

名を問われたその者は、自己否定を試みているにも関わらず、未だ自分という者が存在している以上、名を問われれば答えねばならないと毒づきながら、デミウルゴスの名を名乗った。

先程まで話題の中心にあったメギドの登場、その異様な様子、そして名を名乗ることが屈辱だというメギドらしからなさに戦慄するソロモンたち。しかしそこに、デミウルゴスを追跡していたマサカエルが現れる。ソロモンたちの武力排除を辞さないマサカエルに、ソロモンも応戦の態度を取らざるをえなくなった。ソロモンらに敗れたマサカエルは自爆の直前、デミウルゴスの目的は「第4界」に関係するものだとの推測を言い残した。

マサカエルの自爆後デミウルゴスに目的を問うと、ヴィータを加工する道具だとの答えが返ってきた。あっけらかんとしたその様子に、ソロモンは自分やマサカエルの勘違いを悟る。デミウルゴスの感覚は決定的にズレていて、まるでこの世界にいながらにしてこの世界を生きていないかのようだ。その結果、リスクと目的が釣り合わない。

デミウルゴスはソロモンに、借り腹を創る施設を見せようと言った。それを知った時ソロモンがいかに変容するのか、その行為と現象の創造性に興味があるのだという。引き留めようとするブネたちに、ソロモンは言う。借り腹について知った時、仲間たちが怪物に見えたのだと。仲間たちとて知らなかったことだと分かり疑心は消えたものの、それほどの衝撃をもたらす、メギドのおぞましい面を知る時近くに仲間がいることで、同じメギドである仲間たちにまで不信感や恐怖を向けるのが不安なのだ。しかしそれでも、メギドがヴィータに対して行ったことを知らないままではいられない。

 

ベルゼブフ(偽物)はエウリノームの接触を受けていた。両者とも早期の休戦を望んではいるものの、エウリノームはまずベルゼブフ(本物)を取り戻す方法を探るべきだと考え、その為の戦争状態の維持をベルゼブフ(偽物)に依頼した。ベルゼブフ(偽物)は難色を示し降伏を示唆したものの、エウリノームの強硬な反対ーー降伏後に復活するかもしれないベルゼブフ(本物)の立場を考えれば敗北の形を取るべきでないーーに遭ってこれを撤回した。しかし早期休戦によるメギド口維持と大いなるバビロン計画の加速は引き続き主張する。エウリノームは、バビロン計画については慎重な姿勢を見せた。結果として、ベルゼブフ(偽物)とエウリノームは本物のベルゼブフの救出までは戦争状態を維持することに同意し、かつ同時並行的に休戦のきっかけとなる出来事の仕込みやサタン陣営指導者との内密な休戦協議、両陣営の大多数が休戦に納得するためのパフォーマンスとしての儀礼戦争の準備について協力することとなった。かつまた、区切りとなるべき戦争として、エウリノームがソロモン及び麾下の旧大罪同盟かつ非8魔星メギドに戦争を仕掛け、これを打倒することが提案された。戦果としては華々しく、しかし休戦交渉やメギドラル政治には深く関わらない立場であることから、社会に対する影響が少ないためだ。

圧倒的な武力で一気に制圧することはかえってメギドの損失を抑えると考えたエウリノームたちは、アバドンの投入を決める。外装を塗り替えたエウリノーム専用アバドンに乗り込み、エウリノームは発進した。

 

#114

フライナイツは軍団ではない。目的集団である。かつて戦いだけを求めて誰かの戦争に首を突っ込んでは放浪していたエウリノームにベルゼブフが声をかけ、新設しようとしていたこのフライナイツの団長に誘った。断ろうとするエウリノームを引き留め、ベルゼブフはエウリノームが実のところ戦争を強く求めているわけではないこと、他にすることもないゆえ戦争に身を投じていること、彼の個は未完成で本質が空虚であること、かつまた、空虚なままでいたいがために意味ある戦争を厭うていることを言い当てた。

 

メギド72本隊はメルクリウスを隠したフォラスたちやアルマロスたちとの合流を果たし、サタン陣営と共にいた。そこではソロモンに変装したデカラビアと携帯フォトンによる偽装ソロモン作戦が試行されていた。また、バールベリトはソロモンを呼びにレシェ・クシオ内部に走り込んでいった。

 

アルマロスの命を帯びてベルゼブフ陣営の偵察に来ていたロノウェ・アロケル・プルソンはグリマルキンの姿を見つけ、その身柄をとっ捕まえてベルゼブフへの手引きを依頼した。議会の立て直しを望むアルマロスの意を受け、休戦に向けた話し合いをしたいのだ。ベルゼブフにとっても、サタン陣営指導者層からの使者は渡りに船である。

とはいえ陣営全体の繊維が高まっている今、休戦は簡単なことではない。ただしベルゼブフが偽物であることは少なくともサタン陣営には知れ渡っており、ベルゼブフ陣営に広まるのも時間の問題である。そうなってしまえばベルゼブフ(偽物)が指導的役割を果たすことは不可能になり、休戦はなお一層遠のいてしまう。なお、戦後のベルゼブフ(偽物)の処遇についてアルマロスはその個を取り戻す支援をすると言っていたが、サレオスベルゼブフ(偽物)はむしろひっそりと消えることを望んでいた。

休戦に向かうための儀礼戦争の段取りに頭を悩ませるベルゼブフ(偽物)、ロノウェ、プルソン、アロケル。その時プルソンが、ヴィータとして住んでいた頃の記憶に着想を得て、「戦争の話を逸らす」提案をする。今対立する両陣営は、いずれも具体的な新体制の構想を持っていない。それ故に戦争の落とし所が作れず、どちらかが全滅するまで戦わんばかりになっている。ゆえに、ハリボテであっても方向性のようなものを示せれば、争いは落ち着くだろう。

具体的な行動として、レジェ・クシオの前で議会を開くことを提案するようプルソンはベルゼブフ(偽物)に依頼した。そうすることでベルゼブフ陣営の攻撃の理由が、漠然とした勝利から「議会場の奪還」へとすり替わる。

攻め入ってきたベルゼブフ軍が議会場の奪還を掲げ、全てのメギドに議会への参加の機会があるべきであると訴えれば、その訴えは真っ当さ故に受け入れられざるを得ない。ましてサタン陣営の中心にいるマモンは議会を重視している。サタン陣営がベルゼブフ陣営を受け入れれば、ベルゼブフ陣営とてそれ以上戦いを続けるわけには行かない。ここで敢えて戦争を続けようとするメギドがいれば、それは社会への反逆者として両陣営から目されてしまう。

この作戦をサタン陣営に共有するためにロノウェら3人は急ぎマモンの元へ戻ることにした。また、信頼性を増すためにはベルゼブフ陣営の使者が同行するほうが良い。そこで今はベルゼブフに付き従い「猫将軍」の肩書も与えられたグリマルキンが、黒い猫数匹を連れて同行することになった。

 

デミウルゴスと共に消えたソロモンを追い、レジェ・クシオ潜入隊のブネ、バラム、シャックス、バルバトス、モラクスは「借り腹」施設跡地へ向かう。

偶然ソロモンとデミウルゴスを見かけたメフィスト・カスピエル・インキュバス・メルコムは拉致を疑い、酒を運ぶ手を止めてその後を追った。

「人間牧場」は、ビルド・バロック時代に端を発する。その頃、ヴィータ体を取ったメギド同士の繁殖行為が密かに、しかし熱狂をもって行われていた。成功に模されたヴィータ体で行う繁殖行為は、当然に子をもたらす。しかしこうして生まれた子はメギドではなくヴィータであった。ヴィータを持て余しつつ、しかしヴァイガルドに送ってやるほどの義理も持たないメギドたちは、彼らの収容施設を作った。収容施設の中では更にヴィータうしの繁殖が行われる。こうしてできた収容施設がこんにちの人間牧場の原型である。

しかし、これらのヴィータヴィータに見えてどこか決定的にヴィータではない。あくまでもヴィータという種族を模倣した存在なのである。故に彼らは、時折人の形をしていない奇妙な物体を生むことがある。ある時体の一部ができもののように膨れ上がりはじめ、そのうちにひどい痛みと出血を伴いながら分離するのだ。それは丸かったり四角かったりと、形状に法則性はなく、つるんとしていて、しかし確かに生きている。一切動かず、おそらく知性も無い。寿命は100〜200年で、寿命を迎えたそれはある日突然干からびる。これをデミウルゴスら関係者メギドたちは「ブランク」と呼んだ。「ブランク」が生まれる理由について、デミウルゴスは「不完全な模倣が世代を重ね、ついに『よくわからないもの』を生むようになる」と分析した。

「ブランク」を生むようになったヴィータは、続けざまに10体ほどそれを生み、しばらく後に死んでしまう。模倣による歪みが限界に達したのだろうか。放っておけばいずれ全てのペクスは「ブランク」を生んで死んでしまうが、彼らと「ブランク」を資源として利用するデミウルゴスは、今なおヴィータ体を取ったメギドどうしに交配させ新たなペクスを生み出している。

母なる白き妖蛆は何故かこの「ブランク」を気に入り、積極的に幻獣の魂を送り込んでくるらしい。またそれとは直接の関係はなく、デミウルゴスと母なる白き妖蛆は協力関係にあるらしい。

レジェ・クシオ(拒絶区画)は、元は「人間牧場」から始まった。100〜200年ほど前に作られた、計画的なメギドの発生のための実験施設であった「人間牧場」を中心にできた街がレジェ・クシオなのだ。メギドを脱し別の何かになるーー「メギドを拒絶する」ことから、そこは拒絶区画と呼ばれることになった。

「借り腹」とは拒絶区画の人間牧場で生み出された、肉の袋というべき姿をした生体装置であり、この中に収められた「ブランク」に生なりの幻獣を閉じ込める技術である。「ブランク」に向けて幻獣の魂が送り込まれると、発生しかけた状態で停止させ、ひたすらに待つ。その間、肉の袋には手足を切り取られたヴィータが養分タンクとして取り付けられ、使い捨てられる。

そして肉の袋の中の物体にメギドの魂が重なると発生のプロセスは再開し、メギドが生まれる。結果として、「借り腹」では100%メギドが発生する。この方法で生まれたメギドたちはヴィータに似た体を持っており、ヴィータ体への馴染みも早い。彼らは「新世代」と呼ばれる。

「新世代」メギドたちがヴィータ体でも暮らしやすく、しかしあくまでペクスたちとは一線を画して存在するために作られたのがレジェ・クシオの街である。この定期的に必ずメギドが発生する場所は、「人間牧場」関係者や「新世代」以外のメギドにとっても魅力的であった。そのためメギドラル中から多くの軍団が集まるようになり、街で過ごすようになった。同時に秩序を守るための自治ルールも確立し、裁判所などが設立された。いつしか、「拒絶区画」は「人間牧場」や「借り腹」と無関係のメギドたちが治めるようになる。

自治者メギドたちは「人間牧場」にも干渉するようになり、これを嫌った「人間牧場」関係者たちは牧場を街の外に移し、そこで作った「借り腹」の袋をレジェ・クシオに運び込む形を取るようになる。

じきに子育て旅団もレジェ・クシオを拠点にするようになり、発生したてのメギドをスカウトする場所としてのレジェ・クシオの意義はこれら子育て旅団も担うようになる。その結果、「借り腹」の意義は薄まってゆく。

そしてとうとう、メギド社会の中枢である議会が恒常的に置かれるようになった。

デミウルゴスは言う、生命とは「初めから終わりまで」であると。それは「個」ではなく「種」として捉えられ、どれほど長くそれが続いたかに意味がある。故にデミウルゴスは個を軽視し、それを拒絶し解脱せねばならないと説いた。

デミウルゴスは、ソロモンを人間牧場での交配実験に投入すると言った。生命を軽んじていると激昂するソロモンに、デミウルゴスは言葉を重ねる。本来棄てられるはずであった生命について既存の価値観を拒絶し有益なものとして利用し始めた点で、自分は生命を尊重している。またメギドであれソロモンであれ、自分の行動範囲より狭い範囲で生かされたままの者たちは死んでいるも同然だと重ねた。既成観念や規範を拒絶し今の自分の世界を飛び出していこうとするべきなのだ。

デミウルゴスに強硬に迫られ、身の危険を感じるソロモン。そこにインキュバス、カスピエル、メフィスト、メルコムが現れる。メルコムを護衛につけてソロモンを逃がすと、残ったインキュバス、カスピエル、メフィストは時間稼ぎのためデミウルゴスと対峙した。更にこちらを三名だけと思わせたところで、ブネ・バラム・モラクス・シャックス・バルバトス・サレオスも救援に入る。しかしながらデミウルゴスには全て読まれており、不意打ちの攻撃も全く効いてはいなかった。ソロモンの指輪にも興味を示したデミウルゴスは、ますますソロモンへの執着を深める。

メルコムとソロモンは逃亡途上で彼を探しに来ていたバールベリトに遭遇する。バールベリトからベルゼブフ軍襲来の報を聞いたソロモンは頭を抱えつつ、デミウルゴスと敵対することになったことを共有し、自分がベルゼブフ応戦のに参加する代わりにバールベリトにはレジェ・クシオ中心部に残ったブネたちの応援に向かうことを依頼した。

ブネたちはデミウルゴスに対して全く歯が立たなかった。デミウルゴスはこともなげに「創造を止めることはできず、自分のメギドとしての強さなどその創造の大きな動きの前では些細なことだ」と言い放った。しかしブネの「これまでの全てを拒絶するかのような攻撃」については「気に入った」と評し、ブネは殺さず温存する意向を示した。と、全滅直前のブネたちの元にバールベリトが到着する。

バールベリトは人間牧場と借り腹がこれからは必要とされないこと、そうなるくらいにメギド社会は変わりつつあり、その変化は止められないこと、ソロモンもまたその変わりつつあるメギド社会で好意的に受け入れられており、デミウルゴスといえども手を出すべきではないことを説いた。デミウルゴスは「変化は止められない」との言葉に反応を示し、また在り方を変えたバールベリトをして「これまでの彼自身を拒絶し、生まれ直して輝いている」と称賛した。そして、今バールベリトとの戦闘を開始すれば今度こそブネたちも死ぬまで戦い、そして自分以外は死ぬだろうと所見を述べた。バールベリトやブネを気に入ったデミウルゴスはその敵対を避け、いつか真の意味で世界を拒絶した彼らが自分と志を同じくする日を待つことにすると述べその場を去っていった。

 

からがら逃げ延びたソロモンは人間牧場への憤りを抑えつつ、マモンにレジェ・クシオ中央部で得た情報を共有し、これから樹立せんとする新体制からデミウルゴスとメギドラルの暗部を排除すべきだと主張した。マモンもそれに一旦同調を示し、ソロモンの報告に耳を傾ける。概ねの報告を済ますと、ソロモンはエウリノームの乗るアバドンに応戦するため戦場へと駆け出した。途上、ソロモンは連絡役のイヌーンにデミウルゴスから得た情報ーー種としての寿命を迎えた人間牧場のペクスが生む「ブランク」について、これを利用した「借り腹」という生体装置について、この運用がどこかの人間牧場で再開されようとしていること、人間牧場を率いるデミウルゴスが蛆と協力体制にあること、デミウルゴスヴィータ・メギド問わず生命を軽視する危険メギドであることーーを共有し、この情報が新体制樹立を待たずにメギドたちの間で周知され「人間牧場」が忌まわしいものと広く認識されること、それによりペクスたちを救う下地ができることを願った。

マモンも同じく出陣しようとしたが、そこへベルゼブフ陣営から返ってきたロノウェら3名とグリマルキンが到着した。

グリマルキンはマモンに対し、ベルゼブフ陣営の内情を大変分かりやすく整理して伝達する。陣営の指揮系統は現在二分されている。両者とも目指すところは本物のベルゼブフの立場を落とさないままの休戦であるが、その方法を異にしている。一方のエウリノーム派閥はサタン陣営との戦いで戦果を上げることで、休戦協定におけるバランスを有利にしようとしている。もう一方のベルゼブフ(偽物)は、先のハルマ侵攻によりハルマゲドン計画は実質潰えたと考えている。そのため現在の戦況はさておき、思想的な派閥上はバビロン派が優勢に立っていると考えている。よってバビロン計画に一名でも多くのメギドを参加させるため、すぐにでも戦争を終わらせてメギドの犠牲をとにかく抑えたい。そのため、今こうして儀礼戦争を提案している。儀礼戦争の行きつく先の落とし所は8魔星体制の継続である。これを聞いて全面的な同意を示したマモンは、各方面への通達を開始した。

規格外ゆえ何故か自力でフォトンを取り込めるようになっているアスモデウスアバドンに乗ったエウリノームに対して善戦していた。とはいえ、追放メギドの身で8魔星に渡り合うのは荷が重い。と、とうとうソロモンが戦場に到着する。ソロモンはバールベリトを召喚し、エウリノームの相手を任せる。

フライナイツはやめ戦後はヴァイガルドとメギドラルとを行き来しながら好きに暮らす、そのためにあくまでソロモンは殺すのだと言い、またバールベリトに同行を求めるエウリノームに、バールベリトはその自分本位な態度や価値観を改めるべきだと批判した。これにエウリノームは、バールベリトを頼っているのだと、数百年ずっと共に生き延び戦ってきたバールベリトとベルゼブフの存在こそ社会が変わっても変わらないものなのだと反駁した。バールベリトはそれ以上返す言葉を持たず、二人がフライナイツの団長と副団長とになった時のことを反芻した。あの時もエウリノームはバールベリトを頼ると言い、変化を厭うて軍団に入ることも立ち上げることもフライナイツの団長になることもしなかったバールベリトの世界に変化をもたらした。その前後で、しかしエウリノームとバールベリトの関係は不変であったのだ。

やけになって、バールベリトは叫ぶ。不変のものがあるか否かは都度確かめるしかない、だからこそ一度自分に敗北し、ベルゼブフもフライナイツも関係ない地平で考え直せと。エウリノームはそれをバールベリト自身の戦争の宣戦であると受け止めた。積み上げて来た全てを壊し、ベルゼブフに「空っぽだ」と言われた時に戻り、それでも2名の関係はあり続けるのか確かめるのだ。

ぶつかり合う二名、そしてメギド72にグリマルキンは絶叫した。

 

アバドンを操るエウリノームをくだしたメギド72。しかし、崩れ行くアバドンからエウリノームの姿は現れない。グリマルキンアバドンにしがみつき、皆がエウリノームを待っていること、本物のベルゼブフに縁のある自分も彼の復活のためエウリノームを必要としていることを声を枯らさんばかりに伝える。ソロモンの側にはバールベリトと黒い猫が駆けつけ、グリマルキンのしがみついている辺りにコックピットがあること、召喚の力でエウリノームを助け出してほしいことを頼んだ。皆の望みはソロモンの召喚にかかっている。ソロモンは指輪に渾身の力をこめ、エウリノームの名を呼んだ。

 

敵も味方も皆固唾を呑んでソロモンとアバドンを見守る。そこに、エウリノームがいた。彼は静かに、まるでゼロに戻った気分だと呟いた。静まり返った戦場の中心でゼロ地点に戻ったエウリノームはどこかにいるベルゼブフに向かって語りかける。フライナイツに誘われた時、ベルゼブフは「やってみなければわからない」と語った。そして今、エウリノームが「やってみてどうだったのか」同じ目線で語り合える相手はベルゼブフただ一人であると。かつてとは逆に、今度はエウリノームがベルゼブフを、ソロモン王の軍団に誘うのであろう。

 

事情を呑み込んだエウリノーム、そしてベルゼブフは、サタン陣営に向かって朗々と口上を述べ、マモンの名を呼んで議会場の解放と議会の開催を訴えた。儀礼戦争の筋書きである。首謀者たちの目論見通り、メギドたちの議論の争点はレジェ・クシオと議会場の解放に移っていった。そしてマモンはベルゼブフの要求を受け入れ、同時に見事休戦が成立した。メギドたちは次々に、一度は追われたメギドの街レジェ・クシオへと再び入城して行った。

ブネたち潜入組も無事本隊へと帰投し、カスピエルら火事場泥棒組もちゃっかり酒を確保する。そして大挙するメギドたちは我先に議会場へとなだれ込んでゆく。

議会場は確かに破壊されていた。しかし、消沈しかけるメギドの群衆にアスモデウスが一喝する。遥か昔は単なる広場が議会場だった。議会とは場所ではない、メギドが集まれば議会は開ける。この世に不変なものがあるとすれば、メギドが集まり議会を開くということこそそうなのだ。

 

アバドン爆発のどさくさで気を失っていたグリマルキンは、ソロモンの見守る中で目を覚まし、功績ばの称賛を受ける。

彼女が安否を気にするエウリノームは、少し離れた場所でバールベリトと今後について話し合っていた。エウリノームはベルゼブフを助けるために動き、バールベリトも協力は惜しまない。ソロモンは母なる白き妖蛆とも、人間牧場とも敵対するつもりでいる。ベルゼブフ救出の手掛かりとなる「眠り姫」はまさにその母なる白き妖蛆の白き世界に精神をとらわれながら、体は人間牧場のどこかにある。フライナイツを抜けて好きにやるなどとんでもない、自分たちは後に引けない大きな戦争に巻き込まれているのだ。

 

#115

メギド72はレジェ・クシオ某所に拠点を借り生活していた。メギドラル社会は大きな戦争の集結に浮き立ち、議会場では議論が日夜繰り広げられ、皆暗黙の休戦季を楽しんでいた。とはいえ「大いなる意思」を介さない会議は踊るばかりで、混乱の収束は遠そうだ。

黒い犬はソロモンの意向に従ってペクスや人間牧場の情報をメギドラルに広く知らしめているが、忌避感情を呼び起こすのはやはり難しい。

アマイモンは、8魔星体制が維持されるメギドラル中央社会への迎合を拒み、議会参加を見送ってまつろわぬ者へと戻った。

 

ソロモンは軍団の者たちにペクスや人間牧場についての情報を求め、その実態に嫌悪感を募らせていた。ブネはいつデミウルゴスの攻撃を受けるともしれない状況でソロモンが仲間に恐怖を抱き始めたことを懸念し、眼の前の戦いに目を向けさせる方法についてサタナキアに献策を求めた。サタナキアは、ソロモンは誰かのためならより積極的に動くことを指摘した。

ソロモンはコシチェイのことを思い出し、彼という反逆者を自分が殺してしまったことを悔やんでいた。そんな自分が今更ペクスを救おうとする資格はあるのだろうかと彼は思い悩む。ペクスたちはメギドラル社会への復讐を求めるだろう。だが、彼らとともにメギドを敵視し恐怖するべきとも一概には思えない。ソロモンは相容れない二つの種族の間で自身の立場を見失っていた。

ふさぎ込むソロモンに、バラムやグリマルキンは気遣いを見せる。異なる種族が交われば、そこに歪みや非道が生まれることもある。それでも概ね、猫であるグリマルキンヴィータが嫌いではないと言うし、ソロモンも交流を持つことを避けるべきではないと彼女は諭した。

また不死者会議の者たちも、かつて自らがヴィータ社会で受けた迫害を引き合いに出しつつ、人間牧場という暴力についてはソロモンと同じ気持ちだと寄り添う姿勢を示した。

散歩に出たソロモンはマモンがレジェ・クシオ防衛の人員を求めていることを知り、メギド72として志願し出撃することにした。具体的な任務は周囲の幻獣の討伐と不審な者への警戒、そして幻獣が組織的な動きをしていないかの調査である。

任務の合間、「人間牧場」や「借り腹」出身のメギドたちは自らの記憶や知識を代わる代わるソロモンに聞かせる。その十人十色の(しかし総じて具体的な知識には乏しい)心情や、あくまで「人間牧場」の打倒に協力的な姿勢に、ソロモンは少しずつ仲間への信頼と安心を取り戻してゆく。

その中で、グレモリーは社会的コンセンサスを確保しないまま打倒「人間牧場」に向けた行動を起こすことの危険性を忠告した。それはメギドラルに対する内政干渉、敵対行為になりかねないからだ。まずは実情を調査し、議会に報告するべきだとグレモリーは説いた。そこで「人間牧場」の不当さについて共感を得られなければ、その時初めてヴァイガルド勢力として内政干渉覚悟で、場合によってはシバとも共同でペクスの解放を求めていくことになる。

またペクスのヴァイガルド移住が決まったとしても、その後同化主義を取るか分離主義を取るかーー同じヴィータとして溶け込むのか、ヴィータとペクスを別々の種とした上でヴァイガルドにおけるペクスの地位を確保するのかーーも考える必要がある。

更に、彼ら自身の自立支援を行い、生きていく力を取り戻させる必要もある。

グレモリーは具体的なマイルストーンとして、デミウルゴスを排した後ソロモンがその地位に取って代わることを提案した。「人間牧場」の枠組みは残したままその管理者として議会の承認を受けつつ、ペクスの支援施設として流用・再建するのである。そこで十分にペクスたちに生きる力がついたら、改めてヴァイガルド移住を提案する。

レジェ・クシオ周辺の幻獣は限られた種類に限定されていることから、メギド72はそれが組織された軍団であると結論づけた。

一行はついに軍団の中心的な幻獣を発見する。メギドたちが奇襲に向けて身構える中で、ソロモンは周囲を驚かせる行動に出る。単身幻獣の前に姿を現し、話しかけたのだ。挑戦的な賭けであったが、ソロモンの目論見は成功する。幻獣を通して「母なる白き妖蛆」が答えたのだ。

短い問答の中で、ソロモンは「母なる白き妖蛆」から、メギドの暗部を見たのかと言い当てられる。メギドを許せないのなら今からでも自分の陣営に来るかと誘う蛆をソロモンはきっぱりと拒絶し、自分の中に確かにあるメギドを許せない気持ちはこの世界を許せない気持ちと同じだから、自分は世界を変えるのだと答えた。蛆はソロモンのその態度を「独創的だ」と評した。

 

存外に理知的、かつメギドラル社会の運営に協力的なベルゼブフ(偽物)を、なかなかどうしてマモンは気に入っていた。

アスモデウスは8魔星会議(とはいえベルゼブフ(偽物)とルシファー、マモンしか出席していない)に乗り込むと、もう一つの「大いなる意思」の存在やウイスルスキャナとしての議事フォトンを自分たちが保有していることを伝え、巧みに「意思」捜索及び奪還の任を得た。「意思」奪還後ベルゼブフ(本物)が帰還する可能性については、マモンは愚痴っぽく不満を述べた。

マモンの不満はもっともで、今やベルゼブフ(本物)はレジェ・クシオのバリアを壊してハルマ襲来の直接のきっかけを作り、更に議会の者の殺害と「大いなる意思」の破壊とを行ったメギドラル社会の反逆者である。ベルゼブフ(偽物)を再び8魔星としてメギドラルの中枢に受け入れるに当たり、偽物こそを本物のベルゼブフとし、これらの凶行をなしたのが偽物であるとの触れを出している。よってもう一人のベルゼブフーー本物のベルゼブフーーが今更現れるのは大変都合が悪いのだ。

 

レジェ・クシオ某所にて、エウリノーム・バールベリト・ガギゾン、フォルネウス・メギドラルのソロモン王・サルガタナスは会合を開いていた。議題はベルゼブフとサタンを助け出す方法である。

まずは、二人の魂を取り込んだ「大いなる意思」を守ってどこかへと消えた人工メギドーーサルガタナスはこれをクリプトビオシスと名付けたーーを見つけ、撃破の上「大いなる意思」を取り戻さねばならない。

次に「意思」から二人の魂を分離し取り出さねばならない。二人のソロモンの召喚の力により引き寄せて実体を構築することは期待できるものの、混ざりあった意識の分離の方法が課題である。魂の自己認識が召喚には必要である。

この解決策として、方法以前の構想の段階ではあるが、ガギゾンは「対話が鍵だ」と提案した。対話することで思考のきっかけを作り、思考するIを認識させることで再帰的自我Meを観測させる。観測された魂は自己と自己以外を峻別せざるを得ず、その時が召喚のチャンスとなる。

そこに、エウリノームが対話の方法があることを宣言した。「眠り姫」である。彼女の、特定の意識を取り出して「白き世界」に連れて行く能力ならば、そこでの対話が可能になる。

なお、エウリノームは「大いなる意思」も政治の道具として使えると算段した。エウリノームとバールベリト、ベルゼブフ、サタン以外の8魔星に穏便かつ内密なベルゼブフの入れ替わりを認めさせるための交換条件にできるというのだ。

 

暗黙の休戦季の影では不審な暗殺も行われているらしい。裁判官のフリアエとその補佐の任を負っているアラストールは、メギドの死体を発見し眉根を寄せていた。

アロケルは、レジェ・クシオ内でメギドどうしのいざこざに出くわしていた。どうやらフライナイツのメギドがとあるメギドの暗殺を試みたところらしいが、奇しくも襲われていたメギドというのは、かつてアロケルにロノウェの暗殺を依頼した一派の者であった。襲撃者はどうやら、ロノウェの暗殺を防ぎたい立場にあるらしい。好都合だとばかりに、アロケルにも攻撃を仕掛けてくる。わけもわからず応戦していたところに、彼の単独行動を訝しんで後をつけていたロノウェとプルソン、アムドゥスキアスが駆けつける。次いでフリアエとアラストールも介入したことで、その場は一旦収まった。また、襲撃者はアラストールの懲罰局時代の同僚でファナティッカという名であった。

ファナティッカは逃してしまった。襲われていたメギドを連れた一同はひとまずフリアエと共に裁判所に赴き、そこで事情を話すことになった。ロノウェ・プルソン・アロケル・アムドゥスキアス・フリアエ・アラストールは襲われていたメギドから衝撃的なことを知らされる。ロノウェは「母なる白き妖蛆」の駒となる存在だったというのだ。

曰く、ロノウェは「母なる白き妖蛆」が特別な任務を与えた、すなわちメギドがエルダー化することを防ぐためメギドを殺し喰う本能を植え付けて送り出した幻獣の魂を元に発生した。だがそのメギド喰らい幻獣の魂は、奇しくも「借り腹」内のブランクに宿ってしまった。その結果発生したのがロノウェ、メギド狩りの本能を持ったメギドである。

ロノウェは発生するなり「借り腹」施設にいたメギドを片っ端から食い殺して脱走し、危険メギドとして手配・捕縛されることとなった。

デミウルゴスは、捕縛したロノウェの処刑を好ましく思わなかった。ロノウェが表立って処刑されれば、それはメギド社会を監視する「母なる白き妖蛆」の知るところとなる。メギド狩りの本能を持ったメギドの処刑という事実は「母なる白き妖蛆」が昔メギド狩りの任務を与え送り出した幻獣がメギドになったことを示し、そのまま「母なる白き妖蛆」に「借り腹」のことを知られるおそれがある。そうなってしまえば「母なる白き妖蛆」は立腹し、デミウルゴスとの協力関係を解消するだろう。これを恐れたデミウルゴスはロノウェの処刑に介入することにした。

とはいえ暗殺をすれば大罪人が急に姿を消すことになり、ロノウェに恨みを持つ関係者の興味を引いてしまう。ロノウェの背後関係が探られれば彼が「借り腹」出身のメギドであることも知られるかもしれない。「借り腹」がメギド喰らいを生んだという事実を偶然として片付けるにはタイミングが良くなかった。というのも、当時既にレジェ・クシオからの「借り腹」の撤退が決定されていたのだ。もともと縮小していた施設をロノウェが決定的に破壊したため、結果としてロノウェは最後の「借り腹」出身メギドとなった。この状況は、レジェ・クシオから追い出される形となった「借り腹」及び「人間牧場」の関係者がメギドラル社会に恨みを抱き、報復のため意図的にメギド喰らいを作り出したと捉えられかねない。

よってデミウルゴスは、付き合いのあった懲罰局やフライナイツを通してロノウェを追放刑とさせた。

 

インキュバスは「黒い犬」になる前、「ヒュプノス」と呼ばれる「人間牧場」関係者の候補者だった。「ヒュプノス」になることを拒み逃げ出した「人間牧場」と今再び関わることにインキュバスは悩み、サキュバスら誘拐作戦組メギドに相談を持ちかけた。

ヒュプノス」とは、元は古代に存在した強大なメギドである。それは夢見の者に似ているがより原質的な、つまり「母なる白き妖蛆」に近い能力を持っており、かつ夢見の組織に属することなくその力を振るって戦争を繰り返していた。

ヒュプノスはその強大すぎる力を虞れた夢見の者たちの手で暗殺され、死体は研究のため「人間牧場」のどこかに隠された。保存処理を施されたヒュプノスの死体は長らく忘れ去られてきたが、ある時デミウルゴスにより発見される。デミウルゴスは半ば興味本位でヒュプノスの力の再現を試み、実際にヒュプノスのコピーを作り出すことに成功した。ヒュプノスのコピーは眠ったままの状態で、いずれ必要になるときのためある場所に隠され、その施設は「忘却の褥」と呼ばれることとなった。そしてこのヒュプノスのコピーこそ、サタンとベルゼブフの救出の鍵となるであろう「眠り姫」である。

今では、「忘却の褥」の管理者にして支配者の役職名が「ヒュプノス」とされている。

インキュバスは発生してすぐ、「忘却の褥」とへ運ばれた。精神干渉の能力を持っていることから「ヒュプノス」の適正ありとされたのだ。そこでインキュバスは、嫌気が差して逃げ出すまでの間、候補者として厳しい訓練を受けさせられた。

死にかけたこともある「忘却の褥」に戻ることについて、インキュバスはあまり気乗りしないという。

 

幻獣を蹴散らし戻ったメギド72に、マモンは「大いなる意思」の奪還の仕事を依頼した。ベルゼブフとサタンをこっそり殺さないかと軽い調子で提案するマモンに、しかしソロモンは否やを示す。確かに反逆者であるベルゼブフの処遇は難しい問題だし、二名ともヴァイガルド侵略の旗頭に違いないが、むしろだからこそ二名に侵略の方向性を翻させリーダーとしてそれを示してもらったほうが、長期的にはヴァイガルドの平穏に繋がるというのがその理由だ。そして無論、軍団内でベルゼブフに思い入れを持つ者たちの意向を王として尊重したいという理由もある。

そこへ、ブネ、ロノウェ、インキュバス、エウリノーム、メギドラルのソロモン王たちがリリスを囲んでやってきた。リリスにそれぞれの問題を相談しているうちに、それぞれの事情が相互に関連していることが分かり、次の行動が固まってきたのだという。それは大いなる意思の奪還であり、ソロモン自身の意志やマモンに代表される8魔星会議の意志とも合致するところである。

まずはインキュバスの情報を頼りに「人間牧場」のどこかにある「忘却の褥」に赴き、「眠り姫」の肉体を確保して目覚めさせる。これはエウリノームが「眠り姫」と取り付けた約束の中の交換条件となっているので、恐らくはそのまま「眠り姫」の協力を得られるだろう。

「大いなる意思」を持ち去った人工メギドを見つけ「意思」を奪還したら、その中にいるベルゼブフの意識を「眠り姫」の力で「白き世界」に呼び込み、対話をすることで「思考する自我」を観測させ、渾然一体となったベルゼブフ・サタン二名の魂を峻別する。

二者の魂の分離に成功したら、ソロモンとメギドラルのソロモン王の同時召喚で大いなる意思からベルゼブフとサタンを目覚めさせる。

 

レオナールがベルばらみたいに整った固グラを得た!!!

プロセルピナも固グラついた!!!

レオナールとプロセルピナは、リバイバイルを人間牧場の研究メギドに見せることにした。

その様子を見かけた「母なる白き妖蛆」(実体)は、リバイバイルのことを「歪み」と呼んだ。

 

#116

サルガタナスの手配により、クリプトビオシスの居場所はバンキン族の者たちが突き止めていた。「魔の山」の洞窟にそれは潜んでいるという。

ソロモンは小隊を作ってそこへ向かう。

魔の山」に到着すると、小隊は更に細かく分かれて標的を包囲することにした。マルコシアス、フォカロル、アンドレアルフスはその内の一隊である。ブネ・サルガタナス・イヌーンはソロモン隊だ。

待機中の面々は、エウリノーム・バールベリト・ガギゾン・フォルネウス・リリスリリムを中心に「眠り姫」との接触を試みていた。夢の中で「眠り姫」に会ったエウリノームは、「大いなる意思」の中で安定を手にしたベルゼブフを無理に引っ張り出すことに対しての迷いを見せる。しかしエウリノームは、本来のベルゼブフの個とは理想を追い抗い続けることなのだと「眠り姫」を説得し、無事その協力を確認する。

「眠り姫」が勝手にメギド72に接触することは「母なる白き妖蛆」への裏切りと取られ、「眠り姫」の不利益または抹消に繋がりかねない。また、「大いなる意思」の中でベルゼブフとサタンの意識の混合は刻一刻と進んでおり、手を拱いていれば手遅れになりかねない。そのためやはり、クリプトビオシスを撃破したタイミングですぐにベルゼブフ及びサタンの召喚を試みるべきとの結論となった。エウリノームとバールベリト、メギドラルのソロモン王はその旨をソロモンに伝えに走る。

 

同じ頃「大いなる意思」の中で、サタンとベルゼブフの意識の混ざりあった存在は自身のいる「楽園」に疑問を持ち、歩き、考え、まるで現実のクリプトビオシスの行動と連動するかのように暗い洞窟の中へと分け入り進んでいた。そこでメギドラルの戦争の記憶に出会い、「楽園」と思っていた場所が「大いなる意思」の中であることを悟った。

記憶と暗闇の果てに、それは明るい場所に出る。「白き世界」である。そこでは「眠り姫」とガギゾンが彼を待っていた。名を呼ばれ、対話をし、次第に意識はベルゼブフの形を成してゆく。ガギゾンはそこへ更に、自分が何者か考え、己の意識を観測するよう促した。意識はついにベルゼブフの姿を成し、「蛆」に奪われた時をやり直すため、メギドラルへと帰る意思を見せた。

そしてまた分離したもう片割れーーサタンも、統一議会場の記憶を眺めながら、自分たちの戦争の積み重ねが手に余るほど大きな敵に影響を与えられたのか、自分はそんな戦争に参加できていたのか、即ち歴史たるだけの意味を持つ戦果を挙げられたのかと呟き、それを確かめるためメギドラルへと帰る意思を見せた。

夕日を眺める二人のもとに召喚の気配が訪れる。楽園から去ることに幾ばくかの寂寥を感じながらも、二名はそれを穏やかに喜んだ。そしてまた、二名の意識が完全に調和した「楽園」の記憶がこの「大いなる意思」の中に残り、未来の統一議会でそんな特別な共感性の在り方を他のメギドたちに示し得るということは、彼らに充実を感じさせた。彼らは別れ、そしてまた出会い、互いを観測するのである。

 

人間牧場にある研究施設を目指してメギドラルを歩いていたレオナールとプロセルピナ、リバイバイルは母なる白き妖蛆の接触を受ける。蛆はリバイバイルを引き渡すよう要求した。

リバイバイルは起動に失敗し、死ぬに死ねず何度も蘇り続けているアンチャーターだった。起動の最中、その疑似生命体の肉体にメギドの魂が宿ったのだ。メギドでもアンチャーターでもない彼女を蛆は「歪み」と呼ぶ。メギドではないから彼の世界に帰れず、弾き返されて戻ってくれば生命に非ざるものゆえ同じ存在として発生する。

蛆はリバイバイルからアンチャーターとしての力を分離し、それを己の身に宿すという。蛆自ら最後のアンチャーターとなり、実体化した肉体を滅ぼすことで凶星を空に上げる。無論、超意識である蛆にとって肉体ひとつの滅びは枝葉のひとつを落とす程度のことでしかない。

楯突くレオナールとプロセルピナをあっさりと蹴散らした母なる白き妖蛆は、宣言通りリバイバイルからアンチャーターの力を奪い取った。

 

#117#118#119#120

自分用メギドあらすじ10章

・ネタバレ

・独自の要約であるため正確さの保証なし

#97

八魔星のうちの二名、マモンとバールベリトはレシェ・クシオで議会の準備を進めていた。そこにサタンの遣いとしてフォルネウスが現れ、サタンの議会欠席を告げる。議会よりも優先すべき何かの示唆とベルゼブフが活動再開したとの情報から、新たな戦いの気配をマモンは感じ取る。

 

ベルゼブフの活動再開は、実は「妄戦ちゃん」というメギドの手によるものだった。

「妄戦ちゃん」とはガギゾンに改造されたメギドでる。ガギゾンは意思喪失状態のベルゼブフの治療のため夢見の者を創り出そうと妄戦ちゃんを改造したが、能力がうまく開花せず夢見の者にはなれなかった。ガギゾンは苛立たしげに彼女を手元から追い出したが、妄戦ちゃんはガギゾンに恩義を感じていた。

夢見の者にはなれなかったものの、もしかしたらベルゼブフの治療ができるかもしれない。そう思いついた妄戦ちゃんは、ふとベルゼブフに対して妄戦を試す。妄想の中で、ベルゼブフの記憶の中で存在感を放っていた憎い相手・アスモデウスを殺させたところ、誰もが思いもよらなかったことにベルゼブフは活動を再開した。しかしその状態は言葉も通じず、お世辞にも知性があるとは言えない状態だった。

飛び出したベルゼブフは妄想と現実の区別もつかないまま、ふと耳に入ったアスモデウス生存の情報を衝動の源として周囲のもとを飛び出し、アスモデウス複製体との戦闘(8章)直後のアスモデウスを殺害したのである。

皮肉なのは、ガギゾンもまたルシファーを使ってベルゼブフの覚醒を試みんとしていたことだ。しかし彼に先んじて妄戦ちゃんの手によりベルゼブフが目覚めたためにガギゾンは用無しとなり、フライナイツの指示を無視して単独行動をし、裏切り者となる結果を招いた。ガギゾンのためにしたベルゼブフの治療が仇をなしたことを妄戦ちゃんは気に病んでいた。その後ベルゼブフはガギゾンと遭遇しその保護を受けていたが、メギドラルに実体化した蛆の接触と誘いにより表面上の知性を取り戻して単身行動を開始する。取り残されたガギゾンはとある理由により意思を喪失した。ぼんやりと立ち尽くしていたところを通りすがりのメギドが善意から拾い、レジェ・クシオに連れて行ったところで、裁判所により拘束された。

妄戦ちゃんはレジェ・クシオでベルゼブフに出会い、治療についての感謝を伝えられる。礼をしたいと申し出られた妄戦ちゃんはガギゾンの助命を請い、その結果ベルゼブフはガギゾンをメギド72に移籍させることを決めたのであった。

 

議会参加のためレジェ・クシオに向かうメギド72の前に、意識喪失の四名を治療すると申し出る妄戦ちゃんが現れる。

妄戦ちゃんは議会から派遣された偽りを述べたが、その実、ガギゾンをメギド72に移籍させるためには軍団を無事レジェ・クシオ入りさせる必要があったことから、彼女自身の意思で接触してきていた。

妄戦ちゃんの能力を用いて患者とソロモンたち数名の意識を妄想の世界に接続し、そこで記憶の中のドラギナッツォやアンチャーター・ロクスを倒す追体験をすることで治療を行うことになった。

苦戦しつつも治療は無事成功し、四名は復活を果たす。レジェ・クシオに到着すると予定通りダゴンやオリエンス、加えてアルマロスにキーの提供を受け、いよいよ軍団メギド72はレジェ・クシオに踏み込んだ。

レジェ・クシオに入ったところで、ブネはウェパルやモラクスと共に議会前の諸手続きに出た。ブネやウェパルが目を離した隙に、ソロモンはバールベリトに声をかけられる。気さくな性格のバールベリトはレジェ・クシオを案内すると言い、ブネやウェパルの制止を振り切って半ば強引にソロモンを連れ出してしまった。バルバトスとパイモン、それに妄戦ちゃんはそれに付き添って行った。

 

マモンへの遣いを終えたフォルネウスはソロモンに会おうとレジェ・クシオをうろついていたが、メギド攫いに目をつけられてしまう。

 

ヴァイガルド側でも不穏な気配が発生していた。オリアスが姿を消したりフェニックスが召喚できなかったりと、消息を絶つメギドが発生しているのだ。

 

#98

レジェ・クシオに到着したルシファーは、八魔星の集まりに顔を出すと言って軍団を離れる。また、アスモデウスはメギドラル側が保有していると思われるアンチャーター(リヴァイアサン・ベルフェゴールが同盟脱退時に返還した分)の所在を気にしていた。

 

バールベリトはソロモンにメギドにとっての街の感覚を説明する。メギドにとって街とは「帰って寛ぐ場所」ではなく「用があって行く場所」、都市なのである。寛ぐ場所があるとしたらそれは個々のメギドが密かに持つ場所であるし、更に言えば居心地の良い環境を選ぶことこそすれど、特定の場所に固執することは稀である。

更に、バールベリトは「休戦季でもできる戦争がある」と言って、ソロモンをペリビット遊びに誘った。体よく負けて厄介者で粛清対象のガギゾンをメギド72に移籍させるのが目的であった。ソロモンとしてもむざむざとガギゾンを処刑させるのは後味も悪く、ゲームの勝敗のみにてノーリスクで彼を手元に引き取れるのであれば話に乗らない手はなかった。ルシファーを進行役に迎え、またベルゼブフの乱入を受け、更にアスモデウスの見物又は監視を受けながら、それでもソロモンは辛勝を手にする。とはいえ実際には、妄戦ちゃんの嘆願を受けたベルゼブフがガギゾンをメギド72に譲り渡すため、敢えて勝ちを譲ったものであり、その場にベルゼブフを連れてきたのも妄戦ちゃんであった。

 

一方その頃、リヴァイアサンダゴン、オリエンスとその配下メギドたち、そしてアムドゥスキアスは、ダゴン邸の浴場で楽しく寛いでいた。

 

#99

アンチャーターはもともと七つあり、大罪同盟の七名がそれぞれ一つずつ所持していた。内二つ、リヴァイアサンとベルフェゴールの所有分は、二名が大罪同盟を去る際に譲渡されアスモデウス預かりとなったのち、アスモデウス追放の際にベルゼブフの手に渡った。しかしベルゼブフが意思を失ったことにより、当該二アンチャーターは紛失した。アスモデウスの割当分は遥か昔、アスモデウスの手に渡ることすらなく既に起動されてファーストアンチャーターと呼ばれ、またベルゼブフ、サタン及びマモン所有分の合計3つーー合意の上バビロン計画実行の為に供出された分ーーはメギドラルによるヴァイガルド侵攻時(6章)に起動され、一つはメギド72により、一つはメギドラルの侵攻部隊により破壊されて凶星となった。一つは起動後メギド72に確保され、プルクラと呼ばれて王都に保護されている。また元々のルシファー所有分も起動され、偽のルシファーとして懲罰局局長を努めたのち、メギド72に追い詰められてヴァイガルドに逃亡し、その先でエウリノームに破壊されて凶星となった。(9章)

すなわち現在、アンチャーターの内二つは起動の上ヴァイガルドで生存中、三つは起動後破壊され凶星となり、二つは所在不明である。

ルシファーやベリアルと話し合いながら、アスモデウスは推測する。蛆派元々アンチャーター狙いであり、アンチャーターの多次元接続能力を応用して自らの世界を実体化しようとしていたのではないか。

 

ガギゾンは意思を失った状態でレジェ・クシオの裁判所に拘束されていた。拘束とはいえ、実質的にはフライナイツの粛清の手の及ばない場所に匿っておく、保護措置に近い。

 

裁判所にてフリアエからメギド攫いの噂を聞いたソロモンたちは、先程別れた妄戦ちゃんの身を案じ、フリアエも交えて彼女を探しに出る。しかし彼女は既にメギド攫いの手に落ちてしまっていた。メギド攫いの目的はハルマゲドン計画の一つであり、メギドの魂を植物に埋め込んだ上でヴァイガルドに繁殖させ、ハルマの干渉を誘いハルマゲドンを起こすことであった。妄戦ちゃんの前には、既にフォルネウスが魂を抜かれていた。

妄戦ちゃんの機転により、監禁場所に接近する一行。そこに異世界侵攻作戦総指揮官のプラトンが現れる。彼女はソロモンを妄戦ちゃんの監禁場所の心当たりに案内すると言い、その敵に塩を送るかのような発言に驚くソロモンに、ハルマゲドン計画の数の膨大さとその一部を知られることの他愛なさを説く。メギド植物化計画の研究所を暴いた一行は無事妄戦ちゃんを救出し、また計画担当者はプルトンの権限により、懲罰的に植物化させられた。

 

妄戦ちゃんを裁判所に連れ帰り、早速ガギゾンの意識と接続する。妄想の中でソロモンは妄戦ちゃんに、自分の推理した彼女の真意を確かめる。妄戦ちゃんは自分がガギゾンに縁ある改造メギドであり、議会の派遣ではなく、ガギゾンの助命と移籍のため自主的にメギド72に近付いたことを認めた。

ガギゾンの意識の中で、ソロモンはメギド体のようなモンスターを倒す。しかし生憎、それはガギゾンが自ら意識内に設置したダミー意識であった。意識を塞いで母なる白き妖蛆の意思干渉を避けるためのものである。

ベルゼブフが表面上意識を取り戻してしまい治療研究の必要性が認められない上に組織の指示に背いたことから、もはやガギゾンがフライナイツに戻っても裏切り者として処刑されるだけである。そこでガギゾンはソロモンの提案に乗り、いつかベルゼブフの「本来の意識」を取り戻すために、召喚とメギド72への移籍を受け入れた。

 

一方その頃、植物化計画に捕らわれていたフォルネウスはプルトンの原状回復の計らいにより無事心身を取り戻し、サタンとメギモンの元に戻っていた。そしてサタンは言う。今度こそ蛆を倒しベルゼブフを助ける、そうすればハルマゲドンなどという馬鹿騒ぎもおしまいだと。

しかし奮起した直後、サタンは信じがたいものを発見する。メギドラルに進行してきたハルマの大軍であった。

 

#100、#101

いよいよ議会が始まる。

メギドラルの統一議会とは、統一意思マグナ・レギオーー物質としては、光り輝くフォトンの塊ーーに参加する全メギドが魂を融合させ、皆がマグナ・レギオになることで行われる。

溶け合う全の中で、メギドたちは自身の戦果を心に描く。それは個が鮮烈に得た経験であり、全はそれらの経験からその意識を変化させる。より多くの印象を全に焼き付けられた個こそ勝者であり、メギドたちが平素行い個を淘汰する戦争も、マグナ・レギオに融けた先で行うせめぎ合いとしての戦争も、個を全に反映させるための手段である。戦争という手段を持たない個は、全にとっては変化や成長、生存戦略、未来を夢見ることをもたらさない個であり、無用のものとなる。

「遠い情景」とは、過去や現在から繋がる遠い未来を夢見ることなのである。

戦争により互いの思想をぶつけ合い、勝敗をつけ、社会全体で価値を見出すのだ。

議会を過ぎる多くの記憶の中には、示唆に富むものもあった。例えば、かつて死んだまつろわぬ者・リコレッキ(8章)によく似たメギドが発生しミマモラーなるメギドの軍団に拾われていた。またエルダーとはメギドが内なる声に呼ばれ、幻獣の肉体を脱ぎ捨てることで成ることができるが、失敗すれば幻獣の肉体に囚われ、知性も失って永遠に大幻獣としてさまようことになるとの噂をする古メギドもいた。

議会はソロモン王のイメージもまた受け取る。そして従来無視してきたメギドと幻獣の派生過程を直視し、ソロモン王の「メギドラルは生まれ直さねばならない」との思想に共鳴する。アムドゥスキアスが生まれ直したように、メギドとこの世界との関係性を壊し作り直すのだ。そのために、ハルマゲドンの計画は全て凍結する。

その結論を得たところで、統一議会は無事に終了した。

 

一方議会場の外では、ブニ、フリアエ、ガギゾンがベルゼブフの状態について議論していた。

一見まともになったように見えるが、今のベルゼブフは彼自身も自覚できないまま蛆の洗脳下にある。医師喪失状態や暴走状態では本来のベルゼブフの意識と蛆の操作する意識とが葛藤していたのだが、今や蛆の洗脳に敗北してしまったのだ。

 

またレジェ・クシオの外で待機している一陣の一部は、不穏な気配を感じていた。ロノウェ、プルソン、アロケルに加え、アルマロス傘下軍団にしてレジェ・クシオ警備の任を負うゲストレイス軍団員ネガティの協力も仰いで偵察に出ると、警備用幻獣が姿を消している。と、偵察隊はどこかから超長距離攻撃を受けた。敵襲である。

警備幻獣のロストとバリアの消滅は、それらを手配したプルトンの裏切りを示唆していた。

議決に高揚するメギドたちの上に、敵軍の砲撃が降り注ぐ。

 

またヴァイガルドでは、捕らえられたオリアスが、レジェ・クシオに対する攻撃を予見しながら止められなかったことを悔やんでいた。

 

#102

メギド72は、結果としてハルマニアに利用され、メギドラルを害してしまった。メギドラルが休戦季と統一議会で無防備になっているという防衛上の致命的な情報が、メギド72と王都を通してハルマニアに筒抜けになっていたためだ。ヴァイガルドを戦場にすることなくメギドを殲滅する機を伺っていたハルマニアがこれを逃すことはなかった。

直接の引き金となったのは、ソロモンたちが取り逃しエウリノームによって殺されたアンチャーター・ロクスが変じた凶星であった。メギド72の作戦は、ハルマたちから「失敗」と判断されてしまったのだ。そしてそれは、メギド72がハルマゲドンを止めるのを待つという「猶予」の終了を意味していた。

 

ハルマを攻撃すれば、メギド72は本来の防衛対象であるヴァイガルドを裏切ったことになる。しかしハルマに味方すれば、ソロモンが議会で得たメギドラル社会からの信頼と敬意を捨てることになる。どうしたらいいかも分からず、ソロモンはハルマの飛ぶ空を愕然として見上げることしかできなかった。

 

ハルマゲドンは進行する。

しばらく前、アジトとペルペトゥムを繋ぐポータルが封鎖され、異常事態を感じたガープ・ニバスはアマイモンへ危機を知らせるためコルソンとベルフェゴールをメギドラル側に送り出していた。間もなくハルマが現れ、一方的に二名へ投降を要求した。たった二名で勝ち目など持たない彼らは渋々無抵抗に降伏し、勾留に甘んじる。次いでハルマは攻め込んだ先のメギドラルからメギドを拉致し、ゲートのこちら側、ヴァイガルドで殺害する。これにより護界憲章は破棄され、ヴァイガルドを舞台とする戦闘も、ハルマがリスクと見なすソロモン及びメギド72軍団員の抹殺も可能となった。

ラソンとベルフェゴールはメギドラルに渡った先でアマイモンに接触し、危機を知らせた。しかし迎え撃とうとしたアマイモンの軍勢は圧倒的なハルマの大軍になすすべなく蹴散らされ、敗走を余儀なくされる。

更に別の場所ではサタンもハルマたちに応戦していたが、彼らもまた敗北してしまった。

揃って敗戦はしたものの、レジェ・クシオにハルマ軍勢が到達するタイミングを遅らせられたことはメギドラルに反撃の機会をもたらした。

すぐに撤退したことで被害軽微であったアマイモン軍団及びベルフェゴール・コルソンは、ボロボロになったサタンらを発見し救助する。ベルフェゴールはサタンに対して今回のハルマの侵攻がメギド72の意図したものではないことを説明し、またサタンは自分のハルマゲドン推進が、蛆からベルゼブフを取り戻すまでバビロン計画(これが成功すると用済みのベルゼブフが抹殺されることを恐れた)の足を鈍らせるための時間稼ぎであったことを明かす。

 

混迷を極めるレジェ・クシオを眺めるプルトンとベルゼブフ。ハルマは「大いなる意思」を奪おうとしていると推測した上で、母なる白き妖蛆の優位性を保つためには自分たちこそが「意思」を奪うべきだと話す。と、そこにガギゾンが現れる。「母なる白き妖蛆が方針を変えた(議会の直接支配に舵を切ったことを指すと思われる)」と話すプルトンに、ならば無用になったはずのベルゼブフを解放するよう迫る。プルトンは、ベルゼブフを必要としているのは計画ではなく蛆そのものであること、ベルゼブフが蛆の「究極の目的」なるものの鍵を握っていることを説いてベルゼブフは無用ではないと告げ、更にベルゼブフを促してガギゾンを攻撃させた。真の意識を取り戻させることだけが自分の目的だと力強く呼びかけるガギゾンに、しかしベルゼブフの真の意識が応えることは叶わなかった。

今にもとどめを刺されそうなところで、ガギゾンを監視していたシャミハザ・ジルベールが現れ攻撃を止める。

ガギゾンを攻撃する時、ベルゼブフの言動は怪しくなっていた。その錯乱はベルゼブフ自身の内面の葛藤を示唆しており、蛆の言いなりではない「真の意識」が健在であることを伺わせた。

プルトン・ベルゼブフがレジェ・クシオ襲撃の手引きをしたことをシャミハザが喝破すると、プルトンはあっさりとそれを認める。

そしてそのまま、四名は戦闘に入った。

 

#103

ハルマの攻撃の背後には母なる白き妖蛆がいた。何らかの方法でそれを誘導したのだ。蛆は、すべてのメギドを支配しヴィータ体のまま一生を過ごさせ、いつしか自分がメギドだったことをも忘れさせ、幻獣に食われるだけの生き物にしてやるのだと高笑いした。

 

絶望するソロモンを中心に苦悩するメギド72。そこでバラムが違和感を指摘する。ヴァイガルド防衛を掲げるメギド72、あまつさえ純粋なヴィータであるソロモンをもろとも殺すような攻撃を王都が黙認するのはあまりにも行き過ぎだというのだ。とすれば、攻撃決定の主体は王都ではなくハルマニアである。かつ、上空に戦力を滞留させて総攻撃を行わないことから、未知の目的があることが想像された。ハルマたちとの交渉の可能性を探るべく、ソロモンはマモンら議会中枢メギドのいるレジェ・クシオ中心部に戻ることにした。

のちに明らかになることだが、ハルマ勢力がソロモンの巻き込み上等で攻撃を開始したのは意図的なことであった。未知の目的ーー「大いなる意思」の奪取ーーの前に、ソロモンは大変にリスキーな存在であるからだ。マグナ・レギオ所属の唯一のヴィータである彼は、ヴィータであるが故に正面切っての抹殺には理由が立たず、しかしマグナ・レギオであるが故に「大いなる意思」の所有権を主張する可能性がある。このリスクを排するため、ハルマたちは敢えてソロモンへの投降要請の提示ができなかったふり(ソロモンが特定できなかった、とのちに言い訳をしている)をして、ソロモンもろともレジェ・クシオを攻撃したのだ。

 

中心部ではバールベリト、マモン、アルマロス、アスモデウス、ルシファーら有力者が戦況について議論を行っている。ソロモンたちと同じく、彼らもハルマが総攻撃に転じないことに違和感を持ち、未知の目的があることを推測していた。しかしいずれにしても勝ち目のない戦いである。マモンはレジェ・クシオを放棄し、集団で脱出して戦力の温存をはかることを決心した。

 

レジェ・クシオ中心部に戻ったソロモン王に、マモンはレジェ・クシオを脱出する「大いなる意思」の護衛を命ずる。ハルマの目的は「大いなる意思」の奪取であると見抜いたのだ。

任務には脱出ルート確保のダゴン軍団とオリエンス軍団、護衛として協同するシャドウ・ギャクソン軍団、陽動を兼ねつつ「大いなる意思」とは別ルートで脱出するアルマロス傘下軍団の名もあった。

またマモンとルシファー、バールベリト、リヴァイアサン、アスモデウスはレジェ・クシオに残り、敵勢力を足止めするという。

しかし悲しいかな、「大いなる意思」護送チームの動きはハルマたちに捕捉されていた。

 

プルトン・ベルゼブフとぶつかりあったシャミハザ・ガギゾンだが、圧倒的な力の格差になすすべもない。

プルトンとベルゼブフは、ハルマの動きから「大いなる意思」の護送が始まったことを察知し、自分たちの方がそれを奪おうと移動を開始する。

ガギゾンとシャミハザ・ジルベールは追いすがろうとするも、意に介されることすら叶わない。と、二名は偶然にも「意思」護送チームに遭遇し、合流する。

プルトンとベルゼブフは「意思」を護送する軍団メギド72や議会運営メギドを襲撃し、圧倒的な力で蹂躙する。プルトンはソロモンをまるでおもちゃにするかのように殴りつけ、ヴィータに転生した追放メギドたちを蔑む発言とともに、「ヴィータたちはコランを殺した」と謎めいたことを口にした。

一方、ベルゼブフの手によって議会運営メギドたちは殺され、「大いなる意思」は破壊されてしまった。

「大いなる意思」の破壊という敗北を感じ取ったソロモンは、プルトンに目を向けるとルシファーの記憶の中で見たことを口にする。プルトンはヴィータの愛を尊いと感じていたのではないのか、ヴィータになったベリアルを救いたいと言っていたのも、最終戦争など起こすべきではないと言っていたのも全て嘘だったのか。そう問うと、プルトンは激高しソロモンに対して殺意を垣間見せた。

プルトンとベルゼブフは去り、敗北したメギド72とハルマに撃墜されたメギドたちの死体がそこに残される。レシェ・クシオも「大いなる意思」も議会での成果も、王都との協調もヴァイガルドでの立場も全てを失ったとソロモンは絶望した。彼を鼓舞したのは、居合わせたニクー軍団長である。オリエンスの軍団との戦争に負け、心の通いあった副長も亡くして生きる気力を失っていたメギドだ。彼女は戦う意志を示し、ソロモンは逃げてすべきことを考えるべきだと叱咤した。

上空では、「大いなる意思」の崩壊により奪取作戦が失敗したことを認識したハルマたちが、メギドの殲滅に作戦目的を切り替えていた。

 

偵察に出ていたイポス、アモン、ウァレフォル、プルソン、アモン、ロノウェは、ハルマにより撃墜され深手を負ったネガティを背負いながらレジェ・クシオに戻ることにした。

 

ヴァイガルドでは軟禁状態のグレモリーとウァプラが、ソロモンの動向の分からない中で個々のメギドが各々の判断で行動し、結果として軍団メギド72が分断されることを憂いていた。彼らやアジトでの軟禁に甘んじている者たちは、ハルマと敵対してソロモンの立場を悪くすることや追放メギド全員が粛清対象とされることを危惧している。

 

アガレス、アミー、アンドラス、ヴィネ、エリゴス、オセ、オレイカルコス、ガミジン、キマリス、グラシャラボラス、ジズ、シトリー、シャックス、ネフィリム、ハーゲンティ、ブエル、フラウロス、ベヒモス、ボティス、マルコシアスラウム、ネルガルは、懲罰局戦争総力戦のために召喚された後ヴァイガルドに戻るべく、遠征本隊を離れ近くのゲートからヴァイガルドに渡っていた。

カスピエル、インキュバス、アガリアレプト、サキュバスリリム、タムス、アリトンは、カスピエルと懇意にする女の家に身を寄せていた。しかしリリムは眠ったまま目を覚まさない。

バフォメットは自身の村から逃げ、途中で鎮魂騎士団の助力を得て身を隠した。かつて葬送騎士団を名乗っていた者たちは海辺の街での一件を経てスタンスを転じ、鎮魂騎士団と名を変えて活動していた。今は密かに王都と協力関係を結び、ハルマの起こしたハルマゲドンからヴァイガルドを守るためにメギドたちを集め戦力として保護する仕事を負っている。また、「作戦顧問」として王都からデカラビアを送り込まれてもいた。

 

#104

アジト軟禁:アンドレアルフス、アンドロマリウス、ウコバク、カイム、グシオン、クロケル、サブナック、サラ、ゼパル、ハック、ビフロンス、フィロタヌス、フォラス、フォカロル、ベリト、マルチネ、ムルムル、メルコム、ルキフゲス

アジトの牢:アガシオン、インプ、スコルベノト、ティアマト、バラキエル、ブリフォー

ペルペトゥムで勾留:ガープ、ニバス

ヴァイガルド某所に監禁:オリアス

グレモリーの屋敷に軟禁後、アジトに移送:ウァプラ、グレモリー

トーア公国の牢に勾留:バールゼフォン(特殊メイクで変装したストラスの影武者とともに)

トーア公国で潜伏:ストラス

ヴァイガルドで逃亡生活①(王都):アガリアレプト、アリトン、インキュバス、カスピエル、サキュバス、タムス、リリム

ヴァイガルドで逃亡生活②:バフォメット、デカラビア(鎮魂騎士団のツレンの助力による)

ヴァイガルドで逃亡生活③:タナトス、フェニックス

ヴァイガルドで逃亡生活④:ニスロク

ヴァイガルドで逃亡生活⑤(エンゲルシュロス):サレオス、マルファス

ヴァイガルドで逃亡生活⑥:セーレ

メギドラル遠征隊:ソロモン、アスラフィル、アバラム、アムドゥスキアス、アラストール、イヌーン、ウァサゴ、ウァラク、ウェパル、ガギゾン、サタナキア、シャミハザ、ナベリウス、パイモン、バティン、バラム、バルバトス、ハルファス、ヒュトギン、ブネ、フリアエ、プルフラス、フルーレティ、ベバル、ベリアル、ベレト、マルバス、メフィスト、モラクス(※ベリアル・ベレトは議会参加のため、アイムは寄生幻獣焼却のためペルペトゥムより召喚された)

偵察先から本隊合流を目指す:アモン、アロケル、イポス、アロケル、ウァレフォル、プルソン、ロノウェ

アジト帰還の道中ヴァイガルドの森で迷子:アガレス、アミー、アンドラス、ヴィネ、エリゴス、オセ、オレイカルコス、ガミジン、キマリス、グラシャラボラス、ジズ、シトリー、シャックス、ネフィリム、ネルガル、ハーゲンティ、ブエル、フラウロス、ベヒモス、ボティス、マルコシアスラウム

その他:アルマロス・オリエンス・ダゴン(独自に自軍を率いてレジェ・クシオ脱出)、マモン・アスモデウスリヴァイアサン・ルシファー(・バールベリト)(八魔星及び有力者として防衛を指揮)、フォルネウス(サタンらに同行、召喚成功すればメギド72復帰の予定)、コラソン・ベルフェゴール・アマイモン(コルソン、ベルフェゴールはペルペトゥム陥落直前にメギドラルに赴き、アマイモン及びサタンと合流)

 

遠くからレジェ・クシオの陥落を見たサタンは、近くに来ていた「告げる者」兼黒い犬に、八魔星を含め可能な限りのメギドの救出を命ずる。サタンはハルマへの抗戦の意志を強く持っていた。

 

八魔星の一人であるプロセルピナは情緒不安定なメギドである。彼女はハルマ襲撃のことは知らず、議会に遅刻したことを嘆いてとぼとぼと歩いていた。しかし目の前にハルマが現れると、豹変し暴力的になって相手を破壊する。と、行きあったメギドが彼女に話しかけてくる。ミマモラー軍団のマッカーセイルであり、ハルマゲドンが起きたことを説明すると、リバイバイルをプロセルピナに任せてレジェ・クシオの戦場へと駆けていった。

プロセルピナはリバイバイルに正しいヴィータ体の構成方法を教えるが、上手く行かない。そのことから、リバイバイルが実は一度死んで蘇った者ではないかと推測する。リバイバイルもまた、リコレッキだった時の一瞬の記憶を朧気に思い出した。二名はレジェ・クシオに赴き、妄戦ちゃんの力を借りてリバイバイルの記憶を紐解くことにした。

 

ソロモンたちは住処を失った妄戦ちゃんを拾いつつ、敗走の失意の中荒野を歩いていた。

 

タナトスは消えた死体の噂に興味を持ってアンチャーター・ロクスか破壊された村を訪れていた。そこにフェニックスも姿を現す。ハルマの監視下に入ることをフェニックスは促すも、それはタナトスのスタンスを確認するためのブラフだった。拒否を返すタナトスがフェニックスに刃を向けると、反抗の意志は十分としてフェニックスは真意を伝える。フェニックスは、いずれ来るであろう反撃の時にソロモンの元へ参じるため、バロールと協力し「メギド狩り」と称して戦力集めを行っていたのだ。またタナトスの前にはサルガタナスにも接触していた。

ニスロクは単身逃亡している。

グレモリーとウァプラはアジトに移送された。サブナックはバンキン族の安全を案じて自主的にアジトに戻った。ビフロンスは世相のひりつきを感じ取り、自主的に徒歩でアジトに現れた。ゼパルは騎士団の説得に渋々従い、ルキフゲスやクロケルは騎士団の甘言に乗り、グシオンは父親の手前抵抗もできず、アジトに移動した。ハックとマルチネはハルマにキャトルミューティレーションされる牛を追って共々収容され、アジトに移送された。ストラスとバールゼフォンはトーア公国の牢に大人しく入れられたらしい。が、ストラスは影武者である。

シャックスたちアジト帰還中迷子組はハルマに捕捉され、ヴィネの同行を要求された。

ヴィネはハルマに従って攻撃機に乗り込み、他の面々はハルマと同じ方向に走る。爆撃を危惧してのことだったが予想は当たり、彼らのいた場所は間もなく火の海となった。メギドたちは待機していた騎士団に接触し、投降の形で保護を得た。ただし反抗心を持つ一部のメギドーーガミジン、エリゴス、オセ、オレイカルコス、ボティス、ネフィリム、キマリス、シトリー、ハーゲンティ、ネルガル、ベヒモス、アガレス、フラウロスーーは投降の一団に加わらず、身を隠して逃亡生活に入ることにした。

 

アジトではアガシオンがポータルキーを盗み出したことを契機に、アガシオン、インプ、スコルベノト、ティアマト、バラキエル、フィロタヌス、ブリフォーが脱走を試みる。がむしゃらにポータルに飛び込んで星間の禁域に投げ出された彼らは、メギドラルに帰りたい一点において、思わぬことに大幻獣ポルターガイストの共感を得る。ポルターガイストに乗ったメギドたちは轟音と共にポータルのゲートをこじ開けてアジトへと引き返し、もとい乗り込んできた。

アジトを突っ切ってヴァイガルドの空に飛び出したポルターガイストとメギドたちは、「メギド狩り」中のフェニックスに遭遇する。しかしインプたちを制圧し味方に引き込もうとするフェニックスの思惑は、背後に忍び寄っていたアマゼロトにより阻止された。反抗的な傾向のメギドばかりを襲っては懐柔するフェニックスの動きを訝しみ、エリゴスの身を案じて(?)襲いかかり真意を問うてきたのだ。

結果としてアマゼロトはフェニックスと共闘することになりはしたものの、その間にインプたちはどこかへと飛び去ってしまった。

鎮魂騎士団のツレンとバフォメットはとある村を訪れ、「作戦顧問として鎮魂騎士団に出向中」のデカラビアを拾い、また、そこでエウリノームの噂を聞いた。作戦顧問というだけあって、デカラビアは王都と鎮魂騎士団の動きにもよく通じている。団員のハーフェンがハイルング村に向かったが、どういうわけかソロモンは現れず「合流計画」は失敗に終わったという情報を持っていた。

 

騎士団の情報によると、エウリノームは「お父さん」を名乗りながらヴァイガルド各地を渡り歩き、幻獣や犯罪者を排除して回っているらしい。

 

ハルマとプロセルピナとの戦いに巻き込まれたリバイバイルは、呆気なく絶命していた。

 

アンチャーター・プルクラは王都に保護されていた。そこでエルプシャフト王より二つの予言について聞かされ、ヴィータの主体的抵抗を見届ける立会人になると宣言する。

 

数百年前、三つの予言があった。一つ目の予言では、空に三つの凶星が輝き、伝説のハルマが空を横切ってゆく。予言者ファティマは、この戦争に巻き込まれてヴァイガルドも滅ぶのだと言葉を紡いだ。

二つ目の予言では、ハルマニア版「エクソダス計画」が語られる。最終戦争勃発後ごく一部のヴィータがハルマニアに迎えられ、コールドスリープに入るのだ。最終戦争により荒廃したヴァイガルドの環境が回復する1000年後に備えるためであり、残された大部分のヴィータは戦火の中で死に絶える。予言の中で、ハルマはヴィータの生き死にも種族的運命も文明も、全てを家畜のようにコントロールしていた。

三つ目の予言は、漠然としつつも希望であった。若い二人が並び立つ時、勝算が生まれるというのだ。

聡明で注意深い予言者ファティマは自らの見た二つ目、三つ目のイメージのことを誰にも言わず、当時のエルプシャフト王にだけ上奏した。王はその情報を、歴代の王とシバの女王にのみ口伝し、特にハルマには自分たちが情報を持っていることを悟られないよう注意することを決めた。

 

#105

ハルマに従ったヴィネは、エンゲルシュロスの民衆にエクソダス計画をーーさも素晴らしいことであるかのようにーー説明する。それを影で見ていたサレオスとマルファス、そしてコラフ・ラメルのマスターは、ヴィネの演説が本意ではないことを見抜いていた。

セーレは追手の騎士団が一緒に冒険しているものと信じ、ヴァイガルドの遺跡を駆け回っていた。

 

ソロモンたちの前に現れたハルマが、ソロモンの処刑を言い渡す。罪状はこじつけじみていたが、実際のところ、レジェ・クシオ攻撃前にソロモンに投降要請を投げかけなかったという手順の不手際を有耶無耶にするため、ソロモンの抹殺を目指していたのだ。そのため今回も、投降すら認めない問答無用の対応である。絶体絶命の瞬間、ハルマとメギド72との間に立ちはだかったのは馴染みの顔にしてヴァイガルド最上位管理官の肩書を持つハルマ、ミカエルであった。ハルマニア独特の形式的処理や条件の応酬の末ハルマ側の落ち度を認めさせたミカエルは、ソロモンに投降の有無を尋ねさせる。ソロモンは「判断は保留」とこれまた形式的回答を返し、その場から逃げ去ることにした。

ミカエルを交えた交渉のさなか、ソロモン王が見せられたガブリエルからの投降要請の中には暗号じみたハイルング村の名があった。特段縁深いわけでもないその村の名が示されることに違和感を覚えた一行は、ガブリエルがメッセージに秘めた意図について考察する。

ハイルング村はソロモンとシバが初めて会った場所である。そこで、攻撃隊のハルマにも悟られたくない意図があり、ソロモンとシバとの会合を必要としているのだろうとソロモンは勘付いた。しかしソロモンは、共闘の申し出がメキドラルに敵対的である限り、それを拒むことにした。彼の中で方針は既に決まっており、それはメギドラルとヴァイガルドどちらにもつかず第三の立場を作り出した上で、メギドラルを救うことによりハルマゲドンをも防ぐというものであった。

回答保留をしたソロモンにハルマが追いすがる。いよいよ追いつかれたところでソロモンが第三の立場を主張し投降を拒むと、ハルマは攻撃の手を向ける。二体に挟撃され死を覚悟した時に、ふいにインプたちを乗せた大幻獣ポルターガイストが現れた。ポルターガイストの砲撃によりハルマ二体は撃墜される。

力尽きたポルターガイストの墜落地点にソロモンらが向かうと、インプたちアジト脱出組がいた。大きな怪我もなく、無事に合流することに成功する。

一行の前にまたもやハルマが現れる。しかし、そのハルマは先程ポルターガイストが撃墜した個体と同じ内容の投降要請を投げかけてくる。そのことから、ハルマ間に劣化フォトンを原因とする通信障害のあることが判明した。

通信障害がある、つまりハルマ同士が情報を共有できないのであれば、遊撃と確実な各個撃破を続けている限り、投稿要請に対するソロモンの回答は「保留」のままである。であればソロモンの立場を反ヴァイガルドに確定させることなく、メギドラルに布陣したハルマ勢力を削ぎ、戦線をヴァイガルドまで押し返すことができる。メギドたちが反転してヴァイガルドに攻め込まない限り戦況を膠着させることが可能であり、そのメギドによるヴァイガルド侵攻については、これまで通りソロモンが阻止すればよいのだ。勝算を得たソロモンの声に力がこもる。

戦闘の直前、ソロモンはハルマに対し、自分への投降要請をはじめ伏せていた理由を問う。ハルマの回答により、「大いなる意思」の所有権を主張し得るソロモンを抹殺したい意図があったことや、そのために投降要請を伏せた手順の不手際を事後的に不問にするため処刑を強行しようとしていたことが判明した。

 

一方、シバたちにもソロモンの協力を必要とする目的があった。ハルマがエクソダスのためにヴァイガルドを滅ぼすのを防ぐことだ。相談のためソロモンに接触する術を模索する一同に、アンチャーター・プルクラはこちらからメギトラルへ会いに行くことを提案した。

 

大幻獣とともにメギドがアジトを脱走したことは反乱と見なされ、ハルマ側の姿勢を強硬化した。ハルマたちはシバに対してメギドの発見次第の抹殺、及び発見済でアジト収容中のメギドの順次の処刑を主張し、シバの反対も意に介さない。むしろメギドラル遠征隊の背後を衝かれることや、護界憲章破棄後のヴァイガルドへのメギドラルからの侵攻を懸念し、ヴァイガルドに拠点を持つメギド72の抹殺の正当化のため、敢えて彼らに圧力をかけていたようにも見えた。シバは、メギドたちヴァイガルドから一時避難させる手立てを講ずるための時間的余裕が少ないことを実感した。

 

アジトに軟禁中の面々もまた、未だ逃亡中の者たちの身の危険を案じていた。インプらの「反乱」によってメギドが抹殺対象になったためである。王都への恭順を拒むのであれば、せめてメギドラルへ逃げた方が良いだろう。それを促すにしろ恭順を諭すにしろ、まずは接触と伝達が必要だ。手段として、アンドレアルフスは飛空艇メルクリウスの利用を提案しシバに貸与を打診した。建前こそ「メギドラルに渡航しソロモンを連れ戻すため」だが実際には本当にメギドラルに行くつもりはなく、真意は、未だアジトに集まらないメギドをおびき寄せるためである。目立つ兵器を駆り出すことで、逃走中のメギドたちがそれを奪いに現れることを期待したのだ。

逃亡者たちが(自分たちのヴァイガルドにおける生存の)後ろ盾であるソロモンと合流するためメギドラルへの渡航手段を求めていたのであれ、あるいは王都寄りメギドによるソロモンのヴァイガルドへの連行を阻止しようとするのであれ、メルクリウスは是非押さえたい兵器に違いない。戦闘、ひいては軍団分裂覚悟の作戦である。

使者の騎士団員を通じて提案を聞いたシバの女王は、そこから得たインスピレーションに膝を打つ。メルクリウスの操作に必要な指輪の力は自分が振るう、つまりアジトの者たちと共に、自分もメルクリウスに乗ってメギドラルに赴き、ソロモンに会ってすべての情報を共有しようというのだ。勢いづいたシバの女王は、メルクリウス機械機構部分の操作のため、逃亡中のタムスを秘密裏に捜索するよう命ずる。

 

その頃、アジトの屋上で景色を眺めていたアンドレアルフスは、騎士団員にハルマが紛れ込んでいることを見抜いたがために拘束されてしまう。フォトン状態でハルマ用攻撃機に収容する形である。拘束されながら、アンドレアルフスは自分の出した案がハルマに漏れていたこと、それ故にアジトのメギドも逃亡中のメギドもまとめて抹殺する格好の機会をハルマに与えてしまったことを悔やんでいた。彼がメルクリウス作戦の提案者であり、ハルマにとって利用価値があるが故その場で殺されなかったことだけが不幸中の幸いである。

アンドレアルフスの連れ去られたのち、カラスのマックロウの騒ぐ声に誘われてルキフゲスが現れ、その場に残された蝶番を見つける。それはマルコシアスの孤児員の扉の修繕の際に出た廃品で、アンドレアルフスがカラスと戯れるため弄んでいたものであった。

 

メルクリウス作戦のため、王都勢力は騎士団を王都市内より退かせる。これを好機と女の家を出たカスピエルらは、王都外に通じるヒルフェの地下道を進んでいた。タムスの背に負われたリリムは一向に目を覚まさず、寝言でしきりにリリスの名を呼びかけている。そこに、シバの密命を受けたダンタリオンが現れた。

 

コラフ・ラメルのマスターは、店で得た情報ーーアジトにソロモンにとって大切なものが運び込まれようとしているーーをサレオス・マルファスに共有した。

鎮魂騎士団のツレンの手を借りて逃亡生活中のバフォメットは、デカラビアと合流していた。とある人物(多分シバの女王)から「一つ目の切り札」として紹介され、鎮魂騎士団に受け入れられたらしい。鎮魂騎士団の組織力をもってハルマの目を避けながらメギドたちを集め、ハイルング村に連れて行ってソロモンに合流させるという計画も把握していた。二人はツレンより、王都からアジトに飛空艇が移送されるようとしているとの情報を得る。デカラビアはハイルング村集合の手筈が狂ったことを推測しつつ、敢えて流布されたメルクリウス移送の情報こそ、ハルマたちの張る罠を掻い潜ってメルクリウスに乗り込みメギドラルへ逃げよという王都の指示であることを見抜いた。

ガミジンらもまた、立ち寄った酒場でメルクリウス移送の情報を得ていた。それが罠であることを見抜きながらも、他に手がない以上罠を強行突破してメルクリウスを奪うことを決める。

 

ハルマとの戦闘を制したソロモンらは、ハルマが仄めかしていたアジト粛清の可能性やインプたちの脱走を受け、ヴァイガルドに残した面々の身の安全を案じる。だが、ハルマの各個撃破による戦線回復という役割を見つけたソロモンたちは、彼らの健闘とシバの誠実さを信じるしかなかった。気持ちを切り替え、遊撃しつつレジェ・クシオ脱出組との合流及び召喚阻害の除去を目指す行動に移る。

 

メギドラルのあるところで、まつろわぬ者たちが騒いでいた。横たわっていた死体に突如フォトンが巡り、起き上がったのだ。その死体は誰にともなくリバイバイルと名乗り、「何度でも蘇る。でも、なんのために?」と呟いた。

 

#106

アジト軟禁:アミー、アンドラス、アンドロマリウス、ウァプラ、ウコバク、カイム、グシオン、グラシャラボラス、グレモリー、クロケル、サブナック、サラ、ジズ、シャックス、ゼパル、ハック、ビフロンス、フォラス、フォカロル、ブエル、ベリト、マルコシアス、マルチネ、ムルムル、メルコム、ラウム、ルキフゲス

予言回避のための抵抗勢力として集結:アマゼロト、オリアス、サルガタナス、ストラス、タナトス、バロール、フェニックス

王宮:アガリアレプト、アリトン、インキュバス、カスピエル、サキュバス、タムス、ダンタリオンリリム

ペルペトゥムで勾留:ガープ、ニバス

トーア公国の牢に勾留:バールゼフォン(特殊メイクで変装したストラスの影武者とともに)

ヴァイガルドで逃亡生活:①アガレス、エリゴス、オセ、オレイカルコス、ガミジン、キマリス、シトリー、ネフィリム、ネルガル、ハーゲンティ、フラウロス、ベヒモス、ボティス、②バフォメット、デカラビア(鎮魂騎士団のツレンの助力による)、③ニスロク、④サレオス、マルファス(エンゲルシュロスでコラフ・ラメルマスターと共に)、⑤セーレ(その気なく)、

メギドラル遠征本隊:ソロモン、アイム、アガシオン、アスラフィル、アバラム、アムドゥスキアス、アラストール、インプ、ウァサゴ、ウァラク、ウェパル、ガギゾン、サタナキア、シャミハザ、スコルベノト、ティアマト、ナベリウス、パイモン、バティン、バラキエル、バラム、バルバトス、ハルファス、ヒュトギン、フィロタヌス、ブネ、フリアエ、ブリフォー、プルフラス、フルーレティ、ベバル、ベリアル、ベレト、マルバス、メフィスト、モラク

サタンやメギモンと行動:アスモデウス(意識不明)、アマイモン、イヌーン、コルソン、バールベリト、フォルネウス、ベルフェゴール、マモン、リヴァイアサン、ルシファー

レジェ・クシオ脱出後潜伏:アモン、アルマロス、アロケル、イポス、アロケル、ウァレフォル、プルソン、ロノウェ

その他:オリエンス・ダゴン(独自に自軍を率いてレジェ・クシオ脱出)、アンドレアルフス(フォトン状態でハルマにより拘束)、ヴィネ(ハルマの傀儡に甘んじ王女として活動)、プロメテウス(ライブで絶えず人前に姿を見せることでハルマや騎士団の敬遠を得る)、アスタロト(単身アジトを目指し、拾ったハルマ攻撃機に搭乗)、アザゼル・ウヴァル・ザガン・フルカス・フルフル・レラジェ(デカラビアに声をかけられハイルング村に潜伏)

 

時はやや遡り、オリアスである。いちはやく捕らえられた彼女のもとに、シバ付きメイドのルネが現れて状況を説明する。オリアスの予言が王家の知るファティマの予言と同じ内容であった場合、それをソロモンが知れば、まず間違いなく王都とハルマに敵対する。またオリアスが自身の予言を周知することにより、ハルマの計画をヴィータらが知ったことをハルマに察知されてしまう。それでは、ハルマを出し抜いてヴィータ全体が生存せんがためにファティマの予言を隠し通してきた王家の努力が水泡に帰してしまう。だからこそ、オリアスはーーハルマではなくーー王都によって捕らえられ隠されたのだ。

王都の真意を知り態度を軟化させたオリアスは、ルネに自身の見た予言のイメージを話す。それはハルマによってソロモンが攻撃され、平和への糸口を失って絶望している場面である。

ルネが去る間際、オリアスは新たな予言のイメージを見る。王家への認識が変わったことで予言の歯車が整ったのであろう。イメージの中では誰かが苦しんでおり、そしてホワイトアウトののち、フェニックスの姿が垣間見えた。苦しみの場面は恐らく、王家の動きがこじれ失敗に終わった先の「もう一つの絶望」である。そしてそれを回避する鍵がフェニックスなのだろう。絶望の未来を退けるため、オリアスはサンにフェニックスを探し連れてくるように頼んだ。

サンは見事役割を果たし、オリアスのいる牢へとフェニックスを連れてきた。既に自身でもメギドの戦力を集めていたという彼は、その言葉通りサルガタナス・アマゼロト・タナトス・アリオクと行動を共にしていた。見張りの騎士団員を蹴散らして脱走した一行は、反撃の狼煙を胸中に上げた。

フェニックスの「メギド狩り」すなわち挑発的にハルマへの恭順を促し、拒否を示した者たちを味方に引き入れる活動は、バロールの発案によるものだった。支配されることを嫌う者たちであればハルマや王都が捕捉できなくとも怪しさは無く、密かに一勢力として集まっていることを把握されにくい。かつ、これらの者は真っ先にハルマの粛清対象になるであろうから、その前に一手に集まる方が安全である。

凶星の出現から間もなく、友人のヴィータ(前トーア公?)からハルマがエクソダスを計画し一部の貴族に声をかけ始めている旨の情報を得、そこからハルマゲドンの危機を察したバロールはいち早くフェニックスに接触した。そしてソロモンのために、彼の軍団員に関する知識を活かして「メギド狩り」をしようと提案したのだった。

フェニックスやオリアスたちが牢を脱出したところに、サンがフェニックスに続いて連絡に走っていたバロールも合流する。オリアスは一行に、自身の見た「絶望の未来」の具体的なビジョンを話す。それは、アジトで追放メギドたちが虐殺され、ソロモンはヴァイガルドと決別するというものだった。そして、時はもうすぐそこまで迫っていた。一行は軟禁中の仲間を救出し逃がすため、アジトを襲撃することに決める。

トーア公国で、ストラスは影武者(特殊メイクを施した鎮魂騎士団員?)を立てることにより収監を免れていた。予めバロールに声をかけられていた彼女は、フェニックスの集めた面々と合流する。彼女が隠し持っていたトーア公国設置のポータルキーが、彼らのアジト襲撃の文字通りの鍵である。

機能を止められたポータルキーはサルガタナスによって起動される。アジトのポータルから脱出した際の出口となるそのキーは、アリオクが別行動の上安全な場所に持っていくことにした。

 

オロバスは自身の庵にて思わぬ者の訪問を受けていた。エウリノームである。旧知の二名は毒茶を飲みながら談笑し、エウリノームがお父さんを目指していることやフライナイツを抜けようとしていること、オロバスがーーメギドラル時代は頑なにどの軍団にも属さなかったのがーー成り行きでメギド72に所属していることなどを報告しあった。エウリノームがオロバスを訪ねたのはメギドラルに帰る道を尋ねるためだったのだが、近場に心当たりのないゲートの位置の代わりに、オロバスはメルクリウス稼働の噂を話して聞かせた。

二人のもとに、更にサレオスとマルファス、コラフ・ラメルのマスターが訪ねてくる。メルクリウスを奪うか便乗するか、対応を相談したいのだという。

 

シャックス、マルコシアス、ブエル、ジズ、ラウム、アミー、グラシャラボラスアンドラスは、騎士団の馬車によりアジトに集合した。

 

ダンタリオンによって王宮地下に誘われたカスピエルらは、そこで稼働を止めた護界憲章を目にする。バエル(コラン)とプランシィもそこに匿われていて、護界憲章復活の可能性を求め調査を行っていた。姿を現したシバとガブリエルは、自分たちヴィータ指導者階級の目的であるこの世界の存続にとって、最早メギドラルを滅ぼすことは意味をなさないことを語った。ハルマニアがエクソダスとその後のヴァイガルド滅亡を計画しており、メギドラルの滅亡はそこに至るまでのステップに過ぎなくなってしまっているからだ。よってシバの女王たちは、ハルマニアへの対抗勢力としてメギドたちの力を必要とするようになっていた。メギド殲滅によりリスクを排した上でヴァイガルドの存続をハルマに交渉することもできたかもしれないが、シバの心情はそれを受け入れなかった。友人になれるかもしれない者たちを殺すことなどしたくないと話す言葉は、偶然にもレジェ・クシオ攻撃直後のソロモンの叫びと内容を同じくしていた。

なお、シバが追放メギドたちを召喚することによってソロモンに代わり後ろ盾となることは難しい。何故ならばシバはハルマニアに赴く機会もあり、敵対勢力であるメギドを召喚可能な状態でハルマニアに行くことは、シバの女王の反乱と取られかねないからだ。エクソダスを決めた今のハルマニアにとって、最早シバの女王は重要ではない。彼女の粛清をためらいはしないだろう。しかしヴァイガルドにとっては、世界防衛の中心でありハルマニアとの交渉手段を持つシバの女王を失うわけには行かないのである。

シバは状況を整理する。そもそもアジト軟禁とて、当初は大袈裟な監視を意図したものではなかった。穏健派、あるいはヴィータとして地位を持つため表立って過激な行動のできないメギドはアジトに集まってハルマの目を引きつける役割を担い、その他の者たちはソロモンとの合流を手配した上でメギドラルに逃がす計画だったのだ。しかしハルマゲドンは想像以上の衝撃をメギドたちに与え、ソロモン不在による不安も手伝って、非穏健派のメギドたちの行動を過激にしてしまった。その結果が今の分断状態である。

次なる策としてシバの女王はメルクリウス作戦のことを一行に話す。決戦の地はファンゲン荒原という地になると予想された。カスピエルは、襲ってくるであろうメギドたちの説得要員に心当たりがあると言って一人チームを離れる。時間の余裕もないため、彼は走るメルクリウスに直接合流することになった。

 

ガブリエルたちの予想どおり、ガミジンらはファンゲン荒原でのメルクリウス襲撃を画策していた。

 

メルクリウスに乗り込むため移動を始めるアジト組。ただしブエルやジズ、アンドロマリウス、ウコバク、サラは争いを嫌い、アジトに居残っていた。またマルコシアスも、アンドレアルフスは王都に先行したとの情報に違和感を持ちアジトに残っていた。アンドレアルフスのものであるはずの孤児院の壊れた蝶番が落ちていたことに、勘がざわついたのだ。屋上を調べて回るマルコシアスに、騎士に擬態したハルマ・キガエルが声をかける。それを騎士ではないと喝破したマルコシアスにキガエルは襲いかかろうとした。しかし、カラスのマックロウの体当たりで一瞬の隙が生まれる。それを見逃すマルコシアスではなかった。バリアに守られた本体ではなく、攻撃機を狙って杭を打ち込む。すると、その衝撃により不具合を起こした攻撃機が、異物として収容していたアンドレアルフスを吐き出した。すかさず攻撃に転じたアンドレアルフスは、キガエルを屋上から突き落とす。そこにマルコシアスが杭の追撃をかけ、どうにかハルマを倒すことに成功する。

アンドレアルフスはハルマにメルクリウス計画を利用されていることに焦燥するが、既にメギドたちは出発してしまっている。またアジトに残った数名にも、ハルマたちの凶刃が迫る。

少女たちは敢闘するも、ハルマの前には時間を稼ぐことしかできない。と、そこに現れたのはバロールやフェニックスら「メギド狩り」チーム改めアジト救援チームである。腕に覚えのある彼らはあっという間にハルマを蹴散らし、サルガタナスの起動させたポータルからの脱出を成功させた。

 

もぬけの殻となったアジトにアスタロトが現れる。役に立ちたい一心で単身歩いてきたのだ。空回りぶりを愚痴りうろつく彼女は、そこで打ち捨てられたばかりのハルマの攻撃機を見つける。天才メカニックの直感でマシンのコントロール権限を握ったアスタロトは、高揚のまま飛び立った。行き先は予めマシンに記憶されていた攻撃地点、ファンゲン荒原である。

 

アジトは救われたが、危機はまだ去らない。ハルマたちはメギド集結の地・ファンゲン荒原へと進路を向けた。

 

メギドラルではアマイモン・サタンら一行と麾下のメギドたちが、落ち延びてきたレジェ・クシオ死守隊のマモンやリヴァイアサン、ルシファー、バールベリトにイヌーンらを救助する形で合流していた。また、アマイモン・コルソンの同盟者としてジニマルも集団に加わる。

アスモデウスもいたものの、特別奮戦した彼女は戦闘のダメージが大きく意識を失っている。リヴァイアサンやルシファーいわく仮死状態であり、魂は失われていないという。アスモデウスの個の強さがなければあり得ない現象である。復活には、ソロモンによる召喚が最も可能性を持っているだろう。

アマイモンとサタンは、ハルマゲドンの危機下において休戦と対ハルマ共闘の協定を結んだ。決死の徹底抗戦に湧く中央のメギドたちを透徹した目で眺めながら、アマイモンはひそかに、決死のその先のことを考えていた。現社会体制や知見の蓄積が失われた後に発生する無知で無垢なメギドは、きっと今以上に「母なる白き妖蛆」の格好の傀儡となるだろう。皮肉なことだと自嘲しながらも、アマイモンはメギドラル社会が勝利し生き延びるためのもうあとひと押しとして、議会の復活を思い描いた。

ハルマの追撃を避けるため、ベルフェゴールの発案で一行は棄戦圏に逃げ込む。フォトンが薄くそれ故に手負いの者たちの生存に不利な棄戦圏は残党狩りをするハルマの捜索において優先順位が低いものと見込んでのことであったが、実際この目論見は当たり、アスモデウス以外のメギドたちは多少の余裕を取り戻していた。

 

偵察に出ていたイポス、ウァレフォル、アモン、ロノウェ、アロケル、プルソンがネガティと共にレジェ・クシオに戻った時には、そこはとうにハルマの手に落ちていた。イポスらもハルマに襲われかけるが、ネガティの軍団長であるゲストレイスによって助けられる。

 

とある場所でハルマを相手に苦戦していたバンジット軍団のトビー軍団長とトメラニアン副団長。そこに遊撃中のメギド72が現れる。通信障害を補完するため斥候的な役割を担っている小型機を破壊することでハルマの勢いを削ぐことができると分析を深めていたメギド72は、戦っていたメギドたちにも助言と援助を与え、反抗戦力を集め再編成することを主張した。合わせてアルマロスらレジェ・クシオ脱出勢や抗戦の中心にいた八魔星のことを尋ねるも、これについての情報は得られなかった。サタナキアはレジェ・クシオ死守隊が敗走後に棄戦圏に身を隠した可能性を提示したが、実のところ、これは全く正鵠を射ていた。

世界の懸かった戦いに高揚してか、皆リジェネレイト後の姿をとるようになっていた。

遊撃を続ける中で、メギド72は次第に苦戦を強いられるようになってゆく。ハルマたちが対策を打ってきたのだ。サタナキアはそれを「対臨界戦術」と名付けた。とてもめんどうくさい。個の勝利を求めるものから種族としての生存か殲滅かを問うものへと、戦争の質がメギドラルにおいて変わってきているのだとブリフォーやサタナキアは分析した。

休憩中召喚を試したソロモンは、ジャミングをすり抜けてアスモデウスの存在を感じ取る。今回に限らず難易度の高い召喚がふいに成功する瞬間は「召喚特異点」と呼ばれることとなった。ジャミングの穴すなわち「召喚特異点」があるということは、メギド72に勝算を感じさせた。

イメージを強化する妄戦ちゃんの力も借りて、再度ソロモンが指輪に力を込める。と、遠く離れた棄戦圏にて、コルソンの見守る中、アスモデウスの体が僅かに動き、そして突如両目を見開いた。深く沈んだ意識の底から、アスモデウスは私を呼んだかと応える。針の穴を通すがごとき召喚により、空にフォトンの道が通る。そこを、フォトンとなったアスモデウスが輝きながら一直線に駆け抜けて行った。召喚成功、更にアスモデウスリジェネレイトである。

 

アルマロスを中心とするレジェ・クシオ先行脱出組は、とある洞窟に潜伏していた。そこに麾下軍団長のゲストレイスが、ネガティとメギド72のイポスたちを見つけ保護したことを報告する。なお、洞窟への退避時には迎撃を請け負うバチクソ撃破団にハルマへの対応を任せ、近場の遺跡を経由する目くらましをしつつ逃げてきたという。バチクソ撃破団についても、ここは幻獣を主な構成員とする軍団であるが、全滅を偽装し脱出してくる手筈としていた。

アルマロスは、ソロモンについて厳しい態度を見せる。「大いなる意思」の護衛に失敗したまま生死も行方も不明である状況下において、もし生きていたとしたら責任が問われる立場であるからだ。仮に生きていたとして、重大な任務に失敗したソロモンに対してメギドラル中から逆風が吹く中、信頼を回復するには途轍もない戦果が必要とされる。

 

#107

アスモデウスの召喚に成功したソロモンらは大まかな方向に検討をつけ、アスモデウスを救助したメギドラル残存勢力との合流を目指すことにする。

 

ペルペトゥムでは、ハルマの布陣を突破しメルクリウスに黒き門を突破させる方法を思案していた。今はペルペトゥムの自警団長を務めているオーセルは、住民を守る立場にある以上表立ってハルマに敵対的な行動は取れないものの、「逃げようとするガープらを止めようとしてオーセルが倒される」筋書きを偽装する形で協力し、ガープの逃亡を助けることになった。

 

ガミジンらはヴァイガルドの工房にいたネビロスを味方に引き入れていた。デカラビアとバフォメットは、予めデカラビアが声をかけていたレラジェ・ザガン・ウヴァル・フルフル・フルカス・アザゼルとファンゲン荒原で合流した。アクィエルも友達に会えるかもしれないと一人ファンゲン荒原に到着していた。

 

シバとサキュバスたちを乗せたメルクリウスはいよいよ走り始める。ファンゲン荒原までの道程はおよそ三日だ。また、相変わらずリリムは目を覚まさない。アガリアレプトはその様子に首を傾げていた。中立を保つため夢見の者たちから行動を制限されているのは正しい推測であるとして、何故メギドラルとハルマニアとの戦争で中立を保たねばならないのか。実は夢見の者の「中立」とは、メギドラルにおける各軍団の間での中立ではなく、もっと違った対立軸における中立なのではないか。とすれば、夢見の者が中立を意識する何者かが、この戦争に一枚噛んでいることになる。

と、そこに突然セーレが現れた。走るメルクリウス身軽に乗り込んできたのだ。いつの間にか追手の騎士団員と仲良くなり、馬で連れてきてもらったらしい。父も製造に関わった飛空艇の稼働に立ち会うことにセーレは興奮する。更に、補給地点の村でフォカロルたちアジト組も合流する。

 

メギドたちはいよいよファンゲン荒原に集まってくる。荒原で立ち尽くしていたアクィエルは、敵対的な行動もなくメルクリウスに歓迎される。

いよいよ襲撃の時である。馬に乗ったガミジンら襲撃隊がメルクリウスに接近し、戦闘が始まる。

 

ハルマたちもまたファンゲン荒原に集まってくる。上空からの攻撃が始まり、現場は騒然とする。

フェニックスらアジト救援隊も馬車でファンゲン荒原に近付いていた。途中でカスピエルと「助っ人」ロキを見つけたため、オリアスが二名を乗せて箒で先行することにする。

メルクリウスの噂を聞いて集まっていたメギドたちーーミノソンとグザファン、またセタンタ・ゲイボルグーーもまた、ハルマへの攻撃に入った。

アスタロトはイイヨエルとしてハルマ軍勢に紛れ込み通信に聞き耳を立てている。

機を伺っていたデカラビアは仲間たちにメルクリウス及びメギドたちの防衛を命ずると、自身もマキーネを操って迎撃を開始した。バフォメットはガミジンたちをメルクリウスに誘い込むことを任務とする。

戦闘の中でバフォメットら一行とガミジン一行は完全に合流する。しかし、ガミジンの疑心はなかなか晴れない。

オリアスとカスピエル、そしてロキがようやくメルクリウスに現れる。ロキの「音楽に乗ると本心を歌う」特性は、疑心に沈んだ襲撃隊を説得するための切り札となる。

ロキの歌唱のため停止したメルクリウスに、ミノソンとグザファンが乗り込む。

ロキが歌った本心は見事襲撃隊に届いた。ガミジンたちは疑心を払い、次々にメルクリウスに乗り込んでゆく。更に、フェニックスらアジト脱出隊の馬車もそこに到着した。

アジト脱出隊の到着、すなわちほぼ全メギドの現着は、しかしハルマたちの総攻撃開始の合図でもあった。カマエルがトラクタービームで回収されそうになる。それを邪魔したのはボティスの銃であった。ビームの出力を一時的に落とし、カマエルはメルクリウスに残ることに成功する。これにより、メルクリウスが攻撃対象となるリスクは減じた。またふとした会話の中で、ボティスは「デミウルゴス」なるメギドへの復讐心が自分の中にさして残っていないことを感じた。

最後に、船から突き落とされたゼパルとフォカロル、そしてアンドラス、キマリス、ベヒモスネフィリム、更にギリギリで王都で合流を迷っていたサタナイルが騎士団の馬で追いつきメルクリウスに乗り込む。取りこぼしのない、完全な再集結である。

ヴァイガルドに残ることを選んだユフィールやプロメテウス、バールゼフォンも、仲間がハルマゲドンを止めてくれることを信じて船影を見送った。

 

空中でハルマが交渉のため近付いてくる。カマエルを回収し、メギドたちを殺すというものである。カマエルは反対するも交渉は決裂し、以後、カマエルの存否に関わらずメルクリウスは攻撃対象となる。

初撃はイイヨエルもといアスタロトが身を挺して受け止める。ダメージ甚大につきアスタロトは機体から排出され、攻撃機は爆発した。次弾を止めたのはエウリノームである。八魔星の圧倒的な戦闘能力により次々とハルマを撃墜してゆく。

困惑する一行の前に、エウリノームの背からマルファス、サレオス、オロバスが飛び降りてくる。エウリノームは助力の条件としてメギドラル帰還のためのメルクリウス同乗を求め、メギド72はそれを了承する。

 

ペルペトゥムでは、ハルマが気絶したオーセルを発見していた。「メギドを誘拐しようと侵入した鎮魂騎士団に襲われ、薬を嗅がされて気を失った。メギドたちはハルマには逆らわないと主張していたが、鎮魂騎士団に連行された」筋書きによるものである。その頃、ガープとニバスは鎮魂騎士団の協力を得て脱獄していた。作戦には凧を使うという。大量の凧を揚げてハルマの目を眩ませるのだ。そして、その凧のうちのひとつに結びつけたゴンドラにガープとニバスが入り、メルクリウスに引っ掛けて回収されるのを待つ。作戦内容は伝書鳥によってメルクリウスに伝わっている。

 

メルクリウスがペルペトゥム上空に差し掛かる。ミノソンが目印付きの凧を見つけ、ガープたちの乗るゴンドラは見事メルクリウスに引き上げられた。また、上空で奮戦するエウリノームも合図(ジズとブエルのお父さんとの呼び声……)に応え船に降りる。デカラビアは王都から貸し与えられたソロモンの指輪を装着し、シバと共にメルクリウス加速のためのフォトンを送り込み始めた。

エウリノームは、誰もが帰る場所を持ち、帰る場所はまた他の誰かが守ってくれる、そんな世界に価値を見出したと語った。

 

メギドラルでは、サタンが生き残りメギドの救助を続けている。彼は本当の敵を見極めるべく意識を研ぎ澄ませていた。

 

ソロモンは夢でリリスに会う。彼女は対立のバランスが崩れ、母なる白き妖蛆が勝ち、夢見の者の中立が成立しなくなると告げた。夢見の者の中立とは、蛆とカトルスとの間の中立であったのだ。そして蛆の勝利の前に、伝えるべきことがあるのでソロモンをエルダーに会わせると言う。

 

#108

シバは、指輪を使ってソロモンを召喚するつもりだという。召喚ジャミングをすり抜けるには、攻撃隊ハルマの配置交代のタイミングーー目に見えるタイミング、すなわち日の出もしくは日の入りーーを狙うのが有望そうだ。

 

ソロモンたちは落ち延びたメギドたちを受け入れるサタンの軍勢を発見する。合流を逸るソロモンを、しかしアスモデウスは諌めた。経緯や真意はどうあれハルマゲドン派であるサタンに対しては慎重であるべきだというのが理由の一つ、そしてより大きい理由として、サタンの軍勢は規模や参加者の名声こそあれ、(議会などの)特段の正当性を持たない私設軍団に過ぎない。そこに合流することは、議会運営メギドや「大いなる意志」の護衛に失敗した責任を、サタン個人による断罪を受け入れるという意思表示に等しい。そしてサタンとしても、他のメギドたちの手前、護衛の失敗の責任を問わずにいられる立場ではない。また加えて、いち私設軍団であるサタンの軍団に参加・賛同を示すことはメギド72の独自性を危うくするリスクがある。よってアスモデウスは、失敗を挽回したと言えるだけの功績を上げるか、あるいは状況が変わるまでは、メギド72/ソロモンの生存をサタンに隠すべきだと主張した。ソロモンもそれに納得し、とはいえ情報収集のため、行動を共にしていたバンジット軍団にスパイを依頼することにした。

遊撃行動を再開したある朝、皆の目の前でソロモンがにわかに姿を消す。シバによる召喚が成功したのだ。

ソロモンは仲間に会えたことに感激し、その向こうにいたシバと手を取り合う。若い二人が並びたち、ファティマの第三の予言が成ったのである。

メルクリウスに乗ったソロモンたちは残してきたメギドラル遠征隊に無事合流を果たす。

ソロモンの夢の中でリリスは蛆の勝利を予言したが、実際のところ、いかにハルマの駆逐とメギドラルの支配を実現するつもりなのか。恐らくその手段はアバドンである。プルトンにとっては、ハルマゲドンのためだと言ってアバドンの収集と起動準備を進めることは容易である。ハルマの侵攻を誘導しメギドたちを心理的・肉体的に打ちのめした後でアバドンによりハルマに大打撃を与えれば、打ちひしがれたメギドラル社会で求心力を発揮し新体制を打ち立てることなどわけないのである。

今後の方向性を全体で打ち合わせ、メギド72とシバらは攻撃隊ハルマの降伏を目指すことにした。まず、どうにかして攻撃隊ハルマに敗北を悟らせる。そこにシバが救援の体で現れ、彼女が指揮を取るヴァイガルド防衛隊に攻撃隊ハルマを勧誘する。メギドラルの逆転勝利が確定している時点でこれをすることにより、メギドラルで玉砕するよりは、反転し攻めてくるメギドをヴァイガルドで迎え撃つほうがハルマニアにとっての利益となる、という計算が成立する。

妄戦ちゃんの能力により、リリムを目覚めさせることもできた。

 

打ち捨てられた攻撃機に乗り込んだカマエルは、思わぬ内容の通信を聞く。数百人規模のヴィータ(恐らくはペクス)が存在しているというのだ。ヴィータへの攻撃を許されていないハルマたちは、ヴィータに紛れたメギドによる攻撃に対して反撃の術を持たない。ベルゼブフによる反攻の開始である。

また棄戦圏に身を寄せるサタン軍勢の前に、プルトンが姿を現した。ハルマへの反撃のため兵器を取りに来たと語るプルトンに、サタンはベルフェゴールの居場所を尋ねる。両者が接触しようとしていることを、トビー軍団長は密かにソロモンに連絡する。

 

メギドの反攻の開始とプルトンのアバドン回収は、ハルマをシバの指揮下に入れ撤退させる作戦の残り時間が少ないことを意味していた。

メギド72は、ベルゼブフによるハルマ撃退の戦いに参加便乗することにする。一部のメギドはメルクリウス防衛のため残り、ソロモンは本隊を指揮する。補助的な動きをする遊撃隊はアスモデウスを中心に組織することにした。カスピエルやメフィストも撹乱のための挑発を行い、実質的な戦闘を純正メギドであるバロールやオレイらに引き継ぐ。また、ソロモンの本隊に参加しない追放メギドは小型機の対処に当たることにする。アンドラスは後方で医療支援を担当し、ダンタリオンは戦場を共にする他の軍団との連絡を行う。サタナキアは後方で統括指揮を担う。

予想通り、サタンの軍勢も戦闘に合流していた。また、数多くのアバドンも戦場を闊歩している。

 

カマエルは拾った攻撃機で出撃し、ハルマを救援しつつシバの女王への帰属を促す。その際にメギドたちへ攻撃を加えることになるが、マッチポンプを攻撃隊ハルマに悟られないためにはやむを得ないとソロモンらも了承している。アバドンの起動と攻撃隊ハルマによる護界憲章の破壊は、圧倒的な戦力のリスクにヴァイガルドが晒されていることを意味しており、ヴァイガルド管理体制のカマエルの介入に正当性を持たせた。

しかし攻撃隊ハルマは撤退に同意せず、敗北はメギドラル遠征の失敗に直結しないと言う。真の目的はメギドラルの殲滅でなく、未知の「第四界」(蛆の精神世界のこと?)からの侵略すなわち(及び?)「大いなるバビロン」についての調査なのだった。そのために、ハルマニアへの帰還ルートも確保されている。

真の目的を知ったカマエルは、改めて撤退を促す。メギドラルにおける情報の在り方とは、記録し共有するものではなく、個の価値を維持するため知識として限られた者の中に留められるものだからだ。レジェ・クシオの調査は恐らく徒労であり、またメギドを殲滅すれば情報は永遠に失われる。よってハルマは撤退し、メギドを「生かさず殺さず」ヴァイガルドを挟んだ膠着状態を維持しながら、改めて情報を探し集めるのを待つべきだと説得した。メギドラル攻撃隊は納得し、メギドラルからの撤退とシバの女王への帰属を決定した。

獅子奮迅のカマエルを目にしたメギド72は、それとは知らず接近する。メギドラルにおける地位回復のための戦果に飢えるメギド72にとって、目立つ個体の撃破は魅力的であったためだ。多くのメギドそしてハルマの眼前で戦いを避ければ、マッチポンプは明らかだ。両者は覚悟を決め、全力の戦いになだれ込んだ。

 

ハルマの去りつつある戦場で、一際大きな声をベルゼブフが上げる。彼は「大いなる意志」を持っていると語った。破壊されたそれとは別の、密かに複製されたもう一つの「大いなる意志」である。「大いなる意志」が二つあったことに衝撃を受けるソロモン。しかし、全てはこの瞬間のためだったのである。もう一つの「大いなる意志」を確保した状態でレジェ・クシオを滅ぼしそこにある「大いなる意志」を破壊することで、「もう一つ」を持つ自分こそが唯一の支配正統性持つことができるのだ。

エルダー主導であったアルス・ノヴァ前体制を滅ぼし打ち立てられたマグナ・レギオ体制。それを滅ぼし今にも打ち立てられんとしている「蛆」支配。遡ればこの戦いは、「最初のメギド」にしてエルダーであるアルス・ノヴァと蛆との間に始まっているのである。

サタンとベルゼブフがついに邂逅する。ベルゼブフはサタンを「新世界」すなわち大いなるバビロン後の世界に誘うも、サタンは回答を避ける。彼は密かにベルゼブフが本来の彼ではないことを見抜いていた。サタンがかまをかけた「猫」の話がそれを証明していた。サタンは今のベルゼブフをして「異物が混ざっている」と表現した。

プルトンもまた旧知のルシファーを「新体制」へと誘う。ルシファーはそれに答えず、逆にプルトンへと彼女が単身無防備にサタンの軍勢の前に現れた理由を問うた。無言のプルトンに、それは社会への試し行動であり、怒り狂ったメギドたちに殺されなかったことにより行動のための力を得たのだろうとルシファーは指摘する。「試し行動」を繰り返すプルトンを、ルシファーは「すべきことを終え空っぽの体を無理に生かそうとしている」と表現した。プルトンはそれに、愛を知りそして失った時、「あの裏切り」があった時自分の目的もまた失われ、今は恨みそして最後の結末を見たいという思いのみにて生き永らえていると答えた。

 

ソロモンはマモンに、自分はサタンとは合流せず独自の方策を探ると告げた。マモンはそれを受け入れて任務失敗の責任追及を快く保留し、イヌーンにソロモン同行を命じた。ソロモンはメルクリウスを起動させ、数々の謎の中に勝算を見出すべく、「脳消し大陸」へとエルダー探しの旅に出ることにする。また興味と情報交換のため、エウリノームも同行することになった。

一方その頃、グリマルキンは「猫戦争」のため単身メギドラルを訪れていた。

自分用メギドメインストあらすじ(9章)

※ネタバレ

※独自の要約であるため正確さの保証なし

 

#85

アジト残留組:グラシャラボラス、グリマルキン、ゼパル、フォカロル、フォラス他

ヴァイガルド残留(非アジト、自宅等)組:?

ペルペトゥム組:?

メギドラル遠征本隊:ソロモン、アスタロト、アミー、アムドゥスキアス、アロケル、アンドラス、イヌーン、イポス、ウェパル、エリゴス、カスピエル、ザガン、サタナキア、サブナック、サルガタナス、サレオス、シトリー、シャックス、セーレ、ナベリウス、パイモン、バエル、バラム、バルバトス、ハルファス、ヒュトギン、フェニックス、ブニ、ブネ、フリアエ、フルカス、プルソン、ベリト、ベルフェゴール、ボティスマモン、マルコシアス、マルファス、ムルムル、メフィスト、モラクス、ラウムリヴァイアサン、レラジェ、ロノウェ

メギドラル遠征後発隊:アスモデウス、アスラフィル、アバラム、アラストール、ウァサゴ、ウァラク、ウァレフォル、オセ、キマリス、ジズ、ネフィリム、プルフラス、ベバル、マルバス他

その他:アモン(後続隊から単身離れ、レジェ・クシオで懲罰局本部の場所を聞き込み)、フォルネウス(サタンらに同行、召喚成功すればメギド72復帰の予定)

 

助けを請われたアモンは、ルシファーの手を引いてその場から逃走するも、ルシファーの意思喪失に気付き、ガギゾンも回収することにする。追手を欺くことも兼ねてルシファーを隠れ家に隠し、ガギゾン回収のために戻ったが、そこでアモンはフライナイツのメギドの奇襲を受ける。戻ることを読まれていたのだ。

辛うじて相手のメギドを殺し難を逃れたアモンとガギゾンは、隠れ家であるウァサゴの旧邸に戻る。

懲罰局は、長らく偽物のルシファーを戴いてきたのだとガギゾンは話した。

フライナイツ下部組織の包囲を受けたマモンは合図の音楽を奏で、オリエンスの援助を受けてガギゾン・ルシファー共々

ルシファーはアモンの奏でた不器用な音楽に微かな反応を示した。

 

ソロモン、ブネ、ウェパル、バラムは、マモンから離れ情報開示について相談をしていた。

メギド72の懲罰局襲撃・アンチャーター奪取計画を共有するか否か。マモンvsフライナイツ≒懲罰局の対立構図があるとはいえ、表向きには各所は議会を中心に協調している。社会運営を重視するマモンからすれば、懲罰局襲撃という秩序の破壊は肯定しにくい。また、アンチャーターをヴァイガルドに持ち出しメギドの手の届かない場所に置くことを、メギドラル社会の損失と考えるかもしれない。一方でメギド72としては、ハルマの手前アンチャーター確保という目に見える成果を示す必要がある。アンチャーターをマモンないしサタン預けとすることを妥協点にはできない。

しかし大勢を考えれば、追放の技術を保有することでマモンと権力を分ける懲罰局を追い落とすことは、マモンにとってもメギドラルでの権力抗争で一歩先んずる効果を生む。内々には黙認を得られる可能性は高い。

懲罰局襲撃が実行に移されれば、結局はマモンにも知られることになる。その段階まで情報を伏せていては信頼関係にも悪影響を及ぼす。

最適のタイミングで情報を共有する必要がある。

結果として、マモンには懲罰局襲撃は伝えるがアンチャーター奪取の目的は伏せる・イヌーンには目的も話し秘匿への協力を仰ぐ・時期はいずれも未定だが、フライナイツから戦闘を仕掛けられたらその時に話すこととなった。

道中、一行はフライナイツ団長・エウリノームの接触を受ける。予想に反して、その接触は攻撃ではなかった。

そこに現れたプルソンに、お前は弱いとエウリノームは言い放つ。転生により変質した彼は、もはやプルソンであってプルソンではないとも。そしてまた、エウリノームはフライナイツの思想を宣言した。彼らは個を押し殺し、組織の理念に貢献することを是とするのだという。(従来型の大企業フライナイツ、企業内ベンチャーのメギド72?)

エウリノームはメギド72から、かつての顔馴染みであるアムドゥスキアスを引き抜きに来たという。アムドゥスキアスがそれを断ると落ち込んだが、彼女に記憶がないと分かるとあっさりと引き下がった。バルバトスは、アムドゥスキアスの記憶の有無を確かめることも接触の目的の一つだったのだろうと推測する。

続いて、エウリノームはプルソンと二人で話すことを所望した。フライナイツを見返そうとするのはメギドらしからぬ発想だと前置いた上で、しかしプルソンが見返すための戦争を仕掛けてくることを期待しているとエウリノームは言う。純粋ではなく、様々な二元論のどちらかに割り切ることのできない存在として追放メギドを見ているようなことを話し、彼らがエウリノームにとって無視できないほどの力を持った時、フライナイツは彼らを潰しに行くだろう。その戦争の中で何かを見出すことを楽しみにしているのだと語った。

進軍を続ける一行は、「ケーダシン」というメギドの配下の幻獣を倒してしまう。ケーダシン軍団と「ウェス技研」軍団は「センチュート戦争」を行っており、この戦争は参加自由であることで有名であった。そして参加自由とはすなわち、両者の軍門の幻獣に手を出した瞬間、戦争に参加したと見なされてしまうのだ。メギド72はセンチュート戦争に巻き込まれた。

 

#86

後続隊では、戻りの遅いアモンにアスモデウスが苛立っていた。なお、アスモデウスは懲罰局襲撃について、アンチャーター奪取も一旦の目的とは認識しつつ、八魔星という同盟の弱体化こそを主眼に置いている。

 

旧ウァサゴ邸からダゴン邸に移ったアモン、ガギゾン、ルシファー、ダゴン、オリエンス。メギド72側の3人はガギゾンから懲罰局本部の場所を聞かされていた。それは「メギドラルの大盾」と言われる特殊な地形の裏に存在する。その周囲は「フォトン解放区」と呼ばれ、日夜数々の戦争が起こるメギドたちの「楽園」である。そこで誰かが行方をくらましたところで、戦争の中で死んだと思われるだけというわけだ。なお「大盾」とは激しい戦争の影響で空から落ちた浮遊島が地面に斜めに突き刺さったものである。

オリエンスとダゴンは自軍を現地に向かわせることを請け合い、またアモンは途中までガギゾンとルシファーに同行しつつ、後続隊陣地に帰投して情報を伝えることになった。

ガキゾンの目的は、意思を失ったベルゼブフの治療である。その為にエルダーにまつわる情報をルシファーから引き出そうとしているが、何故ならばルシファーの意志喪失の原因として、ガギゾンは彼女がエルダーに成り損なったのだと推測していた。そしてメギドラルのソロモン王の召喚により、ルシファーを元に戻せないか考えているのだと言う。

 

プルソンは自身の力不足に思い悩んでいた。エウリノームに求められなかった・認められていなかったこと、中途半端だと言われたことが尾を引いているのだ。エルデとしての自分の意識が不要なのではないかとさえ思い詰めてゆく。アムドゥスキアスに気遣われたプルソンは、「もう一人の自分」ーー自分では意識をしないがきっと存在するメギドのプルソンを魂の牢獄から救いたい、「俺は、俺になりたい」と、そしてソロモンの元でメギドの力を振るい、何らかの成果を上げた時、誇りと共にそれが達されると思っていたのだと話した。

アムドゥスキアスも、プルソンの言葉を借りて「私は、私になりたい」と応える。メギドの記憶が無く自分が何者であるのか分からず、自分の価値もまた感じられなかった自分にとって、召喚され力を必要とされたことは、魂の底にいて自分でも知らなかったもう一人の自分をソロモンが迎えに来てくれたように、そして自分の中に確かに価値があることを教えられたように感じられたのだと言う。

 

センチュート戦争とは、幻獣調教と他軍団への提供を専門とするケーダシン・ウェス技研による戦争であり、ハルマゲドンに向けた採用審査と調教のための模擬戦闘を目的とした道化戦争である。それに巻き込まれはしたものの、逃げれば深追いする理由も向こうには無いと頭を切り替える一行。

しかし、予想に反して幻獣たちの攻撃は激しさを増してゆく。違和感を拭いきれない一行の前に、ミュトスが現れる。伝言獣はケーダシンの名を名乗り、ソロモン王と軍団メギド72の名をはっきり述べた上で「戦争から逃げるな、自分と戦え」と宣戦布告した。

ケーダシンを降したソロモンに、本当の事情が説明される。彼は採用競争から降りたがっていた。ヴァイガルド侵攻用の幻獣の調教方法が不本意だったためだ。ヴァイガルドでより多くのヴィータを襲うために、ヴィータ体メギドの肉を食らい、味を覚えた幻獣が侵攻用に選ばれることになっていた。

ケーダシンの幻獣がヴィータの肉の味を覚えていたということは、ソロモンにとってあまりにも衝撃的だった。ソロモンは故郷の村を幻獣に滅ぼされている。それが、幻獣がヴィータの肉の味を覚えていたからだとしたら、全ての悲しみの始まりはケーダシンなのだ。

ケーダシンはセンチュート戦争から降りることを望んでいた。そのためソロモン王と交戦し敗北することで、予定調和のセンチュート戦争を勝手に放棄し、個人的な戦争に傾注したという「落ち度」を作ろうとした。そして、「個人的な戦争」を演ずるのにソロモン王はまたとない相手であった。何故ならば、ケーダシンの幻獣たちはかつてのヴァイガルド侵略に投入され、ソロモン王らによって殲滅されているからだ。傍から見て、自軍の幻獣を殺された恨みを晴らすというのは動機として申し分ない。「落ち度」に加えて、特定の軍団から目の敵にされるという「しがらみ」を持つこともできる。

かつまた、ヴィータの肉を食うことが不本意であることを証明するため、敢えて幻獣たちを、けしかける形でソロモン麾下の軍団の刃の下に差し出した。

ヴィータ体を取るメギドにも被害の及ぶリスクがある、とマモンは声を荒げる。しかし、だからこそこの採用活動は極秘の内に行われていたのだとケーダシンは語る。そして、その支持をした者が異世界侵攻総指揮官・プルトンであることも明らかにした。

一段落したところで、プルソンが単独行動を申し出る。メギドの頃の自分と今の自分との間に連続した自己同一性が無いため、自分探しと鍛錬の旅に出たいと言うのだ。

 

#87

一人武器を振るって鍛錬に励むプルソン。自身の内面との対話に成功し、その高揚感から高らかに快哉を叫ぶ。と、その声に反応したメギドに絡まれてしまう。あえなく敗北し傷を負ったプルソンは、気を失いながら再び自身の中のプルソンと対話をする。勝つということは選択肢を得るということであり、選択肢の間で悩み考えることは賢さという強さになる。そう話す「エルデ」に、「プルソン」は言う。疑問を持ち考え答えを出せるということが「エルデ」によって「俺」の得た強さなのだと。ヴィータとしての自分が「俺」の強さの一部になっていると気付き、「エルデ」は感銘を受ける。「エルデ」と「プルソン」は自覚なきまま十分に一つになっていたのだ。

「俺は俺だ」と自信を得たプルソンは、最後の試練としてフライナイツを倒すことを心に決めた。

 

迎えに来た、という誰かの声が聞こえて足を止めるアムドゥスキアス。周囲の問いかけにも反応は薄く、「ここを知っている、自分はここで生まれた」と言って動こうとしない。その奇妙な様子にソロモンは進軍を止める。と、そこに謎のメギドーー魂無き黒き半身ーーが現れた。それは何かを探しているような様子だった。

アムドゥスキアスはもともと、サタン派の研究施設で造られたメギドだった。幻獣の身体を奪わなければ発生できないという矛盾を克服するために、カトルスから送り出される魂を受け取る肉体を造る実験の成果が彼女だった。しかし、彼女がメギドらしい闘争心や目的意識を示すことはなかった。そしてのちほど造られた、闘争心を埋め込まれた「半身」との合体も、アムドゥスキアスは強く拒否した。結果として実験は失敗と判断された。半ば捨て置かれていたところをフライナイツが奪い、エウリノームの思いつきによって追放されることになった。ヴィータとして自我が上書きされることで、今度こそ拒否することなく半身と合体することを期待したのだ。

 

「思い出したら私は私でなくなってしまう」そう怯えながらも記憶の奔流は止まらない。アムドゥスキアスの記憶の中で、エウリノームは「迎えに来た、自分のために戦ってくれ」と言う。はじめに価値を見出してくれたのはエウリノームだったと気付き、アムドゥスキアスは慕わしげにフライナイツ団長の名を呼んだ。

 

襲いかかってくる「魂無き黒き半身」との戦闘のさなか、様子のおかしいアムドゥスキアスが「半身」に駆け寄り、そして合体を果たした。メギド72の一員であるアムドゥスキアスの意思を失ったそれは、またたく間に蹂躙を始めた。ソロモンはプルソンを召喚するが、その時には既に、軍団メギド72は半壊滅状態に追い込まれていた。

「俺は俺になった、でも俺は君の知る俺のままだ、だから君も君のままでいいんだ」そう語りかけるプルソン。アムドゥスキアスは淡い反応を示しつつも、攻撃の手を緩めるには至らない。その一撃により、プルソンはあえなく打ち倒されてしまう。

命の灯火も消えかけ、薄れゆく意識の中でプルソンは思う。強さに本質はなく、意味ある生を生きようと思い続けることこそが価値である。そして、分断されているように感じられたとしても、ちゃんと過去の続きに今そして未来がある。そのことをアムドゥスキアスに伝えたかった。

限界の意識の中で、必死のソロモンが指輪に力を込める。それはプルソンと呼び合い、彼に力を与えた。リジェネレイトだ。力を取り戻したプルソンの叫び声が、果たしてアムドゥスキアスに届いたのだろうか、おもむろに彼女は動きを止め、無言でその場を去って行った。

 

後続隊の陣地に戻る途中、アモンはアスモデウスのメギド体によく似た幻獣の群れを見つける。その群れは後続隊陣地に向かっているように見えた。警告のため足を早めるも、幻獣の群れには既に大きく先行されてしまっている。

その幻獣は、アスモデウスの追放後残された肉体を複製した物であった。

激闘の末、アスモデウスらは七体の「複製」を駆逐する。しかし安心したその瞬間、アスモデウスは背後からの一刃に倒れ伏す。それはベルゼブフであった。

 

#88 #89

複製アスモデウスとの戦闘で受けた大打撃に加え、アスモデウスを殺され後続隊が混乱したところに、アモンが到着する。同道していたガギゾンとルシファーも一緒だ。ガギゾンは激昂するメギド72を収めるため魂のランタンを提供する。そしてルシファーをアモンらに預けると言い残すとベルゼブフに駆け寄り、フライナイツから隠すためどこかへ消えた。

 

アロケル、プルソン、ロノウェもまた別行動を取っていた。再襲撃を警戒し、アムドゥスキアスを密かに偵察している。彼女はフライナイツのイレイザーとして、淡々と標的を抹殺していた。

標的となったドコカーノ軍団が蹂躙されるのを見るに見かねたプルソンは、もどかしさに体を震わせる。そこでシャミハザの助言もあり、プルソンが救助を兼ねて突撃することに決まった。一度アムドゥスキアスと対峙し生き残ったプルソンならば、ドコカーノ軍団よりは戦い得る。そして彼一人の突撃ならば本隊の立ち直りを察知されるリスクは低く、観察によりバリア突破のヒントを得られる可能性は高くなるわけだ。

何度めかの突撃ののち、アムドゥスキアスがヴィータ体に変身しプルソンに対話をもちかける。彼女は、プルソンらが想像していた以上に正気を保ち、そして彼女自身の意志でイレーザーの活動を行っているように見えた。

だが、彼女の内面では「ソーラ」の意識が泣き叫んでいた。メギドのアムドゥスキアスはそれを無視していたのだ。枯れ果てた泉で魂無き黒き半身を目にし、エウリノームに求められたことを思い出した頃から、メギドの意識が彼女の中で優勢になっていたのだ。メギドのアムドゥスキアスの意識は、自分こそが「本当の私」だと言う。

 

負傷者を抱える本隊では、ヴァイガルドから召喚されたユフィールも加わって治療を進めている。ソロモンはユフィール、オレイの召喚や指輪の召喚による肉体の再構築を用いた治療の補佐を行ったのち、囮部隊の支援のために陣地を発った。

フライナイツによるさらなる攻撃も警戒する必要があった。そのためブネ、バルバトス、ベルフェゴール、イヌーン、ザガン、そしてソロモンに扮したオレイが囮となって少人数行動を取り、負傷した仲間たちから追手を引き離していた。案の定、彼らにイレイザーのマセタンが迫る。しかし危ういところで本物のソロモン、そしてカルコスとパイモンが到着し、マセタンを倒すことに成功した。

 

マモンは、フリアエを伴にしレジェ・クシオに先に戻ることを提案する。八魔星のマモンであれば休戦季と議会招集の宣言をできるからだ。議会を放置するべきではないことに加え、休戦季が始まればメギド72も軍団の立て直しと回復に専念できる。

また、ベルフェゴールとリヴァイアサンはウェパルをはじめとした負傷の度合いの大きい者を連れてアジトへ帰還することになった。

そして計画全体も見直しを行い、後続隊と本隊とで合流してから懲罰局襲撃を目指すことにした。アムドゥスキアスとの戦いで出た脱落者分の戦力の補充が一つの理由、そしてもう一つの理由は、本隊がフライナイツと敵対してしまったことにより、フライナイツと繋がる懲罰局を標的にする後続隊と、同一の存在を相手取ることになったことである。一行は合流のため引き返し、後続隊の野営地方面を目指すことにした。最も難しそうなアムドゥスキアスへの対処は、それらすべての後……のつもりだった。

休憩地での夜、ソロモンはリリムの計らいにより夢の中でシバと語り合い、心身の健康を取り戻した。

後続隊方面を目指すには、やむなくセンチュート戦争圏を通ることになる。ウェス技研の幻獣を警戒しながら情報共有のため後続隊からウァサゴを呼び出したソロモンらは、隊の大打撃とアスモデウスの死を知り衝撃を受ける。と、近くで戦闘の気配がする。偵察チームもまた、アムドゥスキアスをセンチュート戦争の幻獣にぶつけようと同じ方面に向かっていたのだ。結果として、偶然にも本隊と遭遇してしまったというわけである。成り行きのままにアムドゥスキアスと戦うことになるメギド72。ドコカーノ軍団の加勢も得、怒涛の連続攻撃の末に、ようやくアムドゥスキアス攻略の糸口を見付けた。バリアを押し込み続けると、アムドゥスキアスは自分を傷つけないようバリアを消すらしいのだ。

 

#90

「音楽を、奏でる者たちだ」

召喚したアモン曰く、近くで偶然アムドゥスキアスを見かけたと言う。ソロモンたちは彼女に挑むことに決めた。その勝ち筋は協奏だ。

サタナイル、グシオン、ベバル、アバラム、ジズ、クロケル、アスラフィルを後続隊やヴァイガルドから召喚し、陣容を整える。

演奏が始まる。プルソンが前に出る。そして問う。ソーラの意識はアムドゥスキアスのために、自らを消し去ることを望んでいるのではないのか。

ただこの世に存在しているだけで自分を承認され尊重されたならいいのに、それは叶わない。かつての追放前のアムドゥスキアスは、そのことに苦しんでいた。周囲は自分に闘争を求め、それでも自分は戦争をしたくなくて、だから結果としてかつてのアムドゥスキアスは意思がないかのようにぼんやり過ごすしかなかった。しかし今は、埋め込まれたものとはいえ自らの中から湧き出る闘争心により、自分の意思でイレーザーとして戦うことができている。エウリノームに認められる振る舞いができているのだ。誰かに認められるように生きたいという望みを理解し共有するソーラは、イレーザーのアムドゥスキアスを殺すことはできない。だから消え去ろうとしているのではないか。

それでも本当は、ソーラはヴァイガルドに帰ることを望んでいるのではないか。魂が受け入れられた場所だから。

そして最後にプルソンは呼びかけた。俺は、俺たちの仲間だったアムドゥスキアスと、自分たちを構成する記憶のたくさんあるヴァイガルドに帰りたい。

イレーザーのアムドゥスキアスは、内面に向かって戦う意志を示す。ソーラの意識の持つ豊かな世界に対して、自分の意識がどれほど脆弱であろうとも、私が私であり続けるために抗うのだと。そしてそのために、メギドとじて全力で戦争をするのだと。

メギド72に敗れたイレーザーのアムドゥスキアスは、自分を信じて生きられたことに満足し消えた。ソロモンは彼女の最後の願いーーもう一人のアムドゥスキアスが生まれてくることを望んでやってほしいーーを受けて、その魂を召喚した。

内面世界でソーラとアムドゥスキアスは最後の対話をする。アムドゥスキアスは言う。自分の一部が死ぬのも、それによってまた「何かが欠けている」自分に戻るのも怖いだろう。それでもきっと、生きるものは皆何かが欠けている。欠け歪んでいるからこそ、本来同じ存在であるはずの自分たちは完全に一つにはならなかった。そして欠けや歪みを埋めるために、生きる者たちは皆人生の中で様々な記憶を集めるのだろう。満足していないからこそ皆生きるのだ。

ソーラは、自分がアムドゥスキアスとして生きることを望み、アムドゥスキアスは頷いた。そして、「私を私として認めてくれた」プルソンへの礼を伝えるよう望み、とうとう消え去った。

 

#91

皆歪みを持って生まれてくる、イレーザーのアムドゥスキアスが消える直前に言った言葉は、ソロモンの中に世界を変える勝算をもたらした。

と、急に辺りに轟音が響く。砲撃だ。エウリノームとバールベリト、フライナイツ正副団長による攻撃である。

必死で逃げるうちに、一行は半ば偶然に、後続隊の残りのメンバーーーウァラク、プルフラス、マルバス、アラストール、キマリス、そしてルシファーーーと合流を果たす。メギドラル遠征隊再集結である。

また砲撃を撹乱する作戦も上手く運び、地下洞窟に逃げ込むことができた。しかし砲撃戦の土壇場で、魂のランタンが壊れアスモデウスの魂が放たれてしまう。魂は近くにいたキノコ型幻獣に憑依した。

 

砲撃を一段落させ、エウリノームとバールベリトは撤収に入る。休戦季までにできるだけ多くの不穏分子を砲によって殲滅する。砲は最終的には一部のみ持ち帰り、残りは破壊の上で現場に投棄する。砲の使用はケーダシン幻獣軍団がしたことにし、フライナイツがこの戦術を使ったことが社会に知られないようにする。ケーダシンは乱暴な戦術でセンチュート戦争を無用に拡大したことにしつつ、密かに抹殺する。それがエウリノームの書いた筋書きである。

 

#92

アスモデウスの声を聞いたというソロモンに、サタナキアが仮説を披露する。曰く、メギドの本質は「魂」という「目的意識や固有の信念といった情報の保持形態、すなわち意思」である。そして肉体とは、Me自己の魂を観測するための器官に過ぎない。「遠い情景」とは自分自信を観測した原初の光景である。そして魂の情報が脳という器官に投影されて具体的な思考を形作ったものが「個」である。ここにおいて肉体は「個」の形成のための最も一般的なプロセスであるが、必ずしも(幻獣の)肉体でなくても構わない。抽象的な「魂」を「個」という具体的な思考活動体に落とし込めることがメギド発生の要件である。魂が存在する限り、メギドは死なない。

アスモデウスは凄まじく強靭な意思を持つメギドでる。そのため魂だけになってもすぐに蒸発し消えることはない。アスモデウスは肉体を失ってなお「生きている」のだ。ただし、キノコの体に入り込んでしまった今は威容に欠けるため、軍団の者たちの前に姿を見せることを嫌っている。

アスモデウスはソロモンに耳打ちをし、リリムの能力を使ってルシファーの夢へと潜入させた。そこでは、大罪同盟時代の記憶が繰り広げられていた。場面はアスモデウスがヴァイガルド遠征に出ようとするところだ。ミカエルから、ヴィータうしの戦争を収める助力を乞う手紙が届いたのだという。

遠征は成功したが、奇妙な違和感も残った。ミカエルは、はじめに手紙を出してきたのはメギド側だと言うのだ。更には、アスモデウスの不在中唐突に統一議会も開かれ、それを契機にーーフォトン不足にも関わらずーーハルマゲドン待望の機運が醸成されていた。しかし、大罪同盟の面々は誰も休戦季の宣言をしていないという。大罪の盟主アスモデウスをメギドラルから引き離し、その間に開いた統一議会で何らかの思想をメギドたちに植え付ける。これらのことを企んだ「敵」がいる、それも大罪同盟内部に。アスモデウスはそう推理した。警戒心を顕にしたアスモデウスははじめにサタンを、次いでベルゼブフを大罪同盟から除名する。サタン除名は裏切り者に揺さぶりをかけるための狂言だが、ベルゼブフのことは裏切り者だと確信してのことだった。しかしこの時、既にベルゼブフは母なる白き妖蛆による精神侵略を受けていた。そしてサタンから引き離されたことで心の支えを失い、完全な支配を許してしまうことになる。実際のところ、アスモデウス抜きの統一議会を機にサタンがヴィータ体を常用するようになった時点で蛆の根回しは完了していた。そしてサタンとベルゼブフとが特別な共感性を育み、遂にはサタンの除名によりベルゼブフが孤立した時点で、アスモデウスの敗北は決していたのだ。

大罪同盟内部に裏切り者がいると考え警戒心を顕にするアスモデウスに対し、ルシファーは敵はメギドラル社会の「外」にいると直感していた。

いよいよアスモデウスは孤立し、ハルマゲドンの機運は高まり、ベリアルは追放され、大罪同盟の分裂は決定的になってゆく。リヴァイアサンやベルフェゴールは同盟そしてメギドラルの中央社会に背を向けそれぞれに去る。「敵」の存在を察知していたルシファー、自らの受け継いだ秘密故に「蛆」の知識も持っていたマモンは、自分たちの敗北を認めざるを得なかった。アスモデウスはサタン・ベルフェゴールの二人との戦争に敗れ、その頃には既に懲罰局を築いていたルシファーの主導により追放刑に処されることとなった。実際にはアスモデウスの魂をヴァイガルドに避難させ救うための措置ではあったが、その内実を知るのはルシファーとマモンだけであった。

そしていつか遠い未来に勝算が実を結ぶことをルシファーは願い、現実に静かに抗うのだった。

夢の中では他にもいくつかの情報も得られた。例えば、プルトンは元夢見の者であり、そのため議会に参加できない。あるいは、アルス・ノヴァ体制を主導していたのはエルダーであると噂されているが、実際のところはルシファーたちすら知らない。そして前体制関係者によって、「アレ」と呼ばれる統一的なメギドの社会意思が密かに持ち出され保管されているかもしれなちこと。

 

夢の旅から醒めたソロモンは、かつては信頼できる仲間を持っていたアスモデウスが、しかし昔も今も一人で全てを行おうとすることを嘆き憤る。それにアスモデウスは、過去とは白く、強い光なのだと語った。その光は眩しく、今の自分を霞ませてゆく。だから、過去は殺さねばならない。生きていくために、過去に縋らないために、過去を否定することこそ、常に「個」もして生き続ける方法なのだ。しかし、最後にアスモデウスは認める。ソロモンの言う通り、独自に全てを解決しようとした結果、正解に近付いていたルシファーをも疑ったことで、敗北は決定的になったのだ。

 

洞窟から脱出した一行の前に、とうとうキノコデウスが姿を現す。一同はひとときの和やかな笑いに包まれた。

 

#93

ヴァイガルド残留組:アンドレアルフス、ヴィネ、オロバス、グレモリーグラシャラボラス、グリマルキン、ゼパル、デカラビア、ニスロク、フォカロル、フォラス、フルーレティ他

アジト帰還組:ベルフェゴール、リヴァイアサン、ウェパル、カスヒエル、マルコシアス、モラクス他

ペルペトゥム組:?

メギドラル遠征本隊:ソロモン、アスモデウス(キノコ)、アスラフィル、アバラム、アミー、アムドゥスキアス、アモン、アラストール、アロケル、アンドラス、イヌーン、イポス、ウァサゴ、ウァラク、ウァレフォル、オセ、オレイ、キマリス、グシオン、クロケル、サタナイル、サタナキア、ジズ、ナベリウス、ネフィリムパイモン、バティン、バラム、バルバトス、ハルファス、ブネ、プルソン、プルフラス、ベバル、マルバス、メフィストラウム、レラジェ、ロノウェ(※アスタロト、エリゴス、ザガン、サブナック、サルガタナス、サレオス、シトリー、シャックス、セーレ、バエル、フェニックス、ブニ、フルカス、ベリト、ボティス、マルファス、ムルムルは遠征隊か帰還組か不明)

その他:オリエンス、ダゴン(独自に自軍を率いて懲罰局本部付近に布陣)、ヒュトギン、フリアエ、マモン(議会開催のためレジェ・クシオに先行)、フォルネウス(サタンらに同行、召喚成功すればメギド72復帰の予定)

 

ドコカーノ軍団はじめ、いくつもの軍団が砲撃により壊滅されてゆく。そんな中ケーダシン幻獣軍団から共闘の申し入れがあり、メギド72はフライナイツ打倒を目指してそれを受け入れる。

砲撃の中、チームを分けて囮となり敵の目をくらますメギド72。作戦の肝はケーダシンだ。幻獣ならば敵の監視の目を掻い潜れることから、ケーダシン配下の幻獣が砲撃拠点探査の役を負っていた。ケーダシンのミュトスの合図をきっかけに、見事ソロモンは砲撃幻獣を撃破する。

しかし残念ながら、ケーダシン自身はイレーザーに密かに転身していたセンチュートーーあるいはオーシェ、発生したばかりの頃のプルソンにメギドラルのことを教えたメギドーーの手により暗殺されてしまっていた。

戦闘後の砲撃拠点にあったのは砲の残骸ばかりで、メギドの姿は見えない。つまり砲撃の主体がフライナイツであったことを示す証拠がないのだ。議会でフライナイツの暴虐を示しその地位を追い落とす計画はたち消えた。しかしアスモデウスは今回の戦争を評価し、良い勢いを得たと言った。

 

#94

懲罰局付近に布陣していたはずのダゴンとオリエンスは、懲罰局に捕らえられ拷問にかけられていた。特殊な微細幻獣を用いた拷問により、二人は既にヴィータ体の姿も、正常な思考を保つこともできなくなっていた。

 

本物の、意思を失った状態のルシファーを懲罰局から連れ出したのはガギゾンだが、それ自体は許可を得てのことだった。ベルゼブフに会わせることで、ベルゼブフの病状の回復を試みる実験の予定だったのだ。しかし、アスモデウスがメギドラルに訪れていることを耳に入れると、ベルゼブフは突如単身飛び出してしまう。実験は中止の判断がなされたがガギゾンは一人それに反対し、ルシファーを連れたままベルゼブフの後を追った。

ベルゼブフはメギド72後続隊に接触してアスモデウスを殺し、駆けつけたガギゾンはルシファーをメギド72に預けるとベルゼブフと共に去ったのである。

その後ガギゾンは肉体労働に身を窶し、僅かな日フォトンを得てはベルゼブフに届ける暮らしをしていた。しかし、ベルゼブフはメギドラルに実体を得た母なる白き妖蛆のコンタクトを受ける。蛆はこれまでのメギドたちの間接支配という「やり方を変え」、メギドラルの直接支配に乗り出すと言った。

フライナイツは行方をくらましたままのベルゼブフの捜索に力を入れていた。

 

一方、メギド72は隊をA〜Cに分け作戦を進めていた。

A隊:ソロモン、アスモデウス(キノコ)、パイモン、バルバトス

A隊はとある研究所を訪れていた。そこにはアスモデウスのメギド体の複製が保管されているはずだったが、戦闘と破壊の跡があるばかりで目的のものは見当たらない。資料調査を待つ間に、ソロモンはアジトからフルーレティを召喚することにする。自分たちの戦争の記録と取材のため、少しでも客観的な記録をこの世に残すためである。

研究所に複製アスモデウスはいなかったが、残された記録から、脱走しそのまま野生化した個体が存在することが分かった。その利用を一行は決める。

荒野でノラモデウスを見つけると、キノコデウスは自らそれに食われに飛び出して行った。ソロモンたちはキノコデウスを食ったノラモデウスを倒し、その肉体が崩壊する直前にアスモデウスを召喚する。賭けは見事に成功し、内側から複製メギド体を乗っ取りそして再構築したアスモデウスがその場に復活した。

アスモデウスは残り四体のノラモデウスを力ずくで従わせ戦力に加えると言い、ソロモンには自分の代わりにリヴァイアサンを頼るよう告げると、パイモンを伴に一時の別行動を決めた。

 

C隊:サタナキア、グシオン、クロケル他

一部のメギドはC隊となり、アジトに帰還していた。予定外の召喚に応じた者を帰しつつ、情報共有と議論を行うための帰還である。

 

B隊:アミー、アムドゥスキアス、アモン、アラストール、アロケル、アンドラス、イポス、ウァサゴ、ウァレフォル、オセ、オレイカルコス、シャミハザ&ジルベール、ナベリウス、ネフィリム、バティン、バラム、ハルファス、ブネ、プルソン、プルフラス、メフィストラウム、レラジェ、ロノウェ

B隊はメギドラルの大盾に布陣すべく進軍していた。アスモデウスのメギド体複製を見つけアスモデウスを復活させたA隊と合流したら、いよいよ懲罰局襲撃である。しかし、途中でイポス、更にはバラムの姿が見えなくなる。懲罰局の側からの襲撃である。

混乱の中、ブネの前に一人のメギドが姿を現す。それはドラギナッツォ、懲罰局副局長にして、ブネにとっては因縁ある相手であった。

ブネは発生直後、当時既に懲罰局副局長であったドラギナッツォの冷酷な粛清、または殺戮を目にしていた。その後も事あるごとに、まるで息子のようにドラギナッツォの後を追っては戦争を挑んできた。自分にどこか似ていて自分より強い者が、自分より先にこの世界に存在していたことに、何らかの意味を感じたのだという。ブネはドラギナッツォの背からメギドラルの社会の在り方を学び、メギドとして生きる意義(あるいは、巡り合わせに意味を見出そうとする運命論的思考)を考えて来た。

しかしながら、ドラギナッツォはそれを不愉快に感じていた。彼にとって、社会システムの中で歯車のように役割を果たすことだけがあらゆる存在にとっての必要十分であり、(物語じみた)意味を見出そうとするのは音楽や芸術、ビルドバロックの堕落に勝るとも劣らぬ営みなのである。まして、ブネが彼自身の弱さと成長の物語の舞台装置として自分を利用することは我慢がならないのだという。

しかし果たしてブネは、イポス・バラムに続きあえなく連れ去られてしまった。

フォトン解放区に接近した隊は、偵察を出しつつソロモンとの合流のため待機する。

オレイカルコス、アモン、アラストールは独自の判断で、隊をこっそり離れ懲罰局に忍び込むことにした。さらわれた三名とアンチャーターの奪取が目的である。

 

偽物のルシファーの正体は、起動されたアンチャーターである。彼女は自分のオリジナルが存在していることを嫌い、「私が本物である証をくれ」と言ってエウリノームに本物の抹殺を求めた。アンチャーターである自分はいつか死ぬ運命にあるが、その時何者でもない機構としてではなく、せめて「私として」死にたいと望んだ。それは盟主の意向に反することだが、偽物のルシファーの意志は強かった。

局長の話を聞いたエウリノームは、プルソンやアムドゥスキアスのことを思い出していた。彼らもまた自身が純粋な「本物の」メギドでないことで悩み、しかしメギドでもヴィータでもない唯一無二のオリジナルな存在だ。それは、エウリノームにとって既知の世界の外側にある者であり、決められた在り方をなぞるだけではない存在の可能性を感じさせる。そして彼らは自らの価値を証明し新たな自分を誇るため、打倒懲罰局というケジメをつけようとしている。その時自分は彼らの前に立ち塞がり、彼らの成長に立ち会い、存在感を示して影響を与えたいのだとエウリノームは告白した。それはフライナイツらしからぬ願望である。

 

#95

フォトン解放区に所属不明ーー当然、懲罰局の手によるものーーの幻獣がなだれ込み、戦場は混乱をきたす。そこにソロモンが現れ、苦境に立たされていたB隊はにわかに活気付いた。追加で召喚されたサタナキアやマルコシアス、フラウロス、ガミジンも戦力に加わり、その場にいた軍団たちと一緒になって幻獣を掃討してゆく。

更にソロモンはリヴァイアサンを呼び助力を請うも、はじめリヴァイアサンは強い不満を見せる。一度は不干渉・中立を宣言して大罪同盟を離れた自分が今やアスモデウスの側に付いていることを他の元大罪同盟の面々に知られると、二枚舌の汚名を着ることになるからだ(?)。更にアスモデウスの推薦であったことを知ると、リヴァイアサンは怒りをも見せる。元大罪同盟の面々と顔を合わせたくないそもそもの原因である大罪同盟の分裂は、サタンやベルゼブフをアスモデウスが追い出したことに端を発しているからだ。アスモデウスが、元大罪同盟との戦争に自分を使うことについてリヴァイアサンは「どのツラ下げて」と毒づく。

しかしルシファーが意志を失っていること、アスモデウスがルシファーを助けようとしていることをソロモンから聞き、必ずしも元大罪同盟と自分たちとの対立構造でないことやアスモデウスが元大罪同盟にルシファーに情を向け自分を頼っていることを知ると、俄然姿勢を変え、奔流のような勢いで戦場に飛び出して行った。

 

取材と記録を請け負うフルーレティは、一人フォトン解放区「乾くことなき血の荒野」を駆けては戦争をするメギドたちから話を聞いていた。とあるメギドは語る。硬直し衰退してゆく社会で、唯一の期待はハルマゲドンだと。無謀な破滅思想であろうと、現状を打破できる何か大きなことをなしたいのだと。

 

ダゴンとオリエンスは既に風前の灯、さらわれたイポス、バラム、ブネは幻獣を無理矢理移植され終わることのない苦しみに悶えていた。

中でもブネにむけて、ドラギナッツォは残酷な事実を告げる。ブネに縫い付けられた幻獣は、かつて彼の目の前で軍団員を食い殺した幻獣だというのである。ブネは魂からの絶叫を上げ、幻獣のような何かに変態した。

ブネであったそれを屈服させたドラギナッツォは、それを伴って戦場に出る。その彼に、偽のルシファーはエウリノームの暗殺を依頼した。理由は告げなかったが、本物のルシファー暗殺依頼の事実の口封じが目的である。

 

戦場から幻獣が駆逐された頃、二体の新手が現れる。ドラギナッツォとブネだったモノだ。有名な懲罰局副局長の姿に、周りのメギドたちは騒然とし戦いを止める。懲罰局が戦場に現れたことが知れ渡ったら、次にメギドたちが目にするのはメギド72とドラギナッツォとの衝突だ。その戦いで優勢を示せるか否かが、周囲を味方につけ懲罰局に勝利するための決定的な分岐点になる。緒戦と言わんばかりにリヴァイアサンとドラギナッツォが空でぶつかり合い、全てのメギドがその様に注目していた。

 

ブネだったモノはメギド72の前に姿を現した。ソロモンたちが戦いに勝ったところで、サタナキアはとどめを刺すのを制し、アンドラスに「生きたままの解剖」を依頼する。それがブネであると見抜いていたのだ。

押さえつけられ切り刻まれるそれを見つめるソロモンの脳裏に、いつかのブネの言葉がこだまする。「幻獣とメギドの違いは何なのか、それは存在するのか」

暗闇の中でブネの意識はメギドラル時代のことを追体験していた。軍団を持ち躍進していた頃、そして軍団員を惨殺され追放された時のことだ。そしてブネの意識は独白する。メギドと幻獣の違いが分かった。メギドは魂を持っており、自分の魂を観測することができる。その魂はメギドが自ら変化する時、変化の先にあってランタンのように光っている。肉体は魂の照らす先に進む船に過ぎない。魂を手放さない限り道は開く。そして、魂の照らす先こそが「遠い情景」である。

ブネはメギド72の仲間たちを跳ね飛ばして立ち上がると、絶叫しながら自らの体を、引きちぎり始めた。幻獣と混ざり合った今の自分の姿が耐え難いのだ。みるみるうちに崩壊してゆく肉体は間もなく肉塊となり果て、しかしソロモンは闇の中にあってもなお魂の輝く瞬間を見定めようと指輪に力を込めた。失われかけたブネはギリギリでソロモンによって呼び出され、彼自身の姿形を取り戻して蘇った。

 

リヴァイアサンとの戦いのさなか、ドラギナッツォは地上にエウリノームの姿を見つける。

一方、偵察に出ていたプルソンは偶然旧知のオーシェを見つけ声をかける。と、どこからか飛んできたミュトスがオーシェの目の前で強い光を発した。伝言を叫ばず死にもしないそのミュトスはケーダシンの特別製であり、メギド72が保護していたものだ。オーシェに何かを感じて、メギド72の手元を飛び出してきたのである。ミュトスが感じたのは、ケーダシンを殺した者の気配だ。プルソンはミュトスの反応から、オーシェがイレーザーであることやセンチュートの別名を持っていることに気付きショックを受ける。そこにエウリノームも現れた。と、ミュトスを追ってきたアムドゥスキアスが3名に向かって叫ぶ。声に応じて上方を見た3名のもとへ、ドラギナッツォに撃墜されたリヴァイアサンが降ってきた。更にメギド72本隊からウァレフォルも駆けつけ、ドラギナッツォの接近を警告する。

ドラギナッツォの狙いはエウリノームであったが、すんでのところでオーシェが彼を助けた。

難を逃れたエウリノームは「他にやることができた、ルシファーに会ったら例の(共闘の対価として本物のルシファーを殺すという)取引はやめと伝えてくれ」と言って戦場を後にした。

 

エウリノームを助けたオーシェはそのままドラギナッツォにしがみついて上空に上がり戦いを挑んだが、あえなく返り討ちに遭ってしまう。そこにソロモンたち中枢チームが到着し、ドラギナッツォとの戦いが始まった。

ソロモンらは見事ドラギナッツォをくだす。それにより、周囲で趨勢を伺っていたメギドたちも徐々にメギド72の名に湧いてゆく。一方でチームからは心身の限界を迎えたブネがリタイアし、初期メンバーの安心感を求めたソロモンにより、代わる形で休養していたモラクスとウェパルがアジトから召喚された。彼らを迎え、ソロモンたち中枢チームはいよいよ懲罰局に突入することとなる。

ソロモンたちドラギナッツォ撃破・懲罰局突入チームを送り出した後の本隊は、厳しい状況ながらも「負けていない」戦争状態を維持し続ける任務を再確認した。

 

懲罰局に潜入したアモン隊は変わり果てた姿のイポスとバラムを発見し、カルコスを使いに出した。

カルコスはエウリノームを見送った直後のウァレフォルを見つけ、懲罰局潜入チームが連れ去られた二名を発見したことを報告する。

潜入チームは捜索を続け、オリエンスとダゴンの居場所へと肉薄していく。しかし、懲罰局メギドの一人が気になることを言っていた。懲罰局を手薄にするのは、ソロモン王を誘い込むための罠だと言うのだ。警告手段がないことにアモンは歯噛みする。

また、本隊を離れて戦場でオリエンス・ダゴン軍団を探していたウァサゴとプルフラスは、身を隠していたアルマロス配下軍団員の接触を受けていた。

 

#96

ドラギナッツォの敗北により、戦争は最終局面へと突入する。懲罰局からはメギドたちが次々に飛び出し、メギド72側からはソロモンを中心とする突入チームが懲罰局本部へと踏み込む。そこに、とうとうアスモデウスも到着した。

強力な戦力増に、ウァレフォル指揮下のメギド72本隊は湧き立つ。更にカルコスの報告及び要請に応じ、リヴァイアサンアンドラス、ブネ、アムドゥスキアスが人質救出チームとして派遣されることとなった。

 

その頃ドラギナッツォの痛撃を受けたオーシェは、駆けつけたプルソンに看取られながら静かに息絶えようとしていた。オーシェの残した魂の残滓のようなフォトンを受け取り、プルソンは泣きながらも力強く立ち上がる。走馬灯のうわごとでオーシェが言っていた戦場の高揚が、今もこの戦場に存在すりる。それを大衆の記憶に刻みつけたいと感じたプルソンは、落ちた空島が斜めざまに地面に突き刺さる「メギドラルの大盾」へと足を向けた。そこに自分のメギドの力で傷をつけ、碑にしようと考えたのである。

 

一方、アルマロス配下の軍団員の案内を受けたウァサゴとプルフラスは、オリエンス・ダゴン軍団員とも合流を果たした。アルマロスとチェルノボグが彼らを地下シェルターに匿っていたのだ。二名はアルマロス・チェルノボグと話し、勝算五分五分の戦況にまで持ち込めれば彼らの軍団の参戦を得られる約束を獲得していた。

 

朗報を持ったウァサゴとプルフラス、「大盾」に大きな傷を刻み戦場を鼓舞したプルソンは、それぞれ本隊に合流する。プルソンの後には、彼に共鳴した軍団が友軍として続いていた。

アルマロスの軍団も、戦場の趨勢に勝機を見出して約束通り姿を表す。更にソロモンが少しずつ召喚していたアジト待機のメギドたちも、今こそはと言わんばかりに力を振るう。乾くことなき血の荒野は、メギド72とその友軍対懲罰局の大戦争の様相を見せることとなった。

 

破城蹴り(ソロモン・ラム)(命名:ハック)も交えて懲罰局を制圧してゆくソロモン一行。懲罰局内部で、外壁を破って突入してきたリヴァイアサンら救出チーム、及びアモンら先行潜入チームと合流し、更に変わり果てた姿のイポスやバラムを発見する。彼らの救助のため外科医療的措置を行えるアンドラスと護衛のブネが残ることとなった。

そのブネは、瀕死で撤退してきたドラギナッツォを見つける。宿敵に声をかけたブネは、他者もまた環境なりと説く。かつて強さを求め自分より強いものばかりを見てきたブネは、しかし今や自分自身が強き者として周囲から慕われるようになり、自分を取り巻く世界が変わったと感じるのだという。慕われる者になった時、自分は何か大きな枠組みの中に組み込まれたことを感じ、そしてその枠組み自体を大きく強くするために、自分はより強く大きく正しくありたいと思う。ブネにとって今や重要なのはその枠組みの強さであり、自分一人だけが強いことそれ自体にはさしたる意義を感じないのだ。

その語りに、意外にもドラギナッツォは理解と、気付きを与えられたことへの感謝を示す。そして両者は覚悟を決め、最後の力を振り絞ってぶつかり合った。

倒れたのはブネの方だった。呻くブネを背に、ドラギナッツォは何かの役割を果たすことを仄めかし、懲罰局局長の元へと向かう。

 

ダゴンとオリエンスは、今やほとんど黒いペースト状にまでなってしまっていた。寄生幻獣を引き剥がした上で召喚するしか、彼らを助けるすべはない。そこでリヴァイアサンが彼らとアムドゥスキアスを背に載せて飛び、近くの湖に飛び込むこととなった。水に反応して寄生幻獣が離れたところでアムドゥスキアスが指輪にテレパシーを送る、寄生拡大前提の決死の作戦である。

刻一刻と運搬チームの心身は寄生幻獣に削られてゆく。途切れそうになる意識の中でようやく湖を見つけたリヴァイアサンは、最後の力でそこに飛び込み深く潜る。背に乗るアムドゥスキアスもほとんど意識を失いかけていた。

水底深くで、息苦しさと共にアムドゥスキアスは意識を取り戻す。

 

リヴァイアサンらを見送ったのち、懲罰局の奥へと進む一行。と、不意にソロモンの眼前にアモンが飛び出したかと思うと、「俺をよく見て」と言い残し次の瞬間姿を消した。驚く一行の前に姿を表したのは懲罰局局長、偽のルシファーである。続いてアラストールも飛び出し、そして姿を消してしまう。ルシファー、もといアンチャーター・ロクスの能力であり、アモンとアラストールは我が身を犠牲にして、ソロモンに敵の能力を見極める機会を与えたのだ。

二人おかげで、ソロモンは捕縛されたメギドの救出方法を発見する。アンチャーターのフォトンを蓄える能力を応用してフォトンに分解したメギドを取り込んでいることを見抜き、相手にフォトンを更に送り込むことでところてん式に取り込まれたメギドたちが解放されるのである。

ソロモンはアムドゥスキアスを経由したエウリノームの情報により、懲罰局局長の正体がアンチャーターであることを知っていた。バビロン計画を完成させないためにも、アンチャーターはヴァイガルドに逃がすことなく倒さねばならない。

アンチャーター・ロクスを倒したことで、本物のルシファーが意識を取り戻す。アンチャーター・ロクスがフォトンとして隠し持っていたルシファーの魂の一部が解放され、本来の場所に帰ったのだ。

その時一行のもとにドラギナッツォが姿を表し、懲罰局局長を抱えて奥へと走ってゆく。そこにはゲートが開かれていた。ドラギナッツォはアンチャーターをゲートの向こうに逃がし、己はその場で自爆しゲートを破壊してしまう。

 

アムドゥスキアスの合図を受け取ったソロモンは、アンチャーターを逃したことを悔やむ間もなく四名を召喚する。また、アンドラスが処置を終えたイポスとバラムも少なくとも身体を取り戻していた。しかしダゴン、オリエンス、イポス、バラムは精神に重大なダメージを負ってしまい、意思疎通不可能な状態だった。彼らに関しては今しばらくの休養が必要なようだ。

 

アンチャーターを逃したことを改めて噛み締め苦味走る一行。アンチャーターはヴァイガルドのとある農村に投げ出されていた。そして、待ち構えていたエウリノームに破壊され凶星となってしまう。

エウリノームは「自分は誰かに騙されているのではないか」との疑念を胸に芽生えさせつつ、メギドラル帰還に使えるゲートを探しがてらヴァイガルドを見物することにした。

 

とはいえ、ルシファーが意思を取り戻したことは喜ばしいことだった。母なる白き妖蛆、あるいはカトルスでさえも、メギドたちを支配する上位存在から世界を自由にしメギドたち自身の世界として生まれ直す、その手伝いをしたいと語るソロモン。ルシファーはその決心に共鳴し、召喚を受けることを肯んじた。

懲罰局から地上に出ると、既に戦争の決着はついているようだった。ソロモンは、周囲のメギドたちから敬意のこもった注目と感謝の言葉を浴びる。メギドたちは今回の戦争が勝利の先に意味のある戦争であり、社会の仕組みを変える戦争であり、自分たち自身の戦争であると感じ、楽しかったと言う。

そこに「告げる者」たちが現れた。休戦季の始まり、統一議会の招集である。

【ネタバレ】自分用メギドメインストあらすじまとめ8章

#73

マモンはソロモン王を警戒しながら、自らの持つ計画を密かに進めようとしていた。

マモンの副官であるイヌーンはソロモン王を探してメギドラルを駆けていた。

一方、ペルペトゥムではガープ、ベレト、ベリアル、アイム、コルソンがまちづくりに奔走していた。

アジトに残ったフォカロルやアンドロマリウス、フォラスの元にはシバの女王が訪れ、情報共有をしている。

メギドラルのとある場所では、知能ある幻獣たちが軍団を形成し「ファンキー・ファット・ファランクス(F・F・P)」を名乗ってメギドを襲って回っていた。

ソロモンとブネやバラム、そして後続隊のアスモデウスは一度アジトに一時帰還し、情報と今後の方針ーーマラコーダ提供の棄戦圏の陣地は放棄し、別の集合場所を考えた上で作戦は継続する。メギトラル側で得られた同盟は現状オリエンスの軍団と罵美優蛇のみであるーーを擦り合わせた後再びメギドラルへ戻って行った。

実は、黒き門からメギドラルに入り、遭遇戦をこなしながら議会参加のために進駐するソロモン王の一行は、陽動部隊の側面も持っていた。すなわち、別働隊がいるのだ。ちなみに、ソロモン王が議会に招待された直接的なきっかけは、ガープらがマモランティスの軍団をくだしたことである。これにより空席になった議席を(ソロモンの議席とは別に)メギド72のメンバーの誰かが得られるのだ。

アスモデウス率いる別働隊は、ソロモンたちが存在感を示す影に隠れて、休戦季直前に懲罰局を探し、襲撃する。そして懲罰局の保有するアンチャーターを奪う予定であった。

懲罰局襲撃組のアモンは、懲罰局本部の場所を探すためにレジェ・クシオに潜入し聞き取り調査を行っていた。

なお、マラコーダの提供する棄戦圏に展開した陣地は、本来であればアスモデウス率いる別働隊に引き継ぐ予定だった。しかし牙の内海戦で目立ち中央の使者の接触を受けたことで、陣地の場所が知られてしまった。

とはいえ、大筋としてはメギドラル遠征は順調である。

そしてソロモン王は、メギドラルの陣地にてマグナ・レギオからの接触を受け、F・F・P討伐を命じられた。それはメギド72が議会に所属する軍団として認められたという証左である。

捜索の末に、一行はF・F・Pの構成員幻獣や、その一帯で寝起きしていたまつろわぬメギドと接触した。

その頃、インキュバスは一人メギドラルを彷徨っていた。牙の内海戦争でソロモン隊とはぐれたため、後続隊(懲罰局襲撃隊)との合流を目指してのことである。ーー内心、女性メギドの多い後続隊の方が楽しみも多かろうという魂胆であった。

迷子になった彼を助けたのは、マモンの副官であるイヌーンであった。彼からマモンの名を聞いたインキュバスは、八魔星の一人である彼女に顔を売ることを画策する。

インキュバスと別れたあと、再び荒野を駆けたイヌーンは、棄戦圏の陣地を守るボティスやベリトらに出会い、そこでソロモンの臭いを得る。

 

#74

まつろわぬ者のリコレッキを案内人として、集団発生の洞窟を進み危険な「成り損ない」を探す一行。

「幻獣として生まれるはずだったものを、メギドが奪った、母なる白き妖蛆から……」偶然にもメギド発生の瞬間を目にしたソロモンは、奇妙な言葉を発する。それは牙の内海深部潜行時、意識を失っていた時に母なる白き妖蛆によって見せられた光景に由来するものであった。

フォトンを消費する者はメギドも幻獣も増えすぎてはならない、それが故の戦争社会だとブネは教えた……

幻獣は転生できないとソロモンは言った……

夢見の者の力は母なる白き妖蛆の力に由来している……

メギドとは、魂という形を取った精神生命体なのだ。他の生命を「乗っ取る」ことができる。だからメギドは母なる白き妖蛆の生んだ幻獣の生命を乗っ取ることができるし、追放されてからはヴィータの生命を乗っ取ることができる。

「母なる白き妖蛆」とは、メギドラルから無限にフォトンを奪い続け、自らの範囲を拡張しようとする精神存在である。「彼の世界」別名「カトルス」とは、「蛆」の干渉に悲鳴を上げたメギドラルという世界そのものが生んだ、いわば世界の意志である。そしてメギドとは、「彼の世界」という集合的無意識の中で個を持ち、主観を持ち、彼我の境を認識したことで零れ落ちた一部が、幻獣になるはずだった生命を乗っ取って物質世界に生まれた存在である。だからこそ、メギドは本能的に、「蛆」の仔である幻獣を憎む。

「蛆」がいる限りメギトラルは疲弊し続け、ハルマゲドンの危機は去らない。しかし「蛆」の干渉を断てばメギドがこの世界に生まれなくなる。ソロモンは苦悩した。メギドは幻獣とは「違う」。でも同じに思ってしまったから、どちらも救いたい。けれどそれは不可能なのだ……。

そしてソロモンは、メギドがメギド自身によりメギドの社会を安定維持できるようにすることを、己の使命として認識する。

そして一行は成り損ないの討伐を完了し、陣地に帰投した。ソロモンが無意識の干渉より持ち帰った情報は、ベルフェゴールやマルファスがペルペトゥムやアジトに伝えることとなった。

アスモデウスは既に未知のルートからメギドラルに入ったらしい。

 

#75

ソロモン、ブネ、モラクス、ロノウェ、アロケル、マルコシアス、バルバトス、アン ドラス、レラジェ、バラム、ヒュトギンは改めて仕切り直し、F・F・Pの討伐に出発した。ソロモンは交渉を試みるも話の通じる相手ではなく、戦闘へともつれこみ無事勝利する。

戦闘中、仲間の間で不穏な動きがあった。アロケルがロノウェに剣を向けたのだ。アロケルは転生前、とあるメギドにロノウェの暗殺を依頼されていたのだ。争いは長引きはせず、両者に得なしとして二人は休戦を合意する。

少し前、集団派生の洞窟で協力を得た「まつろわぬ者」のリコレッキは、自分たちのコミューンの限界を悟ってメギド72への参加を目指し一人歩いていた。しかしF・F・Pの一体に見つかり、あえなく殺されてしまう。「彼の世界」に融ける前、彼女が最後に思ったのは、短い間ながら友情のようなものを得たモラクスのことだった。

アジトでは領地にいたグレモリーの訪問を受け、話し合いが行われていた。また、自宅に滞在していたオロバスも姿を現す。(メンバー:グレモリー、フォラス、アンドロマリウス、フォカロル、グラシャラボラス、フルーレティ、ゼパル、オロバス)グレモリーは、ヴィータたちの間で不穏な雰囲気を感じるという。街がいくつも滅びたというのだ。原因は様々で、ひとつひとつは悲惨ではあるが繋がりを見出だせそうなものではない。しかし立て続けである。更に、それが起きた村や街は皆、他の村や街から孤立していた。

オロバスは「カトルス教団」の名を口にした。その教団が、自宅である山小屋の近くの村に住み着いたというのだ。そして、ヴァイガルドでその名が出現するのは奇妙だと話す。なぜならば、「カトルス」とはメギドラルの「彼の世界」を人格化した名前であるというのだ。「彼の世界」の別名を初めて知った一同は驚愕し、ソロモンを呼び戻すことに決める。

その頃、フォルネウスは「カトルス教」として、とある村を滅ぼしていた。

村から逃れた男はフォルネウスの悪行を告発する村長の手記を旅人に託し、それは更にソロモン捜索中のイヌーンの手に渡る。

F・F・Pとの戦いーー巻き込まれたわけではない、自分から始めた戦争の中で、ソロモンはかつてのグロル村での親友を思い出していた。敵を殺し命を奪うことを当然に行う存在になることは、彼らやかつての自分に決裂することである。それでも自分は「前に進む」と覚悟を決めたのだった。

ヴァイガルドでのカトルス教団の不穏な動きがソロモンに伝えられ、一行はヴァイガルド帰還を決める。

 

#76

その頃、イヌーンとフォルネウス、カトルス教団から逃げる男(鎮魂騎士団の間者)は森の中で邂逅していた。イヌーンは、フォルネウスはマモンに選ばれ追放された者であろうと意味深な問を投げる。フォルネウスは明言を避け、代わりに、「エクソダスの災厄からヴィータたちを逃し、彼らを『真の幸福』に導いて世界を救うことが自分の目的だ」と語り、イヌーンとの交戦を敬遠してその場を後にした。そして手記を通して己の行動がソロモンに伝わることを予測し、身を隠して暮らすことに決める。

一方グレモリーの領地にあるとある村、そこに建設された教会の中で、「カトルス教団」宣教師が布教の演説を行っていた。教団が目指すのは、今はまだ「彼の世界」の存在しないヴァイガルドに「彼の世界」=カトルスを作り出すことであり、その為に人々に、カトルスを想い崇めることを求めていた。多くの人々が同じイメージを共有することで、死後辿り着くべきカトルスが成立するというのだ。

居合わせたオーセルは、死を肯定的に受け入れよという教義に対して不快感を顕にする。

そこに幻獣の急襲が訪れる。幸いソロモンらが既に対処に向かっており、グレモリーはビフロンスと共に、領主として村を訪れた。教会に信者以外が入ることを異様に嫌がる宣教師に、グレモリーは不審感を抱く。もとよりメギドラルの概念であるはずの「カトルス」を掲げる教団である。オーセルとビフロンスは警戒のため教会に留まることになった。

密かに宣教師長を見張るオーセルの目の前で、意外な事態が発生する。宣教師長が自殺したのだ。「自分は十分にすべきことをした。真の幸福を得る資格がある。死の先の絶対安住の地に行くのだ」そう言って死んだ男にオーセルは衝撃を受ける。

一方、ソロモンとゼパル、グラシャラボラス、フェニックス、オロバスは村付近の森で幻獣と交戦していた。

逃げ遅れの捜索に出たグレモリーは、村内でメギドに遭遇する。カトルス教団関係でこそなかったものの、かねてより警戒していた、休戦季間際に功を焦った軍団による小規模侵攻である。両者は戦闘に突入した。

あわやの瞬間、ここにもイヌーンが助けに入る。更にビフロンスの加勢も得て、一行はメギドの撃破に成功した。その時、カトルス教の者たちがぞろぞろと教会を後にするのが目に入る。この村での布教を諦め、撤収を始めたのだ。

ソロモン一行とグレモリーら、オーセル、そしてイヌーンは合流し、教会の捜索を始める。そこにあった祭壇は驚くべきものだった。人の脳が使われているのだ。これに多くのヴィータが思念を集中させると、何らかのヴィジョンを表示することができるらしい。そうしてヴィータらにひとつのイメージを共有させることで、この世界にカトルスを作り出そうとしていたのだろう。

そしてまた、教団によって滅んだ村の村長の手記が、とうとうイヌーンからソロモンに渡る。そこに記されていたフォルネウスの名に、ソロモンは愕然とする。

 

#77

フォルネウスの所業に誰もが困惑していた。そんな中フェニックスとフォカロルは、フォルネウスが今後どんな態度を見せようとーーたとえ残虐な所業に何か理由があり、ヴァイガルド防衛の意志を持ち続けていたとしてもーー殺された人々の手前、処断は免れ得ないと密かに心を決める。ソロモンにすら知らせずフォカロル単独の判断と支持であることにすることで、ソロモンにのしかかる粛清の重荷や予想され得る反発を避けるつもりだった。

イヌーンの鼻を頼り、「黒幕」フォルネウスを探してとある洞窟に来たソロモン、ゼパル、グレモリー、フォラス(脳を使った祭壇に興味を持った)、アンドラス(同前かつ回復役としてメギドラルの陣地より召喚された)、オロバス、グラシャラボラス、フェニックス。召喚を拒むフォルネウスに、ソロモンらの疑念は次第に確信へと移り変わっていた。

道中、オロバスらは祭壇の調査結果を共有する。祭壇に使われていてのはスライスされた誰かの大脳で、元になった者が特殊な力を持っていることから、追体験のための共鳴装置として機能していたと思われる。そしてまた、その脳ありきで教団が作られたとも推測され得る。

洞窟の奥で、一行はとうとうフォルネウスと対面する。彼は「自分の目的はヴィータを救うことだ」と言った。メギドの命は死んでから初めて価値を得る。死後彼の世界に還り、自分の一生分の情報を持ち帰り、全体に渡し、全体から認められることで、初めて命の価値は生まれるのだ、そうして命に価値を得ることこそが真の幸福なのだとフォルネウスは主張する。しかし追放メギドはそこに還ることはできない。

ヴァィガルドにカトルスがあり、世界自体が何らかのイメージを抱くことができていれば、仮にヴィータが絶滅したとしても再び世界によって生み出される。命の生まれまた還る場所を作ることはヴァイガルドという世界が他の世界に圧倒されることを防ぐことになり、ハルマゲドンへの対抗作にさえなるのだとフォルネウスは言う。

今ここにある人命に価値を見出さず、魂をリソースのように扱うフォルネウスに反発する一行。遺物の力でフォルネウスは指輪の干渉を拒否する。両者は戦闘にもつれこんだ。敗北したフォルネウスに、フェニックスは刃を向ける。それを押し留めながら、ソロモンはフォルネウスに語りかけた。そして、彼は命を単なる現象として鳥瞰してきたからこそ、これまで「他者」すなわち対等な存在を意識したことが無かったのではないかと喝破する。そしてソロモンを「親友」と呼んだのは、帰るべき故郷ーーカトルス、あるいはグロル村ーーを失いながらもそれに固執し続けることをやめられない共通点故なのだろうと。

 

アジトからはフルーレティがハブ監視任務に、マルファスがメギドラル側陣地へとそれぞれ出かけてゆく。ハブとは、アジトとメギドラル側陣地との中継地点だ。メギドラル側で見つけたゲートを使い、その出口をグレモリーの所領内の森に繋げている。ポータルを直接アジトに繋げることは技術的にできなかったため、既存のゲートを利用したハブが必要なのだ。無論、アジト防衛の意味合いもある。ハブ監視当番のブエルと顔を合わせ、カトルス教団とフォルネウスについて伝えた。そして更にメギドラルへ渡ったマルファスは、メギドラル陣地のメンバーにも同様の情報共有を行った。

ペルペトゥムへの情報共有はリリムが行った。また、オーセルが仲間を連れてペルペトゥム移住することにしたらしい。

 

ポータルの前にいたフォカロルと警備当番のウヴァルの前でポータルが開き、その向こうからオリアスが現れた。「世界のあらゆる場所で、怪物が人々を襲う。防ぎようがない」そう彼女は予言した。

 

フォルネウスを連れアジトに戻ることにしたソロモン一行は、ハブに設置したポータルへと向かう。しかしそこにはポータルキーは無く、それどころか人っ子一人見えなくなっていた。代わりに現れたのは、ヴァイガルドに出現するはずのない成り損ないである。

 

#78

成り損ないから逃げ、アジトに駆け込んだブエル。オリアスの予言が証明され、俄然臨戦態勢となる。

フルーレティはハブ駐留のヴィータを助けるため現地に残り、彼らと共に逃走している。オリアスは王都への連絡に走り、ビフロンス・ウヴァル・フォカロルはポータルキーを用いて各地の偵察と迎撃。ブエルはポータルキーを用いた各地への連絡と携帯フォトン配布。アンドロマリウスはアジトで情報の中継役となった。

各地に滞在していた仲間たち、各国の騎士団、そしてアンチャーターのプルクラさえも、それぞれが遭遇戦を行いヴィータを助けていた。また、プロメテウスは歌で成り損ないを追い払えることを発見していた。

 

ハブから近くの街へ駆け付けたソロモン一行は、成り損ないの溢れかえる光景に愕然とする。何故成り損ないがヴァイガルドに? その疑問に、フォルネウスが答えを示唆する。母なる白き妖蛆は、明らかにヴァイガルドの存在を知っていた。ならば、メギドの邪魔も入らないヴァイガルドに仔を生まない理由はない。実はこれまでも、ヴァイガルドに生み落とされた幻獣はいたのではないか。そして今街なかにそれらがいるのは、ヴィータの肉体を奪って出てきたからである。

何故母なる白き妖蛆は今になってヴァイガルドへの仔の送り込みを始めたのか。その方法が今になって発見されたからであろうと一行は推測する。その方法とは、追放メギドの体を乗っ取ることである。メギドが幻獣の体を奪っていることから、蛆はメギドの存在や居所を知覚することができる。虚空に向かって仔を生んだところでそれは発生には至らないが、ヴァイガルドに居る(未召喚の)追放メギドをマーカーにすれば、あやまたず肉体に仔の魂を送り込めるのである。

成り損ないの発生への対策として、フォルネウスは自らの体をフォトンバースト様の状態、すなわち極めて希薄なフォトンに分解することを提案する。当然凄まじい苦痛が伴うが、それが自分の贖罪だという。

微細に分解されたフォルネウスは、大気中のフォトンを途切れることなく摂取し、障壁の力を途切れることなく発揮し続けることができる。そこにフォラスの全体化の能力を添加して、世界中に障壁を張ろうというのだ。

フォルネウスのメギドの力の障壁を広げることで、蛆の世界から来る「仔」をはじいたり、今いる「成り損ない」の力を削いだり、蛆に不審感を抱かせ侵略活動を停止させたりすることが期待できる。そしてまた、ヴァイガルドのカトルスに、世界を防衛するということの有様を見せることができるかもしれないとフォルネウスは言った。

 

ソロモンたちが去った後のグレモリー領の村では、成り損ないに襲われる極限状態で、村人たちがこぞってカトルス教祭壇に祈っていた。そこで見たイメージは「わたし」の主観を通して、美しい世界を映し出していた。それにより、人々はあることを悟る。カトルス教の教義の本質は現世の否定ではなく、また死そのものには何の意味もない。むしろ現世が素晴らしいということを「持ち帰る場所」を作り、生への希求を共有し、その場所に行ったとしても再び魂が現世に帰ってくるようにしようとしているのだ。

しかしその時、とうとう成り損ないが彼らの元に迫る。だが絶望する人々の目の前で、意外なことが起こった。成り損ないが光に包まれ動きを止めたのだ。ソロモンとフォルネウスの作戦の成功である。

 

メギドラル側に待機していたパイモン・バラム・マルファス・バティンはハブを訪れ、無人でポータルキーが失われていることからヴァイガルドに異常が起きたことを確認していた。持参した緊急用ポータルキーを起動しようとしたところで、身を隠していたフルーレティと警備のヴィータたちが姿を現す。

 

とある街では偶然訪れていたハックと住民にして弟子のヴイータ女性、パトロール中合流したビフロンス、そして街の人々が成り損ないを迎撃していた。同じくパトロールにでていたウヴァルとフォカロルも、また別の街で成り損ないに対処している。ペルペトゥムではベルフェゴールとコルソン、そしてガープ、ベリアルが戦闘を繰り広げ、またマルチネと偶然立ち寄ったニスロクも牧場で成り損ないに応戦していた。ウァプラとアンチャーターのプルクラはアクィエルと遭遇し、とある街(王都?)で共に戦線を張っていた。

世界の安全は取り戻されたがフォルネウスは限界を迎え、「ボクは自分の意志でキミたちの軍団を去る」と言い残して肉体を崩壊させた。彼の心中に最期にあったのは、いずれ生み出さんとするヴァイガルドのカトルスに、最後の希望としてのソロモンの魂を送り出したかったという思いだった。

フォルネウスの伝言をフェニックスがソロモンに伝える。ヴァイガルドにはハルマゲドンではないもう一つの危機、エクソダスが迫っており、ヴァイガルドのカトルスを作ることは対抗手段になり得るのだという。聞き知らぬ言葉に戸惑うソロモンに、イヌーンがその計画の内容を説明する。それはマモンが独自に進める計画であり、阻止するために残された時間は多くはないのであった。

王宮ではオリアスの情報を受けたシバの女王らが、今回の騒動と追放刑の関係についてソロモンに探ってほしい意向を示した。

 

アジトへの帰投後、ソロモンはショックを受けながらも「フォルネウスがまだ近くにいる気がする」と語る。またインプは人知れず祭壇に興味を示し、それが誰かの人生の記憶の情景であることを直感的に理解していた。そして涙を流しながら、皆が当たり前にできることができない人もいるのにと、世界への遣る瀬ない怒りを燃やすのだった。

 

祭壇に埋め込まれた脳は、とある女のものであった。彼女は生まれながらに映像をテレパスする能力を持ち、それ故に人々から恐れられ迫害されて生きていた。

かつてフォルネウスは彼女に出会い、精神にテレパシーの干渉を受けた刺激からメギドの記憶や彼の世界のことを思い出した。「本来の自分」を取り戻すことは無上の喜びであったが、「彼の世界」に帰れないと理解する絶望もまた共にあった。

後日フォルネウスは女を保護したが、既に衰弱しきっていた女はそれから数年と生きられはしなかった。追放により還る場所及び(そこに魂の情報を持ち帰るという)生きる意味を失ったフォルネウスと、人生に意味をずっと見い出せずにいた女はささやかに共感する。そして、己の生まれた世界にありながら初めから還る場所を持たない女、ひいてはヴィータたちを哀れんだフォルネウスは、ヴァイガルドにカトルスを作り出すことを思いつく。

どこかで、女は穏やかに暮らしていた。二人の子供ーーカトルス教団が布教に失敗し、その後成り損ないに襲われたあの村の子供たちーーが現れる。三人はどこかの「みんなに会える場所」「大きな何か」を探して、女の暮らす部屋から外の世界へと出て行った。

 

#79

フォカロル、フォラス、ゼパル、グラシャラボラスらをアジトに残し、ソロモン、フェニックス、アンドラスらはイヌーンと共にメギドラル側の陣地へ戻る。グリマルキンは密かにフォルネウスの気配を察知し眉根を寄せていた。

フォルネウスは現世に留まっていたのだ。ヴァイガルドの集合意識体によりフォトンを供給され、肉体の崩壊後も魂だけで存在を保っていた。フォルネウスの滅ぼした村の「村長クン」の姿を取った者(フォトン供給のための道標)は、フォルネウスにはまだ贖罪としての役割が残っていると言う。

また、ヴァイガルドの集合意識体は既にフォルネウスの干渉よりもはるか昔、古代大戦という世界の危機を契機として生まれていたのだという。その上位存在と交信するための装置がソロモンの指輪、シバの指輪である。

 

メギドラル陣地に戻ったソロモンは、マモンに対抗しエクソダスを阻止するため陣地を放棄して進軍するという方針をブネと確認する。また、サレオス・イポス・ロノウェがそれぞれ数人のチームを作って、進軍ルート確保のための偵察隊として先行していた。

イポスは索敵と掃討を行っている。サレオスはパイモンと共に「涙の大河」を確認したいと言っていたらしい。ロノウェはエリゴスが遭遇した幻獣に対応するため出ていた。ソロモンは、援軍も兼ねてひとまずロノウェ隊との合流を目指すことにした。

アジト残留組:グラシャラボラス、グリマルキン、ゼパル、フォカロル、フォラス他

ヴァイガルド残留(非アジト、自宅等)組:不明(ウァプラ、ブエル、ジズ等?)

ペルペトゥム組:?

メギドラル遠征本隊:ソロモン、アンドラス、イヌーン、カスピエル、ザガン、サタナキア、セーレ、ナベリウス、バエル、バラム、ハルファス、フェニックス、ブニ、ブネ、フリアエ、ベリト、マルコシアス、ムルムル、メフィスト、他?

メギドラル遠征偵察隊①(索敵・掃討による進軍ルート確保):イポス、サブナック、バルバトス、ボティス他

メギドラル遠征偵察隊②(涙の大河偵察):サレオス、パイモン、シトリー、ヒュトギン

メギドラル遠征偵察隊③(遭遇幻獣掃討):ロノウェ、アムドゥスキアス、アロケル、エリゴス、シャックス、マルファス、モラクス、ラウム、レラジェ

メギドラル遠征後発隊:アスモデウス

その他:インキュバス(牙の内海戦争のドサクサで本隊から離れ、アスモデウス隊合流を目指す)、リヴァイアサン+ウェパル+サルガタナス(牙の内海)、ベルフェゴール(メギドラル遠征を先行中)

 

偵察隊③のエリゴスは、内心強い闘志を燃やし独走していた。自身の追放のきっかけになったメギドに似た幻獣を見かけたのだ。エリゴスはそのメギドのやっかみから陥れられ追放された。ヴィータの体でメギド時代の高潔さを失った今も、そのメギドの存在はエリゴスの心で大きな引っ掛かりとなっていた。

ソロモン率いる本隊が偵察隊③に合流し、新たな目的であるマモン接触エクソダス阻止について共有する。エリゴスは未だ独走中である。

エクソダス計画、別名第三計画とは、メギドたちがメギドラルを捨て、ヴィータの肉体を奪ってヴァイガルドに逃れる計画である。そうしていつか、ヴァイガルドのすべてのヴィータに成り代わろうというのだ。

マモンがソロモンを呼び出したのは、エクソダス後に護界憲章からメギドらを守るため、指輪の力ーーあるいは単に、指輪それだけーーを求めたからであろうと推測される。しかし利害に敏いマモンであれば、エクソダス計画がメギドラル社会の利にならないことをソロモンが証明しさえすれば、潔く計画を捨てるだろうとのことだった。

また、エクソダスは「魂の炉」という魂の保管装置の機能を前提としているが、この存在は秘匿され、マモンや一部のメギドだけが保持している。

また、「魂の炉」の技術は追放刑にも流用されている。

更に蛆の息のかかった勢力は追放刑を利用し、重要なことを知ってしまったメギドを異世界ヴァイガルドに追いやってきた。追放されたメギドはカトルスに重要な情報を持ち帰れず、蛆のメギドラル支配は明るみに出にくくなるというわけだ。

カトルスへの情報の遮断を目的とした追放活動の実働部隊が、八魔星のベルゼフフによって設立され、同じく八魔星のエウリノーム・バールベリトを擁するフライナイツである。

しかしサタンやマモンも、追放刑を真逆の目的に利用していた。蛆に与しないメギドの魂に「印」をつけた上で、蛆の手の及ばないヴァイガルドに送り出していたのだ。いつかソロモン王が出現しヴァイガルドにいるメギドが力を取り戻した時、彼らは蛆の勢力に対抗するための軍団になり得る。サタン派がソロモン王を生み出そうと研究を続けているのもこのためである。

ソロモンたちがマモンやサタンを倒してしまえば、メギドラルのパワーバランスが一気に蛆・ベルゼブフ側に傾く。そうすれば蛆の勢力は魂の炉を掌握して大量の魂をヴァイガルドに送り込み、更にそれをマーカーとして蛆が仔を送り込むことになるだろう。

ソロモンたちが真にすべきことはマモンの打倒ではなく、エクソダスを思い留まらせつつ「魂の炉」を破壊等して蛆側の手に渡らないようにすることである。

先だっての成り損ないの出現がエクソダス計画の一環であったとすると、しかしそこには二つの違和感があった。一つは、イヌーンを使者として遣わしておきながら、その結果を待たず、また成否も確実でないにも関わらず拙速に計画を進めていることである。二つ目は、成り損ないをヴァイガルドに送り込むことがマモンの利益になるとは思えないことである。これらから、成り損ないの悲劇はマモンの計画とは無関係であると考えた方がもっともらしく見える。

とはいえ先だっての事件が(1)エクソダスの失敗によるものであったにせよ、(2)エクソダスに蛆が便乗したにせよ、(3)エクソダスは起こっておらず先の事件は蛆単独によるものであるにせよ、マモンを問い質すのが最適である。蛆への対抗という目的を共有できれば、ともすればマモンとの共闘までも期待できる。

マモンがソロモンを呼び出したのは、エクソダス後に護界憲章からメギドらを守るため、指輪の力ーーあるいは単に、指輪それだけーーを求めたからであろうと推測される。しかし利害に敏いマモンであれば、エクソダス計画がメギドラル社会の利にならないことをソロモンが証明しさえすれば、潔く計画を捨てるだろうとのことだった

 

独走していたエリゴスや別行動のラウム・モラクスとも合流した本隊及び偵察隊③は、イヌーンの提案により近傍のマモン軍連絡ポイントに向かうことにした。マモン配下のメギドと接触するためである。イポスら偵察隊①にはマルファスが伝令として向かい、現地での合流を目指す。

 

#80

アムドゥスキアス、アロケル、アンドラス、イヌーン、ザガン、シャックス、シャミハザ&ジルベール、ハルファス、フェニックス、プルソン、マルファス(イポスへの連絡から戻るや否や偵察隊に参加した)、モラクス、ラウム、レラジェ、ロノウェは偵察のため一足先に連絡ポイントに到着した。フォルネウスのことを気に病むソロモンを支えようと意識を合わせるためロノウェが声をかけた、ソロモンと歳の近い面々である。と、誰かに見られてるような違和感を一部のメギドが感じる。

霧が一行を包んだ。メギドたちはそれぞれに幻影を見る。アムドゥスキアスは誰かに「闘争心の足りないお前は失敗だ、やはりメギドは蛆の仔を通してしか生まれないのか」と言われ、プルソンは無言で立つエウリノームを見て動揺する。

そして、かつての因縁が白日のもとに晒されるメギドたちもいた。

ロノウェは、追放前に喰おうとしていた上位メギドの姿を見る。同じ幻影を見たレラジェは、ロノウェこそが議会の依頼により追っていたメギド喰らいの正体だったと知る。レラジェが放った殺気により、ロノウェは自分を追い詰め懲罰局に捕らえさせたのがレラジェであったと知る。

また、ロノウェが喰らい損ねたメギドにとどめを刺しバラバラにしたのはアンドラスであったことが、本人の口から明かされる。依頼に失敗したかどで追放されたレラジェにとって、仇はアンドラスであった。

更に、メギド喰らいの事件の起きたのがラウムのテリトリーであったが故に、共犯を疑われた彼も追放されることとなった。

一触即発の「17歳組」をイヌーンが一喝する。ソロモンのために心を合わせることを思い出した彼らは、すんでのところで拳を収めた。また、追放の発端となった事件すら半ばアドラメレクらに仕組まれ誘導されたものであった。

ロノウェは嘔吐しつつ謝罪をする。メギド72にいる限りは争わないと皆が同意した。

同じ頃、シャミハザとジルベールは幻覚に誘われて以前のユフィールとの会話を思い出していた。それぞれの独立性を保ったまま体を共有しているシャミハザとジルベールは、偶然の産物とはいえメギドラルにとっては成功例であるという。ヴィータの魂と混ざり合うことなく、メギドがメギドとしての純粋さを保ったままヴァイガルドに受肉しているのだ。

ここまでを理解した上で、成り損ないが服を着ていた、すなわち胎児ではないヴィータからも発生していたという事実の恐ろしさに気付く。成り損ないに奪われたとはいえ、一度はその体にメギドの魂が宿ったのだ。それはつまり、シャミハザと同じ「適合も時間差も問わない転生」の成功を意味している。エクソダスは成功したのだ。

 

一方、ソロモンはリヴァイアサンとウェパル、サルガタナスを牙の内海から召喚した。大罪同盟の個々が一つずつ分け持つという秘密について尋ねたが、あまり実のある情報は得られなかった。アスモデウスはペルペトゥムの関係を預かり、推測だがベルフェゴールはエルダーの関係であろうとのことである。

 

連絡ポイントである霧に包まれた廃墟の方に歩みを進める一行。しかし、先行のロノウェら偵察隊は蜃気楼のように見え隠れし、不思議と出会うことができない。召喚についてもソロモンが違和感を訴え、一旦控えることにした。合流しに来るイポスら偵察隊①への連絡役としてリヴァイアサンとベリト、コランを残し、一行は廃墟の中へと足を踏み入れる。

霧の中でソロモンはフォルネウスの姿を見る。しかしサタナキアの忠告により、それが幻覚であると信じ込んでしまった。指輪の力でフォトンを含んだ霧を打ち払い、幻覚を退けてロノウェ隊及び遅れて到着したイポス隊と合流を果たす。ジルベールから話を聞くことで、彼らの事例こそマモンがエクソダスの強行を決めたきっかけであると結論づけた。マモンは恐らくシャミハザ追放の実行者であるガギゾンが所属するフライナイツ、正確にはフライナイツの実質支配を受ける懲罰局を通して、シャミハザ転生の例を知ったのだろう。そして実験と自己勢力のヴァイガルドへの密かな布陣を目的として、小規模なエクソダスを実行したと思われる。結果としてそれは、蛆によって失敗してしまったが。シャミハザという、ソロモンの指輪の保護下になくとも蛆の仔に体を乗っ取られることなく生活できていた、かつメギドの魂の独立を保てていた成功例は、メギドラルにとって魅力的である。ソロモンというヴィータの手を借りずともエクソダスを成功させられる可能性を示唆しているからだ。

 

ようやくマモン配下の使者が現れる。しかし奇しくも、それはエリゴスの因縁の相手であるインガセクトだった。ソロモンとインガセクトは会話に入るが、交渉とは名ばかりの、挑発と反発ばかりのやり取りに終止した。マモンへの全面降伏、シャミハザの引き渡し、指輪の譲渡、いずれも受け入れられる条件ではない。また、ソロモンの要請したエクソダスの中止も当然拒否される。両者の関係は決裂し、マモンとソロモンは互いに戦争状態に突入することを確認する。イヌーンはマモンを諌めんがため、引き続きソロモンと行動を共にすると述べた。

その様子を見ていたフォルネウスは、消えゆく意識の中で無力を嘆いていた。

 

#81

アジト残留組:グラシャラボラス、グリマルキン、ゼパル、フォカロル、フォラス他

ヴァイガルド残留(非アジト、自宅等)組:不明(ウァプラ、ブエル、ジズ等?)

ペルペトゥム組:?

メギドラル遠征本隊:ソロモン、アムドゥスキアス、アロケル、アンドラス、イヌーン、イポス、ウェパル、エリゴス、カスピエル、ザガン、サタナキア、サブナック、サルガタナス、シャックス、セーレ、ナベリウス、バエル、バラム、バルバトス、ハルファス、フェニックス、ブニ、ブネ、フリアエ、プルソン、ベリト、ボティス、マルコシアス、マルファス、ムルムル、メフィスト、モラクス、ラウムリヴァイアサン、レラビェ、ロノウェ他

メギドラル遠征後発隊:アスモデウス

その他:インキュバス(牙の内海戦争のドサクサで本隊から離れ、アスモデウス隊合流を目指す)、ベルフェゴール(メギドラル遠征を先行中)、サレオス・パイモン・(やや離れて)シトリー、ヒュトギン(嘆きの大河偵察)

 

パイモンも「冥河主」サレオスとはかつての宿敵であった。その頃サレオスが守っていた嘆きの大河を眺め、二人は当時を懐かしんでいた。

サレオスはマモンの副官であったが、約25年前、主の不興を買ったことから挽回のためにヴァイガルド転生を申し出た。エクソダスに役立てるため、サタン経由で噂を聞いていたソロモン王(ダムロック)の発見がその目的である。マモン派の転生メギドが先遣隊としてヴァイガルドに赴き、予めソロモン王に接触することで、エクソダスのための足掛かりを作ろうとしていたのだ。

シトリーはかつての友であるマモンとの対峙に思いを馳せていた。彼女もまた、サレオスと似た経緯でヴァイガルドに転生していた。

やがてソロモンら本隊が嘆きの大河偵察隊に合流し、河越えの方法を議論する。サレオスはイヌーンと旧交を温めた。イヌーンはサレオスの幼護士であった。

サレオスもシトリーも、転生を経てヴィータやヴァイガルドを軽視する思考を転換したと言う。そしてメギドとヴィータが共に納得できる落とし所を見つける必要があるのだと、ソロモンと共に意思を固めた。

サレオスの案内を頼りに涙の大河を渡ろうとする遠征隊。応援としてアミーをヴァイガルドから召喚し、筏づくりに精を出す。そして川底の骨や死体に紛れ、無事河越えに成功した。

 

マモンは「第一次エクソダス」すなわち成り損ない発生事件の顛末を知らなかった。彼女は「確実に転生の成功する方法」を持っていたために、エクソダスの成功を疑う理由がなかったのだ。その「方法」こそが、マモンが保持する大罪同盟の秘密である。ベリアルをはじめとする不死者や長命者はその「方法」を用いて転生した者たちであり、それが故に長命やメギドの力の部分的な行使が可能なのだった。彼らはマモンが蛆への対抗のために密かにヴァイガルドに避難させていたのだった。

シャミハザの存在は確かにマモンにエクソダスを急がせる原因になったが、決して彼女にとって都合のいいものではなかった。確実な転生の手段を持つ彼女にとってシャミハザの存在は利益にはならず、むしろ議会=蛆に確実な転生の可能性を知らしめることになってしまうのだ。

確実な転生が知られれば、一つにはそれがハルマゲドンの手段になり得る。ヴァイガルドに潜入したメギドたちが蜂起すれば、メギドとハルマの正面対決は目の前だ。ハルマゲドンに勝算を見出だせずにいるーーむしろそれを蛆の戦略と考えるーーマモンにとって都合の悪いことである。二つ目には、フライナイツにとって追放刑が不都合なものになってしまう。フライナイツは「彼の世界」に蛆の情報を渡さないため、情報を持つメギドを彼の世界から切り離された異世界に追放していた。しかし追放の殆どは失敗し魂は消失するという前提が崩れれば、追放刑は隠蔽として成立しなくなる。そうなれば追放刑はすたれ、それに紛れて進めているマモンのエクソダスも術を失ってしまうのだ。

 

ソロモンらが幻覚を見たのは、フライナイツのしわざだった。マモンとの協力を妨害するため、幻惑能力のある幻獣を予め放っていたのだ。妨害の目的は時間稼ぎだ。マモンがソロモンとの戦争にかかずらっている間に「魂の炉」を見つけ出し、押さえ、エクソダス計画を乗っ取ろうというのである。そう、フライナイツはエクソダス計画の存在と内容も、それを補強するシャミハザの事例も知っているのだ。

シャミハザの事例とて、予想外の情報で動揺を誘うために敢えてフライナイツからマモンにリークしたものであった。結果としてマモンは第一次エクソダスを強行し、その大規模な魂の動きから、フライナイツは魂の炉の場所の特定に成功した。更には、母なる白き妖蛆が仔を送り身体を乗っ取ることができることまでも判明させ得た。

 

その頃、インキュバスはインガセクトに拾われ、マモン配下のメギドたちになぜか気に入られ、密かに匿われていた。

 

失われたかに見えたフォルネウスの魂は、消え去る直前に偶然にもメギドラルのソロモン王によって召喚されていた。サタンが生み出したソロモン王である。

これ幸いと、フォルネウスは蛆=フライナイツの謀略によりマモンとメギド72が潰し合いにもつれ込み、エクソダスが奪われかけている事情を話す。サタンもそれを受け入れ、メギド72への助力のために動くこととなった。

 

#82

単独行動中だったベルフェゴールとも召喚により合流し、また戦力増強のためにフルカスを召喚し、いよいよメギド72はマモン城に突入する。しかし、その時既に敵の計略は発動していた。城内にいるのは幻獣ばかりで、メギドの姿が見えないのだ。フォトンで作り出したマモンの映像でソロモンたちを城に誘い込み、幻獣の大軍勢で包囲し攻めると同時に、城自体も爆破し軍団を押しつぶそうという罠である。

と、城内で夢見の者の死体が見つかった。エクソダス失敗の報をマモンに伝えられないよう、口止めのために殺されたと思われる。マモンの周囲に間者がいるのだ。

ラクスの勘により爆破装置が発見され、召喚されたアスタロトによる解除が成功する。また、機転を利かせた空からの脱出により、どうにか損失無く危急を脱することができた。運良く仕込まれていたインキュバスの能力のお陰でタイガンニールからマモンとの合流場所も聞き出すことができる。

 

#83

アジト残留組:グラシャラボラス、グリマルキン、ゼパル、フォカロル、フォラス他

ヴァイガルド残留(非アジト、自宅等)組:不明(ウァプラ、ブエル、ジズ等?)

ペルペトゥム組:?

メギドラル遠征本隊:ソロモン、アスタロト、アミー、アムドゥスキアス、アロケル、アンドラス、イヌーン、イポス、ウェパル、エリゴス、カスピエル、ザガン、サタナキア、サブナック、サルガタナス、サレオス、シトリー、シャックス、セーレ、ナベリウス、パイモン、バエル、バラム、バルバトス、ハルファス、ヒュトギン、フェニックス、ブニ、ブネ、フリアエ、フルカス、プルソン、ベリト、ベルフェゴール、ボティス、マルコシアス、マルファス、ムルムル、メフィスト、モラクス、ラウムリヴァイアサン、レラジェ、ロノウェ

メギドラル遠征後発隊:アスモデウス

その他:インキュバス(牙の内海戦争のドサクサで本隊から離れ、マモン配下メギドに拾われる)

 

マモンとの対峙のための行軍途上、メギド72はサタンとメギドラルのソロモン王、そして蘇ったフォルネウスに遭遇する。マモンとの対立がフライナイツの謀略であることを聞かされ、戦争は避けられないまでも、殺すべきでないことを確認した。フォルネウスはそのままサタンらと行動を共にすることになる。

進軍する一行の前に立ち塞がったのはインガセクトだった。戦闘に勝利し、ようやくエリゴスは懊悩を断ち切り、ソロモンの目指す目的に全てを賭けることを宣言する。

敗北に打ちひしがれ、己の存在意義を見失うインガセクト。彼女の前に現れ、傍らに寄り添ったのはインキュバスだった。その励ましにより、インガセクトは今一度マモンの役に立つために足を踏み出した。

 

これまでの出来事から、ホーコックが裏切り者であると結論付け拘束を命じるマモン。そこにソロモン一行が現れ、両者はついに対峙する。

エクソダスのリスク、エクソダスによらずゲートを通って移住するメギドを受け入れる意思、フライナイツの暗躍、それら全てを確認した上でなお、マモンからソロモンへの疑心や敵愾心を晴らすには至らなかった。むしろ、フライナイツの動きをソロモンが把握していることがマモンの疑念を深めたのだ。両者は戦闘へともつれ込む。

ソロモンらがマモンを下したのち、彼女の疑念を晴らしたのは隠れて見ていたフォルネウスだった。ソロモンという点とフライナイツという点、本来結びつかないはずーーだからこそマモンは両者の結託を疑ったーーの二者を繋ぐ名、すなわち追放メギドのカソグサを存在を告げたのだ。密かにエクソダス計画を察知し調査を行っていたカソグサはフライナイツに捕らえられ、エクソダスの情報を奪われた。かつまたその後の追放の結果、フォルネウスを通じてソロモンに情報をもたらした。

全てを理解したマモンは第一次エクソダスの失敗により失われた魂たちのために嘆き、計画の休止を受け入れた。

魂の炉、本来の呼称にして「カトルスの受け皿」は、もともと蛆対策として作られた装置であった。カトルスから送り出された魂を直接受け取り、保管し、かつまた適合するヴィータの魂を検索し、発見次第ほぼゼロ時間差で送り込む機能を予定されていた。ヴィータの身体を奪ってメギドが発生することで、蛆を滅ぼせばメギドも滅びるという矛盾を克服できると期待されていた。ただしカトルスからの魂を受け取る部分において装置は機能しなかった。

魂の炉のある遺跡に近づくメギド72、マモン軍団、サタン一行。彼らの前に姿を見せたのは、膨大な光を放つ魂の炉であった。しかし、それはヴァイガルドに向けて魂を送り出しているわけではない。内部に溜め込んだ魂を、ひたすらその場で外に出していたのだ。

虚空に投げ出され消えゆかんとする魂は、メギドラルのソロモン王が一つ残らず指輪へと集め救い出した。サタンの説得もあり、マモンは魂の炉の破壊を受け入れる。

命と引き換えに魂の炉を破壊しようとするマモンの前に、インガセクトインキュバスが現れる。そしてインガセクトは、魂の炉の破壊の役割を自ら願い出た。命を賭しても構わないと思えるほどの目的哦自分には欠けていて、それを満たすためにマモンの役に立ちたい。そう願い出るインガセクトにマモンは頷き、魂の炉の内部へと彼女を送り出した。そして、魂の炉は破壊される。

戻ってきたマモンは、ソロモンとの今後に渡る共闘と召喚を自ら提案した。

また、ソロモンがメギドラルのソロモン王の指輪の力を掻い潜りフォルネウスの召喚に成功した場合に限り、彼をメギド72に戻すことにサタンは同意する。いつか必ずフォルネウスを取り戻すとソロモンは約束し、しばしの別れを交わした。

フォルネウスから、ソロモンに渡された伝言があった。「村の土の下には、たくさんの村の人たちが眠っている。いつかお前もここに帰ってくる。変化したとしても、別の存在になるわけじゃない。だから自分が碑だとか、グロル村の少年は死んだだとか、帰る場所を失っただなんて絶望するな」かつてのグロル村での親友、ツルムガからの言葉だった。

いつか、この大きな戦争ーーはるか昔、ヴィータとメギドが出会った時に始まり、世界を変えんとする戦争ーーが終わったとき、自分は王として、ある部分では変わりしかし同じ存在として、故郷の村に帰るのだろうとソロモンは予感した。

その頃、アモンは密偵としてレジェ・クシオに潜り込み、懲罰局本部の場所を探っていた。と、偶然にもフライナイツのメギド、そしてそれから逃れようとするガギゾン及び意思喪失状態のルシファーに遭遇する。ガギゾンはアモンに「俺たちを助けろ、懲罰局の場所を教えてやる」と告げた。

また別の場所では、フライナイツのエウリノームとバールベリトが成り損ないに語りかけていた。「こちらにいらっしゃることが可能だとは」と驚きを表明する彼らの前にいるのは、今はまだ成り損ないの姿をした、母なる白き妖蛆である。蛆がこの世界で実体を得たのだ。

【ネタバレ】自分用メギドメインスト7章あらすじ

#61

アルス・ノヴァの儀式を経て議席を得たソロモン王は、議会から招待を得る。そこでメギド72は、議会参加とソロモンの見聞のためのメギドラル遠征を決行することにした。

メンバーは以下の通り(五十音順):

アムドゥスキアス、アロケル、アンドラス、イポス、インキュバス、ウェパル、エリゴス、カスピエル、ザガン、サタナキア、サブナック、サルガタナス、サレオス、シトリー、シャックス、シャミハザ、セーレ、ナベリウス、パイモン、バエル、バティン、バラム、バルバトス、ハルファス、ヒュトギン、ブニ、ブネ、フリアエ、プルソン、プルフラス、ベリト、ボティス、マルコシアス、マルファス、ムルムル、メフィスト、モラクス、ラウム、レラジェ、ロノウェ

一方で、フォカロルやアンドロマリウスなど王都に留まりコラフ・ラメルの連絡役を担うメギドもいる。


遠征に際しては、マラコーダから陣地内での拠点設営承認と携帯フォトンの提供を得た。マラコーダがヒュトギンを使者として提示してきたものである。提供された陣地は棄戦圏であり、これはフォトンの希薄になった、メギド社会にとって悲しく無価値な土地である。

 

先遣隊として進むソロモン、レラジェ、モラクス、ロノウェ、プルソンは幻獣を深追いし、ブネに滅茶苦茶怒られる。

 

#62

森を見つけた一行はその近くに拠点を設けることに決める。しかしある時、貴重な物資である携帯フォトンが何者かに盗まれてしまう。

ソロモン一行がそこに拠点を構えていることがメギドラルで知れ渡れば、襲撃のリスクは跳ね上がる。そこでブネの指揮のもと、犯人の徹底的な探索が計られる。

犯人はアライグマのような幻獣に見えたという目撃情報に反応するサブナック。転生前共生関係を築いていた幻獣かもしれないと、探索隊に名乗りを上げる。果たして確かに犯人はサブナックの見込みどおり、幻獣のバンキン族であった。

 

#63

メギドへの警戒心を暴走させた彼らを制圧した後、その処遇を巡ってブネとソロモンはぶつかり合う。幻獣は例外なく殺すべきだと主張するブネと、意思疎通が取れて「魂の存在を感じる」相手は虐殺すべきではないと主張するソロモン。睨み合いの末、折れたのはブネだった。翌日、想像以上に軍団に貢献するバンキン族を眺めながらブネはソロモンに伝える。幻獣はメギドの「なり損ない」のはずであり、メギドは本能のレベルで、大地のフォトンを食らう幻獣を憎み駆逐してきた。その幻獣とメギドとの境界が薄れてきているのだとしたら、それはこの世界の根幹の崩壊を予感させる。どうかヴィータであるソロモンの視線を通して、幻獣とメギドとの境界を見極めてほしい。

 

その後一部のメンバーは、バンキン族が軍団から一度盗んだものの、落として他の幻獣に奪われたという携帯フォトンの捜索に出る。メンバーはソロモン、マルファス、レラジェ、シャックス、モラクス、ロノウェ。携帯フォトンと幻獣の死体を見つけた一行は、状況の奇妙さに首を傾げる。他の幻獣に狩られたと思しき死体は、何故携帯フォトンを使わなかったのか。使い方が分からなったのだとしたら、何故盗んだのか。さらなる調査に意欲を示すソロモンだが、危険だとの周囲の讒言に翻意する。しかしその時、「地図でもあれば」という誰かの呟きに反応したのは以外にもシャックスだった。なんと彼女は追放前、不可侵軍団であるゲート・エクスプローラーに戦争を挑み、戦利品として地図を得ていた。その地図が今もシャックスのメギド体、すなわち魂に刻まれた記憶には残っているのだった。

シャックスの地図と現地の状況を見比べて、幻獣の不可解な動きの理由は判明した。近くにある非稼働ゲートにフォトンを供給して動かし、ヴァイガルドに渡ろうとしたのだろう。実際にそれと思しき非稼働ゲートを見つけたソロモンたちは確信を深める。しかし、そのゲートは最近使われた形跡があった。違和感からその場を離れようとした矢先、一行の前に現れたのは強力なメギド、元大罪同盟のベルフェゴールだった。

 

#64

「そのゲートに手を出せば次は殺す」そう言い残して一行を見逃した謎のメギド。拠点に戻ったソロモンたちは次の手を話し合うが、ブネは意外なことを口にする。「そいつを味方につけたい」

ベルフェゴールはコルソン、アマイモン、ジニマルと協力関係にあった。「敵の敵は味方」であるとして、中央(マグナ・レギオ)への対抗勢力であるまつろわぬ諸王にゲートを貸していたのだ。これにより、アマイモンらは比較的自由にヴァイガルドとメギドラルを行き来できていた。

しかしながらソロモンらのゲート発見の理由はコルソンらによる情報漏洩であり、ゲートの奪取を目論んでいると考えたベルフェゴールは、ヴァイガルドに現れコルソンを糾弾する。そしてゲート奪取を目論んでいる、かつマグナ・レギオの議席持ちであるソロモン王を倒すと言い残してメギドラルに消えてしまった。コルソン、そして同行のガープは後を追おうとしたが、既にゲートは足止めのために破壊されてしまっていた。

ベルフェゴールとの同盟を望んで、先程のものとは別のゲート跡地付近に駐留するソロモンはじめ数人。ソロモンは森の新しさとゲートの古さに違和感を持ち、考え込んでいた。そこに案の定ベルフェゴールが現れる。

ゲート封印の要領でフォトンスポットを閉じ、意図的に一帯を棄戦圏にしていたのではないか? ソロモンの推測を公定するベルフェゴール。そして交戦へともつれ込む。

ベルフェゴールに勝利したソロモンらは、シャックスの地図を見せることで、自分たちのゲート発見は四冥王の情報漏洩によるものではないことを証明する。ようやく疑いを晴らしたベルフェゴールは、ソロモンの味方になることを承諾して召喚を受けた。

 

安心したのもつかの間、拠点が軍団「罵美優蛇」に襲撃されているとの報を受け、ソロモンらは慌ててそちらへ向かった。罵美優蛇とは牙の内海を支配する軍団にして、かつてウェパルが総長を務めていたものである。

 

#65

ところ変わってジニマルは、かつての居城の荒れ方を嘆いていた。そこは、軍団解散を装うため一度捨てた場所であった。彼女はメギド72との同盟を悟られぬよう、暫くの間韜晦していたのだ。しかしそうしている間に、牙の内海は中央勢力の干渉を大きく受けてしまうようになっていた。

暫く前、ジニマルを含むフォルマウス四冥王はペルペトゥムの危機に駆けつけたが、軍勢をすぐに動かせたのも偶然ではない。ヴァイガルドへの大規模進行が起こるほど中央勢力が勢いを増す中で、まつろわぬ諸王の中心であるアマイモンは軍勢の招集と待機を行い有事に備えていたのだ。

 

拠点は大きな被害もなく防衛できていた。しかし、何故罵美優蛇はメギド72の拠点を襲ったのか、なぜこの場所が分かったのか。それを問うため、ウェパルを加えた小隊を編成し追撃を行うことを決める。(メンバー:ザガン、エリゴス、ブネ、ウェパル、モラクス、バルバトス、イポス、マルファス、バラム、シャックス、パイモンサルガタナス、ベルフェゴール、ハルファス、メフィスト、カスピエル、インキュバス、ナベリウス、バティン)

道中、罵美優蛇について議論をする一行。話題は現総長に至る。100年ほど前にメギドラルを離れたウェパルは、現総長であるウィチセを知らないという。現総長、又は初代総長リヴァイアサンの指名によって次期総長を決めるのが罵美優蛇の伝統であることを鑑みるに、これは異様なことであるとウェパルは言う。

偵察のため上空に飛び上がっていたマルファスが報告したのは、自軍を囲むように三方に敵が布陣しているという情報だった。罵美優蛇の得意とする戦術「罵美優蛇トライアングル」である。

拠点を襲撃しすぐに引いたのはこの戦術地点に誘い出すためであったかと歯噛みする一行。三つに分散した敵軍の一部隊に自軍戦力を集中させ、包囲網をとっぱする作戦をソロモンは決定した。

しかし、敵は一枚上手であった。地中に潜る幻獣を足止めに利用することで、本来海中・海上戦で活きる「罵美優蛇トライアングル」を陸上でも有効にしてきたのだ。一点突破作戦も封じられ、まんまと包囲網を狭められたソロモンたち。不利な布陣で迎え撃とうと覚悟を決めたとき、ウェパルがバラバラに逃げることを提案する。

(ベルフェゴール・レラジェ・ハルファス・ナベリウス・ザガン・ソロモン組:逃げつつ幻獣の掃討、カスピエル・インキュバス・サレオス組:逃走に専念、バルバトス・ブネ組、モラクス・エリゴス組:撹乱のためゲリラ攻撃、ウェパル・サルガタナスメフィスト組:敵の狙いが元総長ウェパルかソロモンかを見極めるため、投降を前提に敵に相対)

ウェパルの提案を容れ、敵の狙いを逸らしつつ分散した軍勢。一段落したところで、ソロモンは反撃に転ずる。ソロモンの指輪と5人のメギドという主力戦力を活かして敵勢力を削ぎ、軍団全体の生存率を上げるためである。

幸か不幸か、ソロモンたちが相対した部隊は総長のウィチセを含む一軍であった。

 

戦地の中心で、ウェパルは彼女が追放されてからの100年のことをサルガタナスから聞かされる。罵美優蛇は長らくまつろわぬ諸王から牙の内海を守り、マグナ・レギオ側勢力としての存在感を維持してきた。しかし、とうとう海を守ることはできなかった。マグナ・レギオの命令によりヴァイガルドに落とされた海は、他ならぬ牙の内海だったのだ。今や牙の内海は乾涸び、ほとんど荒地になりかけている。

マグナ・レギオの決定とはいえ牙の内海を罵美優蛇が守らなかったことへの違和感は、ウェパルをひとつの推測へと導いた。ウィチセはマグナ・レギオの指名により現総長の座についた、議会の傀儡なのではなかろうか。

その時三人の前にジニマルが現れ、驚くべきことを告げる。ソロモン王が牙の内海北の棄戦圏に布陣したことをリークしたのは自分だと言うのだ。愕然とするウェパルの前で、ジニマルは「道化戦争」という謎めいた言葉を口にする。

 

一方、ウィチセ率いる分隊を破ったソロモンたち。軍団長の危機を見せ、他の二分隊もこちらに引きつけることに成功する。全戦力が自分たちに向き、分散した他の仲間の生存率が上がったことに喜びながら、改めて撤退を再開する。その背にウィチセが投げたのは、ウェパルへの殺意の言葉だった。「そいつさえ殺せば、罵美優蛇は一つに……」

 

#66

逃げ延びた先で仲間の召喚を試みるソロモン。しかし、彼らを異変が襲う。何度指輪に力を込めても、空飛ぶ魚しか召喚できないのだ。

困惑しつつも牙の内海の勢力図について考察を進める一行。議論は一つの推測に行き着く。罵美優蛇は牙の内海をまつろわぬ諸王ーー例えばジニマル率いるアビスピアーズから守ってきたはずなのに、海を落とす作戦に反対するだけの発言権すら与えられなかった。これはつまりジニマルを撃退しきっていなかった、更に言えば、戦争のふりをしていただけなのではないか。二大勢力が相争っていれば中央も干渉はしてこない。しかしそれと引き換えに目立った戦果を挙げられなくなった罵美優蛇は、中央から軽視されるようになったのではないか。

牙の内海を進みながら、一行は次の手を考える。召喚による召集ができない中で、被害を増やさないためには罵美優蛇に再び攻められる恐れを絶つ必要がある。そこで一行は、初代総長でありそれ故に罵美優蛇に対して影響力を持つであろう、リヴァイアサンを探すことにした。

牙の内海を進む一行はやがて牙の内海の深部、「海を落とす」作戦で最も影響を受けた地域に到達する。

 

ジニマルに対峙するウェパル、サルガタナスメフィストの三人。そこに罵美優蛇総長ウィチセが現れる。一触即発の空気を破り、ジニマルは「これは四頭会合だ」という。メギドラルの海を守るという「原点」に立ち返り、海に縁の深いメギドたちが「関係者」として話し合おうというのだ。そのためにソロモン王との同盟を利用し、罵美優蛇に情報を流し、各勢力をひと所に集めたのだという。

 

#67

牙の内海の深部には「もうひとつの罵美優蛇」一派がひそかに拠点を設けていた。マグナ・レギオの息のかかったウィチセ一派ではない、かつてリヴァイアサンやウェパルが率いていた頃より罵美優蛇に所属していた者たちである。リヴァイアサンの雲隠れにより後ろ盾を失った彼らは、マグナ・レギオが強硬にウィチセを総長に据えたことに異議を唱えられず、息を潜めていたのだ。

とはいえ、ウィチセとて内心は罵美優蛇の理念ーー海を守るーーに忠実であった。しかしリヴァイアサンなき折、中央の決定に抵抗すれば軍団ごと潰される。そのため苦渋を飲んでマグナ・レギオの傀儡の座に収まっていたのだ。

 

ソロモン一行は、ベルフェゴールから不思議な話を聞く。ヴァイガルドにとって、フォトンは「新しい」すなわち世界が生まれた頃には存在せず、後から流れ込んだエネルギーであるという。あるいはこんな話もあった。メギドラルの戦争社会はメギドや幻獣を間引きし、より優秀なメギドのみで食い扶持を分け合うためのものなのだという。世界を共有する生命の総数の管理こそが文明化であり、その意志の実現のための枠組みこそがマグナ・レギオだとまで言ってのけた。

 

一行の前に、「もうひとつの罵美優蛇」の構成員であるハヤイカが現れた。斥候であった彼は少しの問答ののち、リヴァイアサンの名に反応し、そしてどこかへと姿を消す。

そしてその先で一行が出会ったのは、巨岩と見まごう巨体、石化したリヴァイアサンのメギド体であった。

リヴァイアサンを守りたい「もうひとつの罵美優蛇」は、ソロモンたちを中央または理術研究院の手の者と考え、暫定総長カイルみずから戦争を仕掛けてきた。それを破った後、想定外の事態が発生する。地面が割れ、リヴァイアサンごと地中に沈んだのだ。

 

「四頭会合」の場では、ジニマルとウィチセが事情を説いていた。アビスピアーズとしては、戦争のフリをしていれば罵美優蛇によって牙の内海を追われることがなくなる。罵美優蛇としては、有力軍団であるアビスピアーズの勢力を抑えるという戦果を上げることで、総長交代と軍団分裂による弱体化を囁かれずに済む。

しかし、ガープの追放はフォルマウス四冥王同盟の力を削ぎ、かつまたジニマルからウィチセへの信頼を損ねた。道化戦争のなくなった罵美優蛇は議会に大きな戦果を示せなくなり、次第に勢力を弱めて行った。その結果が「海を落とす」作戦である。

ジニマルは続ける。自分たちフォルマウス四冥王は、ソロモンの存在がこのメギドラル社会を変え、マグナ・レギオに代わる新たな体制を生み出すことを期待しているのだ。

 

分散したメギド72は、召喚によらないまま少しずつ再集結しつつあった。アーライの森近くの拠点を引き払った者たちと(?)、牙の内海の戦場から逃げた者たちが合流し始めたのだ。彼らはソロモンからの召喚の未だにないことを訝しみ、戦場へと反転して罵美優蛇を威圧することにした。(ブネ、パイモン、イポス、バルバトス、サレオス、バラム、モラクス、エリゴス、バティン)バルバトスは連絡のため一人拠点に戻ることになった。

 

#68

カイルとソロモンたちが落ちたのは、メギドラルの海とヴァイガルドの空とを繋ぐゲート内空間、通称「次元の狭間」だった。

一時休戦を決めた一行は、出口を目指す傍ら互いの事情を話す。カイル曰く、遠からず牙の内海は中央諸勢力の戦場に、そしてやがては棄戦圏になる。有力な軍団を失い痩せてゆく牙の内海は、最早フォトン争奪の場にしかならない。そしてその時、ウィチセの罵美優蛇は中央から切り捨てられ潰されるだろう。

中央が行動を起こすのは、恐らくはリヴァイアサンの死を確かめた時である。そのため牙の内海が戦争で荒れることを避けるべく、カイルの罵美優蛇はリヴァイアサンの死体を隠していた。

また、リヴァイアサンの石化は海にエネルギーを行き渡らせるための手段の結果であるという。リヴァイアサンは体にフォトンを溜め込み、海底の痩せた場所に行くと自爆し直接フォトンをばら撒くことで、海全体の環境を維持していたのだという。何らかの方法によって彼女は、自爆の後も十年程度で復活していたが、今や海が涸れて荒れ地となった現在地点で石化してからは、どういうわけか復活をやめてしまったのだという。

また、ソロモンの指輪から現れる魚はリヴァイアサンの一部であるとのことだった。

歩みを進める一行の上に、大きな影が落ちる。それはリヴァイアサンのメギド体であった。仮死状態であったリヴァイアサンの体が、急に大量のフォトンに晒されたことで意志のないゾンビのように空を泳いでいるのだ。

百年待って、リヴァイアサンは復活しなかった。きっと回生に失敗したのだろう。ならばせめて、理術研究院や中央のメギドに利用される前に……。指輪のフォトン操作に反応して襲いかかってくるリヴァイアサンの抜け殻を前に、それを倒す意志をカイルとソロモン一行は固めた。

リヴァイアサンを倒し、呆然とする一行。しかし、リヴァイアサンは生きていた。あの魚たちはリヴァイアサンの「情報体」だったのだ。指輪に魚たちをすべて取り込み再構成することで、とうとうソロモンはリヴァイアサンの召喚と指輪の機能の復活に成功した。

 

海の荒廃、マグナ・レギオによる牙の内海への干渉、そして武力侵攻の可能性。牙の内海の抱える問題を共有する「四頭会合」。しかしそのタイミングで、ジニマルの軍団員が中央勢力の襲撃を受ける。ウィチセの軍団内にスパイが存在し、ウィチセがメギド72やアビスピアーズと通じて会合を持ったことをリークしたのである。

ジニマルの麾下のヒューガルがあわやというとき、助けに入ったのはブネやモラクス、メギド72の軍勢であった。

そこに、会合を終えたウェパル、サルガタナス、ジニマル、メフィスト、そしてウィチセも合流する。ソロモン不在ではあるものの、罵美優蛇とメギド72とアビスピアーズ、全員の共闘によるマグナ・レギオとの戦争が始まった。

 

シャックス、マルファス、そしてブネを召喚したソロモンは、マグナ・レギオと牙の内海連合軍との戦いについて聞かされる。

 

#69

召喚により軍団は再集結しつつある。しかしメギド72,罵美優蛇、アビスピアーズは、マグナ・レギオ連合軍に対する圧倒的な数の上での不利を覆しきれずにいた。

 

#70

とある作戦を考えついたソロモンは、仲間たちと共に牙の内海上空の浮島を訪れていた。(ウェパル、アムドゥスキアス、シャックス、レラジェ、ロノウェ、ハルファス、拠点から走って駆けつけたアーライ)

それは「海を落とす」作戦である。浮島にあるゲートと「次元の狭間」に残ったゲートとを繋げるのだ。ヴァイガルドに「海を落とす」ために作られたゲートは、ソロモンの手によって出口側ーーすなわちヴァイガルド側ーーを封鎖された後も、その内部に海水を湛えたままでいる。指輪の力で「次元の狭間」ゲートの出口を浮島のゲートに繋げることで、莫大な水量でマグナ・レギオ連合軍を押し流すとともに、牙の内海に水を戻そうというのだ。

 

#71

浮島のゲートを処理したソロモンは、続いて「次元の狭間」深部、通称次元海溝のゲートに目標を定める。リヴァイアサンの作り出した潜水フォトン艦で深海に潜るソロモンとウェパル。幻獣の襲撃に遭いながらも、どうにか任務を全うする。しかし、過酷な任務にソロモンは意識を失ってしまった。そして真っ白になった視界の中で聞いたのは、母なる白き妖蛆の声であった。

 

#72

「『メギド』は『幻獣』とは『違う』!この世界は一体何なんだ!」錯乱し絶叫しながら目を覚ましたソロモン。だが程なくして、バティンの懸命な治療の甲斐あり、戦線に復帰する。

ソロモンらがゲート作戦に出るのと同じ頃、敵同士の会話から、マグナ・レギオ連合軍の中心が判明していた。その名はアッキピテル、バラムのかつての軍団員だった。彼はマグナ・レギオに牙の内海を献上することを密かに約しつつ、同時にウィチセを殺して罵美優蛇の議席を自らが得ると共に、戦争で強いメギドを選別し己の軍団を強化することを狙っていた。

敵の連合軍は戦場を崩落させる作戦を進めていた。地下に工作員を派遣し、地盤を刺激していたのだ。それは成功し、牙の内海連合軍は足元の崩壊によって大きな損失を出していたーーかに見えた。

しかし、それこそが牙の内海連合軍の偽装工作であった。メギド72の軍団員がマグナ・レギオ側を装って地盤の崩落を触れ回り、敵を特定のエリアにそれとなく誘導していたのだ。地下に落ちたメギドたちは、ソロモンが指輪で召喚し救出する。同時に、攻め寄せる敵軍を正面でいなし、じりじりと後退しながら狙いの場所に引きつける。メンバーにサタナキアを加え、再考した作戦である。狙いの場所とは罵美優蛇とアビスピアーズの包囲の中心であり、かつ海を落とす地点である。

浮島の上ではゲート操作役のサルガタナスフォトンスポット閉鎖役のベルフェゴール、脱出役のアムドゥスキアスが待機している。地上の戦場からの合図で海を落とすためのゲートを開き、同時に浮島のフォトンスポットを閉じて浮力を失わせる予定である。大量の海水と同時に浮島をも落とし、破壊力を上げるのだ。

敵の進軍の流れを作り作戦も大詰めに差し掛かった頃、パイモンがバラムの不在を報告する。単身、敵大将でありかつての部下であるアッキピテルに接触しに行ってしまったのだ。驚愕し、連れ戻しに走るソロモン。同行するのはロノウェ、シャックス、マルファス、ウェパル、モラクスである。

激昂したアッキピテルをどうにか打ち負かした一行。その頃、既に海を落とす作戦は始まっていた。

ついに牙の内海連合軍は勝った。敵を皆殺しにし、海を取り戻したのだ。無数の命を飲み込んで何かを得ようとするメギドラルの戦争、命を奪い合うことでのみ推し量られる「価値観」を共有するための戦争社会である。未知の世界のあり方を目撃したソロモンは、胸に受けた衝撃に嘔吐を催していた。

その頃、ソロモンたちの動きを察知する大メギドがいた。八魔星の一人、マモンである。敵対か恭順か、いずれにせよ連れてこぬことには分かるまい。そう言ってソロモン王を見つけに出たのは、副官のイヌーンであった。

レイガンベレット

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完殺のことは考えずに暴力で押し切るのが一番早いよねのパーティー

色々と相性が良くないのでベヒモスは採用しない

アバラムのオーブはイービルアイのがいいかも

 

・クロケルは海老を抜くためプロデューサー(orメイジ)装備。先手さえ取れれば誰でもOK

・初手クロケルにアタックを積み殻を剥がす

・ジズにもアタックを積み暴奏始動

・海老の一個目のフォトンがアタック以外であればアスラにもアタックを積み音符加勢(海老がアタックだとフォトン奪取されるおそれがあるため避ける)

・取り巻きのレイズギフトにより攻撃力上昇&全体化した海老のアタックで全滅するおそれがある。そのためジズとアバラム(イービルアイ)と海老の取得フォトン及び行動順に注意するとよい。

・基本はひたすらジズにスキルを積む

ユグドラシル

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暴走ジズと犬で沢山殴ると相手はしぬ

 

ジズの奥義より先にベヒモスを獣形態にシフトさせたいため、エンキドゥで素早さを調整。

犬にはハートブローチ4個を渡しっぱなしにしている。ジズにもテツマリ1個を持たせっぱなしにしている。

初ターンはスラスラ奥義も駆使して音符貯めに専念する

2ターン目はアタックを犬に3個渡すよう頑張りつつナベちゃんでジズにフォトン渡す

最速で2ターンで倒せる。